空に星が輝く様に
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157部分:第十二話 夏に入りその八
第十二話 夏に入りその八
「斉宮君は」
「大丈夫かな」
「はい。大丈夫です」
また言うのだった。
「絶対に」
「そうはならないってこと?」
「だって。優しいですししっかりとわかっていますし」
だからだというのである。
「ですから。そんなことは」
「だといいけれどね」
「本当に大丈夫ですよ、斉宮君は」
さらに言うのであった。真剣な顔になってだ。
「そんな人には絶対になりません」
「けれどな。人って変わるからな」
「変わりますけれど。それでも」
「それでも?」
「斉宮君はなりません」
絶対にだという。そうした響きの言葉だった。
「私が断言します」
「有り難う。じゃあ絶対にそうならないようにね」
「心掛けるんですね」
「そうするよ。それでだ」
「はい、それで」
「今日は何処に行く?」
話を変えてきた。下校中のデートの話にだ。
「今日はさ。一体何処に」
「何処にですか」
「何処でも好きな場所でいいけれど。西堀は何処がいいかな」
「そうですね。それだったら」
「うん」
「本屋さん、いえ百貨店に行きませんか?」
こう提案するのだった。
「百貨店に」
「八条百貨店か」
「あそこでどうでしょうか」
また話す月美だった。
「そこで」
「そうだな。それだったら」
月美の言葉を聞いてだった。そのうえでの言葉は。
「そこにしようか」
「はい、じゃあそこで」
「確か今何かフェアやってたよな」
「フェアですか」
「何だったかな。何処かの名物料理の」
防具を担いだままで腕を組んでだ。そのうえでの言葉であった。
「何かそういうフェアだったかな」
「何でしょうか」
「それがわからないし。それを確かめる為にも行こうか」
「そうですね。それじゃあ」
こんな話をしてだ。二人はその八条百貨店に向かった。そこの入り口に入るとであった。入り口の案内のコーナーに東北フェアと書いてある看板があった。
それが行われている階も書いてあった。そこは。
「七階かあ」
「それで東北ですか」
「東北っていったらきりたんぽかな」
「秋田ですね」
「それと林檎」
「青森ですね」
次々に答えを返す月美だった。
「美味しいもの多いですよね」
「山形はさくらんぼで仙台はタン塩で」
「本当に美味しいものばかりで」
「ホヤもあったかな」
この一見すると変わった食べ物も話に出たのだった。
「あれも東北だったよな」
「はい、そうです」
「本当に美味しいもの多いな」
陽太郎はここでも腕を組んだ。尚防具は百貨店の近くにあるコインロッカーに入れている。流石に担いだまま人の多い百貨店の中は無理だった。
「東北って」
「何を食べられますか?」
「まずは七階に行くか」
とりあえず今は決められないのだった。
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