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空に星が輝く様に

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155部分:第十二話 夏に入りその六


第十二話 夏に入りその六

「それならいい」
「だってねえ。普通の人間はしませんよ」
「そうですよ、普通は」
「そんなことはね」
「そうだ。絶対にしてはいけない」
 そしてだ。先生はこのことも言うのだった。
「いじめもだ」
「いじめもですよね」
「やっぱり」
「武道をやるかやらないか以前だ」
 最早そうした問題ではないというのであった。
「それはな」
「いじめってやっぱり最低ですよね」
「それも」
「自分より腕力が弱い人間をさらにいじめて何だというのだ」
 先生はその顔を思いきり曇らせていた。そしてさらに言ってだ。
「その弱いというのは何だ」
「何かって?」
「腕力じゃないんですか」
「腕力の強い齢は本当の強さではない」
 それはだというのである。先生の話はかなり教育的なものになっていた。やはり教育者だけはありだ。そうしたものになっているのだった。
「それはだ」
「じゃあ一体」
「本当の強さってのは」
「心だ」
 それだというのである。
「心こそが大事なのだ」
「心ですか」
「それがですか」
「何故いじめをするかだ」
 その教育者としての言葉である。
「何故かだ」
「心が弱いからですか」
「それで」
「だからするっていうんですね」
「そうだ、その通りだ」
 こう己の部員達に対して話す。
「先程のその暴力教師もだ」
「心が弱いんですか、つまりは」
「そういうことなんですね」
「おそらく碌な生き方をしていない」
 そのことまでもだ。ばっさりと切り捨ててみせる。先生は極めて厳しかった。今はとりわけそうでありそのまま話を続けるのであった。
「ヤクザか何かの様な生き方をしていたのだろう」
「何か学生時代は不良だったそうですね」
「それも碌な不良ではなかったな」
 先生は先程の部員の話をさらに話す。
「後輩を虐待でもしていたんだろう」
「虐待ですか」
「それをしていたんですか」
「生徒にそこまでする奴だ。後輩にも普通にそうしている筈だ」
 それを見抜いてだった。そのうえでの言葉だった。
「将来結婚して家庭を持てば家族にもそうするな」
「筋金入りの屑ですね」
 それを聞いた部員の一人が述べた。
「奥さんとか子供にもですか」
「ドメスティックバイオレンスですか」
「普通にする筈だ」
 先生は何処までも読んでいた。しかしそれでもその顔は晴れない。そのうえでの言葉をさらに続けていくのだった。不愉快なままでの言葉だった。
「そうしたこともだ」
「確かに。そういう奴ですしね」
 その部員も確かな顔で頷いた。
「自分より立場が弱い奴には徹底的な暴力を振るうような奴でした」
「やはりな。剣道をしていても心の修養はできていなかった」
 先生はまたばっさりと切り捨てた。
「最も駄目な奴だ」
「最もですか」
「確かにその通りですね」
「いじめですしね、それって」
「誰もそんな暴力教師にはなりたくないな」
 先生はここでまた部員達に告げる。
 
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