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空に星が輝く様に

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129部分:第十話 夏に入ってその十一


第十話 夏に入ってその十一

「とてもさ」
「そうなんですか」
「自分では気付かないよ。それにしてもわかってよかったかな」
 今度は腕を組んでの言葉だった。
「あいつのそういうところがまたわかって」
「やっぱり人ってわかりにくいですか」
「何かそう思えてきたよ」
 実際にそうだともいうのだった。
「あいつのことの話を聞いてたら」
「そうですね。人ってわかりにくいですよね」
「ああ、かなりな」
 このことは二人共思うのだった。
「あいつだけじゃなくてな」
「わかりにくいですよね、本当に」
「見えないところだってあるしな」
「そうですよね、それは」
「特にあいつはそうだけれどな」
「愛ちゃんだけじゃなくて」
 月美も言ってきた。
「皆そうなのかも知れませんね」
「隠れたいいところもあれば悪いところもあるか」
「そういうことになりますね」
「だよな。俺かなりいい勉強になったよ」
 陽太郎は腕を組みながらまた述べた。
「本当にな」
「ええ、それで愛ちゃんとですね」
「ああ、プールな」
「それを御一緒にですね」
「急に決まったんだよ」
 陽太郎はここでまた首を傾げさせたのだった。
「狭山と話してるうちに来てな」
「それでなんですか」
「最初は行かないっていうことにもなったんだよ」
「それでもですか」
「椎名が出て来てそれで急に決まったんだよ」
 教室であった話をそのままするのだった。
「それがさ。急にな」
「急に、ですか」
「ああ。あいつまとめるの上手いよな」
「はい」
 このことは月美もよく知っていた。伊達に長い間塾で一緒だったわけではなかった。
「生まれついてのクラス委員ですよね」
「クラス委員どころか生徒会長でもやれるよな」
「やれますね、本当に」
「何時か立候補するかもな」
 そしてこうも言うのだった。
「あいつだと」
「いい生徒会長になれそうですね」
「いや、あいつが副会長で」
 陽太郎はふと考えをあらためてだ。また言うのだった。
「赤瀬が会長かな」
「赤瀬君っていったらあの柔道部の」
「ああ、あのでかいのな」
「赤瀬君が会長さんですか」
「あれで力があって物事を進められるからな」
「実行部隊なんですね」
「頭も結構いいしさ」
 そのことも話すのだった。
「あいつもあれでさ」
「じゃあ余計にいいですね」
「椎名ってどっちかっていうと参謀向きだしな」
 何だかんだでだ。彼もまた椎名のことがわかってきていたのだ。その性格にだ。
 そしてだ。また話す彼だった。
「戦闘力もあるけれどな」
「戦う参謀ですね」
「どっかの漫画みたいだよな」
 今度思ったのはこのことだった。月美の言葉を受けてだった。
「本当にな」
「漫画みたいですか」
「そういう漫画あるじゃない。サンデーとかでさ」
「すいません、私サンデーは」
 名前は知っているが、だった。月美は陽太郎の今の言葉には困った顔で返したのだった。
 
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