空に星が輝く様に
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165部分:第十二話 夏に入りその十六
第十二話 夏に入りその十六
「それはどうだったの」
「ああ、それはな」
陽太郎は一呼吸置いてだ。その問いにしっかりと答えた。
「ちゃんと喜んでくれてたよ」
「そうなの」
「それでなんだよ。今度の日曜な」
「うん」
「家に誘われたんだよ」
このことも話すのだった。
「それでなんだよ」
「家に」
「ああ、西堀の家にな」
これをだ。電話の向こうの椎名に話す。
「御前もあいつの家に誘われたことあるんだって?」
「何度か行ったことある」
ここでも静かに告げる椎名だった。この口調は変わらない。
「ただ」
「ただ?」
「つきぴーはそうした相手は限ってる」
「限ってるのかよ」
「そう、大切な人だけお家に呼ぶ」
陽太郎に話す。的確にだ。
「だから斉宮も」
「あいつにそう思ってもらってるんだな」
「そういうこと。だからそれは有り難く思っていい」
「何かそれってよ」
「それって?」
「不思議な気分だな」
実際にそうしてはいない。だが心で腕を組んでだ。そのうえでの言葉だった。
「それってよ」
「そうなの」
「ああ、俺を大切に思ってるのか」
そしてだ。このことも言うのだった。
「それにな」
「それに?」
「彼氏って言ってくれたしな」
「それさっき言った」
「けれどかなり驚いたんだよ」
だから話すというのである。
「いや、本当にな」
「うん」
「俺でいいのかな」
そしてだった。陽太郎はこうも言うのであった。
「俺でさ。いいのかな」
「彼氏がってこと?」
「大切な人とまで言ってもらったしな」
それも言うのだった。
「本当にいいのかな、それで」
「いいと思う」
「いいのか?」
「つきぴーが言うから」
「それでいいのかよ」
「本人が言うから」
それが理由であった。
「だからいい」
「そういうものか?」
「そう、本人が認めてる」
また言う椎名だった。
「ただ」
「ただ?」
「おかしい奴なら」
ここでだ。椎名の言葉が少し剣呑な色を帯びた。
「私が消す」
「消すのかよ」
「見破ったその時点で消す」
かなり物騒なことを言ってみせていた。
「そういう時には」
「本気だよな、それ」
「勿論」
しかもこんな返答だった。
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