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妖精の尻尾所属の戦闘民族(旧)

作者:貝殻
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第18話 行ってきます

「ウェンディ?」

「はい…私がこの世界で初めて知り合って、共に過ごした少女です」

ギルドで休みながら過ごして数日経ち、オレはジェラールと我が家で夕食を共にしていた。
机の上に広がる数々のフルコースのような料理――ジェラールの手作りであり、オレたちが1年で共に食べることが日常になってきた料理の数である。因みに大盛りである(歓喜)

いつもは外食で食べていたオレであったが…ジェラールが居候してからは手作りでご馳走されるようになり、今では胃袋をつかまれてしまったオレだ。
彼女自身は「料理の本の通りにやったら出来た」と言っていたが、そのとおりにやる器用さは凄いと思う。
料理のとおりにするにも軽くミスやドジをすることがある自分だから本気でジェラールに勝てない(白目)
まぁ…武術では共に手合わせでオレが勝っているからまだマシだが…。

 閑話休題


飯を食べながらジェラールと軽く会話していたらウェンディという少女の話題になった。
どうやら、ジェラールがこの世界に来た時に最初に知り合った子らしい。

「それで、そのウェンディは?」

「…彼女を保護してくれるために魔道士ギルドへ向かう最中、アニマを感じたので近くに住んでいた老人に引き渡しました」

それ、大丈夫なのか?

「てか、その老人とは知り合いじゃないわけで…知らない奴にそのウェンディって子を預けたのか?」

「……はい」

…ふむ。

確かジェラールも気を感じ取れたはずだ。
ジェラールがその老人にウェンディって子を預けたのはもしかしたら老人の”気”を感じて、任せてもいいと判断したのだろう。
…だよな?

そうジェラールに伝えれば苦笑いして答える。

「それは大丈夫です。一応今でも向こうの気を感じていますし、ウェンディの気に変化を感じたらすぐに助けに行くようには準備していますので…。あと、この前再会しました」

「お、おう…準備満タンだなおい…。 …んで?いつお前とウェンディは会ってんだ??大体ジェラールはオレと一緒に居ることが多い気がするんだけど?」

「ああ…それはですね、先生と共に行動するおかげで余裕ができて…宿で食事を先生が取っている時に偶々ウェンディが近くに居たんです」

いつの話だそれ、どこの宿だおい。

「ほら、森の近くでアニマを封じた後に近くの宿屋で泊まったことありませんでした?半年前に」

「ああ、半年前……どこにも周っているから覚えてねえ…」

「ですよね」

悪い、本当に。あとおかわりください…。

「まぁ話を戻して…、彼女に何も言わず別れたので安心や謝罪も含めて彼女の方へと向かったのですが…」

ん?

「…なんていうか…泣かれてしまって…本当に申し訳ない気持ちになりました…」

そう言ってジェラールはしゅん、と落ち込んだ…そして軽く元気のないオーラが見えた。

泣かれたか…まぁ数年も顔を合わせないで居たからしょうがないわな。
話を聞いてる限り仲が良かったみたいだし…。
でも泣いてくれるほどとは、ウェンディはそこまでジェラールのことが好きだな。
そう思うと何故か誇らしさが出てしまう、弟子が誰かに好かれるのは悪いものじゃないんだな。
…オレの弟子ってよりもエドラスのオレの弟子だけど(くどい)

「けど、ちゃんと仲直りできたんだろ?よかったじゃねえか」

自然と嬉しさが顔に出てしまったおかげで口角が上がってしまった。だが嬉しい気持ちを隠す必要ないし、いいだろう。

ジェラールも「…はい、よかったです」と嬉しそうな表情を浮かべる。
やはり、ジェラールもウェンディって子のこと気にしてたんだな。まぁ、ウェンディの”気”に異常を感じたらすぐに向かう準備もしてるもんな、そりゃ気にしてないはずがない。

「また今度、時間の余裕ができたら会いに行こうと思います。その時は…先生も一緒に来てくれると助かりますが…」

少し不安げにこっちを見てくるジェラールは恐らく遠慮しているのだろう。だが大丈夫だ、別に断る気はない。そう答えるようににっと笑みを顔に出す。

「おう、オレも帰ってきたら一緒に遊びに行かせてくれ。オレもそのウェンディって子のこと気になるしな」

ジェラールが気にする程の子だ、恐らくいい子だろうし…それにそのウェンディからジェラールの話も聞いてみたいしな。


「…先生って、自分よりも小さい少女が好みだったりします?」

「おいまてなんでそうなったか詳しく」


その夜、飯を食い終わるのがいつもより遅かったが…冷めていても美味しいご飯は流石としか言い様がないです。さすがジェラール、略してさすジェラ。


◆◆◆◆◆◆


青髪の少女――アースランドの住民であるジークレインは腹立たしそうな雰囲気が彼女のいる事務室に流れていた。
その部屋にはソファーで座っているジークレインしかおらず、いつも一緒にいる少女はジークレインに頼まれて調査に行っている。
 
肝心のジークレインだが彼女は書類を片手に顔の眉間に皺を寄せて為息を吐く。

――どこ調べても例の男、レッド・パッペの行き先が掴めない。

先日、評議員からレッド・パッペは長期休暇をして評議員は暫くあの男にクエストを頼めなくなった。
おまけに、彼はどこか旅に出て、いつ帰ってくるか分からないという情報が入ってきた。

「これじゃ計画の実行を移す時期が遅くなるかもしれない…」

それはダメだ。
後少しで全てが叶う。
自由が、真の自由のためにも

「いいえ…別に彼は必要ではないわ。 都合のいい生贄は居ますもの…」

ソファーの前にある自身の机の引き出しからまた別の写真付きの書類を手に取る。
その書類に付いている写真に写っているのは緋髪が似合う美女がキリッとした顔で出ていた。

「そう…まだ貴女が居る。…それに、彼を駒として使うのなら人質が必要よね」

それか、彼を洗脳するか――


「ジークレイン、今帰ったわ」

「あら、ウルティアお帰りなさい」

「ただいま」とと返事してから疲れた様子で客間のソファーに座る黒髪の女、ウルティアは肩を少し揉んでマッサージを始める。どうやら肩こりが出たみたいだ。

「そうだ、例の情報を掴めたかしら」

「いいえ、何も。一応彼の家を見張ってみたけど…魔法の妨害で何も知ることはなかったわ」

「そう…ご苦労さま」

「ええ…結局、彼はどうするの?」

問いかけてくるウルティアにジークレインは…残念そうな表情を浮かべて答える

「――諦めるわ。彼じゃなくても、いい生贄は居るしね」



彼女たちの――いいや、物語のカウントダウンは、確かに動いていた。


◆◆◆◆◆◆



「それじゃ、行ってくるよ」

「ああ…行って来いクソガキ、必ず帰ってくるんじゃ」

「とーぜん」

まだ陽が昇っていない朝――レッドは妖精の尻尾(フェアリーテイル)総長(マスター)、マカロフに挨拶してマグノリアから旅立つ。

クエストに行く時にいつも持っているリュックサックを肩にかけ、彼は妖精の尻尾のギルドをひと目振り返り、そして自分の道に進んだ。

朝早く行く必要あるか?――特に無い。強いて言うなら面倒なことになりそうなので早めに出ただけだ。

単純にナツにまた勝負をぶっかけられて面倒くさいので、かけられる前にまだ誰も起きていないであろう時間で旅立つことにした。

事前にマカロフに伝えてあったせいか、マカロフが見送ってくれたのだが。

そして、マカロフの孫であるラクサスにも、通信魔水晶で伝えてある。

「いつでも呼べ、必ず手を貸す」と言われたおかげで、次呼ぶことがあったら手を貸してもらおうとレッドは思う。

一回目で成功するとは思わない…それに今回はエドラスの調査だけ。本格的に決着を付けるのはまだ先の予定なので、それまでには待っててもらおう。


マグノリアの街から出て森の中歩いている時、自然と隣に黒い影が歩み寄ってくる。
気配と”気”で感じる、相棒だろう。なら警戒する必要はない。

「よう、準備は?」

「大丈夫です。今でも行けますが――」

なんて手の早い弟子だろう。本当に師匠として鼻が高い、とレッドは心の中で呟いてから不敵な笑みを浮かべて目の前を見据えて返事をする。

「ああ、じゃあ行くか――”平行世界(エドラス)へ”」

彼の目指す先は彼も知らない領域――そして失われた記憶の手掛かりになることをまだ彼は知らない。
その記憶と、知ることになる真実をまだ知らないまま彼は往く。

だが、目指す先に闇はなく、小さな光が灯していることで彼は歩みを止まらない。

それは、きっと希望への道だと信じて―――










―――????


「ーーごめん…なさい…ごめんなさい」

白い世界で美しい人の形を持った美女は顔を両手で抑えながら、ただ謝罪の言葉を紡ぐ。

「ごめんなさい…ごめんなさい…!!」

彼女の謝罪は誰に対して、そして何の謝罪なのか

「ごめんなさい……ッ!!!!」




それは物語が進んだ先に、明かされるのであろう――。







~妖精の尻尾所属の戦闘民族、原作開始前ストーリー。レッドの冒険譚の第1幕――FIN~

 
 

 
後書き
 

やっと原作に取り込める。
と言っても、唐辛子(レッド)が帰ってくる時しか描写しませんが…。

本格的に主人公がエドラスで何が起きたのか…。
そして、謝罪を続ける謎の美女とは。
前者はエドラス編ですが…美女の方は第2部の終盤かな…。

え?お前それまで続けれるのか?………やってやりますとも(キリッ)

あ、その前に番外編入りますのでよろしくお願いしいます。短文です(やったぜ)

 
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