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少女となって

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第一章

               少女となって
 蛭子は神社に一人いた少女に気付いた、それで何処となく彼女に対して尋ねた。
「何をしている」
「何ってもう」
 少女は項垂れ暗い顔になっていた、何もかもに対して絶望しきっているのはその顔がはっきりと語っていた。
「生きていたくないから」
「生きていたくない」
「ええ」
 少女は姿を見せないで自分に語り掛けてくる蛭子に答えた。
「もうこれ以上」
「どうして生きていたくない」
「学校にいても家にいても辛いから」
「学校、家。聞く言葉だ」
 蛭子は神社に来る人々の言葉からそうしたものは聞いていた、長年この神社に潜んでいて世間の話は神社に来る人間達そして神主達から聞いて知っている。
「そうした場所にいるとか」
「とても辛いから」
「何故辛い」
「学校でいじめられて家ではお父さんとお母さんに殴られて」
「それでなのか」
「そう、何処にいても辛いから」 
 見れば小柄でおどおどとした感じだ、そして表情はやはり暗い。
「だからもう」
「もう?」
「死にたい」
 こう蛭子に話した。
「そう思ってるの」
「死にたいのか」
「今すぐにでも」 
 こう蛭子に言うのだった。
「私死にたい」
「そうか。それなら」
「それなら?」
「私に食べられてみるか」
 蛭子は少女に興味を持っていた、そして少女の言葉を聞いてこう言ったのだ。
 これまで人間は食べたことがない、だが死にたい相手ならと思ってそれで少女に対してこう言ったのだ。
「そうしてみるか」
「そうして死ねというの」
「そう。どうだ」
 少女自身に対して問うた。
「そうしてみるか」
「それでもういじめられなくなるの」
「そんなことはならない。ただ」
「ただ?」
「身体を借りたい」
「身体を」
「そして心は一緒にいて欲しい」
 このことはふと興味を持ってのことだった、少女が言ういじめについて。
「そして色々教えて欲しい」
「そうして欲しいの」
「けれどもういじめられない」 
 蛭子は少女にこのことは約束した。
「そのことは安心して欲しい」
「それじゃあ。そういえば貴女姿を見せないけれど」
「私が誰か気になるか」
「貴女は一体。声は女の子だけれど」
「私は蛭子」 
 蛭子は自ら名乗った。
「出来損ないの神」
「神様なの」
「そうらしい。ずっと出来損ないと言われてきた」
「そうだったの」
「けれど今御前に興味を持った」
 少女に対してというのだ。
「御前を食う。いいか」
「それでいじめられなくなるなら」
 少女はもう深く考えることは出来ない様だった、それでだった。
 蛭子に対して頷いて応えた、そしてだった。 
 蛭子は何処からか出て来て少女の身体を包み込んだ、そうして少女の身体を溶かしてそのうえで身体を少女のものとした。
 服もだった、その姿になって自分の中にいる少女に言った。
「変わった、これでだ」
「もう私いじめられないの」
「そしてふと気が向いた」
「気が?」
「今から御前になって暮らして」
「どうするの?」
「御前を取り込んでわかった、御前の心はとても傷付いている」
 少女の心もその中に宿らせた、それでわかったのだ。
「その心は癒されるべき」
「そうなの」
「傷付いたら治さないといけない」
 蛭子は本能から話した。 
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