夢幻水滸伝
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第五十四話 東西の戦その四
「そやからな」
「ここはや」
「ほんま戦の時は限られてるわ」
「その時に乾坤一擲で来るで」
「もう全力に近い感じで」
「ほんまに来るで」
「全力っていうと」
どういった全力かもだ、綾乃は述べた。
「東国の星の子達が」
「一気にや」
「もう攻めて来るやろな」
「星のモンが九人おったら相当な力や」
「それで攻めて来るやろな」
大蛇も八つの頭で綾乃に話す、八つの頭が交代で綾乃に顔を向けて語る、見れば頭は二つは絶対に前を見て自分達の方角を確認しつつ飛んでいる。
「こっちの星のモンは八人」
「星のモンの数では有利や」
「それをどう使って来るか」
「攻めて来る時はな」
「そやな、ほんまに」
実にと言う綾乃だった。
「相手の立場に立って考えるとな」
「答えが出て来るな」
「相手がどうしてくるか」
「戦は相手あってのモンやし」
「相手の動きを読むのも戦や」
「ほんまやね、こうしたことは芥川君に任せてきたけれど」
これまではというのだ。
「こうして考えるとな」
「色々とな」
「答えが出て来るな」
「ほなまずは厩橋城を攻め取って」
「それからや」
「東国との戦の正念場を迎えるな」
まさにとだ、綾乃は言ってだった。自身が率いる軍勢を越後から上野に向かわせるのだった。そうしつつだった。
厩橋城に向かう、その途中彼女が率いる軍勢は略奪も暴行も厳しく戒めていた。室生はその状況を見て共に第二陣を率いる鈴子に言った。
「いい軍だな」
「はい、進軍の際一切略奪暴行を許さない」
「軍のあるべき姿だ」
「この世界で星の人達が率いる軍勢は大抵そうですね」
鈴子はコボルトの犬の顔を微笑まさせて話した。
「幸い」
「軍が略奪なぞをするとな」
「それだけで、ですからね」
「とんでもないことになる」
「賊の集団と変わらなくなります」
「そうだ」
その通りとだ、室生は鈴子に答えた。
「そうなってしまうからな」
「軍の規律を守っていることは」
「非常にいいことだ」
「その通りですね」
「我々もその点は注意していたが」
「関西もそうですね」
「いいことだ、ではな」
室生はあらためて言った。
「我々もだ」
「そうしたことを守り」
「兵を進めていこう」
「そうあるべきですね」
「是非な、あとだ」
室生は鈴子にこうも言った。
「遠間に時々いるな」
「東国の斥候が」
「山や雲の中に隠れてだ」
そうしてというのだ。
「我々を見ている」
「その動きを」
「規模もな」
「そのうえで」
「時と場所を見ている」
「攻めてきますね」
「何もしてこない筈がない」
室生は強い声で言い切った。
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