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ブレイブソード×ブレイズソウル~偽剣と共に歩む者~

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目覚めだすナニカⅡ

視界を埋め尽くすように、黒の弾丸が迫り来る
今更回避は出来ない、ならば撃ち落とすッ…!

「…ッラァッ!!」

咆哮と共に一閃、極太の光線とも言える斬撃が弾丸の一部をかき消し、敵へ向かう
消しきれなかった弾丸は辺りに散らばり、木や岩を抉りとっていく

【……ヒ…ヒ…】

自らに致死の一撃が迫っているというのに不気味な笑みを浮かべたまま動かない冥獣
後数メートルで直撃する、その瞬間

【 キヒッ… 】

--急激に視界がブレた

「な、にがっ…!!?」

それと同時に背中にとてつもない衝撃が走り、自分が後ろから吹き飛ばされたことに気付いた

チカチカと点滅する視界の中で見えたのは、蹴り飛ばしたのであろう右脚を振り上げた姿勢で嗤う、変異冥獣の姿だった

「…ってぇ…な…思いっきり蹴り飛ばしやがって…」

暫く吹き飛び、転がってから体勢を立て直す
強化を掛けていたのもあって致命的なダメージは負っていない様だ

「ていうかなんなんだあのスピード、反則だろ…」

先のスピード、瞬きをした瞬間にはもう既に背中を蹴り飛ばされていた

【ケヒッ…ヒヒヒッ…】

不快な笑い声を響かせながら近付いてくる変異冥獣

--さて、どうするか

あのスピードに対応出来るかと言えば…出来なくは、無い……かもしれない

あれ程のスピードだ、一撃に対応出来たところで高速移動からの全方向銃撃…なーんて事になったら即死する未来が容易に想像出来る

「取り敢えずは様子見と行こうか…なっ!」

グッと脚に魔力を込め爆発させるようにして飛び出す

そのまま斬り掛かるが、当然の様に避けられる
今度は後ろに回り込んで蹴らないのか…蹴りたくてもそう何度も出来ないのかは知らないが、ヒョイヒョイと躱す事しかしてこない

「チッ…コイツ、馬鹿にしてるのか…?」

【……………】
ガギンッ!!

「なっ!?」

…唐突に冥獣がその笑みを消し、右手に持っていた銃で大剣を受け止める

【■■■■■】
「…?何を…」

冥獣が何かを呟いたかと思うと、空いている左手の銃の銃口に暗い光が集まり始める
さっきも同じ様な物を見た、これは確か…!

「砲撃かっ!」
【■aaa■aa!!!】

音割れでもしたかのような咆哮をし、その『黒』をこちらに向ける
防御は出来ない、した所で確実に防御ごとぶち抜かれる
ならば受け流せばいい
…またグラムサンタのお小言を貰うかもしれないが命には替えられないだろう

「悪いがその直撃は貰いたくないんでね!」

無理矢理鍔迫り合いの状態から離れ地面に剣を斜めに突き刺し、防御に魔力を回す
これなら上手く後方に抜けてくれる……事を祈るしかない


少し間を置いてからの衝撃、魔剣が少し嫌な音を立てている様な気がするが、魔力を追加で流すことにより誤魔化す

衝撃が去り、砲撃バカの様子を見ると…
冥獣の右腕が衝撃で千切れて吹き飛んでいた

…コイツ、学んじゃいないな…

『………マスター?なんだかとても痛かったのだけれど』
「やっと起きたか、こっちは今大変なんだぞ」
『えぇ、見ただけで分かるわ
…それで?修行相手にしても、これは死ぬんじゃないかしらね』
「だったら手伝ってくれない?」
『貴方が死にかけでもしたら助けてあげるわ』
「なんでだよ…」

【………?】

コッチが会話をしている間に、冥獣は自分の吹き飛んだ腕を拾い、傷口にくっつけようとしている…が勿論上手くいくわけもなく…

「…何やってんだアイツ」
『再生でもするんじゃないかしら』
「まさかぁ…」

【…!】
シュゥゥゥウ…

『ほら、くっついたわよ?』
「んなバカな…」

腕をグチャ…グチャ…と断面に合わせているかと思えば、黒い煙を立てながら腕がピッタリとくっつく
---関節の向きが逆方向という事を除けば

【クヒッ!クフヒヒヒヒ…!!】

冥獣は楽しげに笑いながら腕をブンブン振り回している
その様はまるで子供だ

「なんだあれ」
『多分冥獣よ』
「知ってる」

【laaaa……a………ga?】

暫く腕を回しているかと思えばギロリとコチラを睨み、殺意が身体を射抜く

「来るか…!?」

【la…ガ…ガ■aa■ァァァ!!!!!】

とんでもない咆哮を放ったかと思うとその場から姿が消える

「また後ろかっ!!」
ブンッ…!!

瞬時に振り向き剣を振るうも風切り音が虚しく響くだけだった

『マスターッ!右よ!!』
「…ッ!」

ゴッ!!

鈍い音が響くと同時に吹き飛び、側面から岩に叩きつけられる
強化が間に合わなかった、恐らく左腕とアバラが数本逝ったかもしれない

『そこから早く逃げなさいっ!!』
【ゲヒャ…!】

追い打ちと言わんばかりに銃を連射している冥獣
ーーー弾丸は既に目の前に迫っていた
グラムサンタの声が、遠く聞こえる


防御?その場から離れろ?
…無理だ、先の一撃でまだ身体が動かない

弾丸が届くまでの間、全てがスローに見えた
だからといって避けられる訳でもない
(ここまで、か…)






『そうね、それでも良いのだけれど
…私はもう少し、先が見てみたいの』

『ーーだから…そうね、少しだけ力を貸してあげるわーー』

いつもの様に頭に響いた声は
同じな様で、少し違って聞こえたーー








――――――――――――――――――――――――――――


【ソレ】は、本能で動くモノだった
本能のままに暴れ、喰らい、眠りに着く

生まれた時からそういうモノだった
だが、いつからだったか―――
【ソレ】は変質してしまった
原因など分からない
ある日突然、そうなったのだ



――――――――――――――――――――――――――――





自らの撃った弾丸の先を、昏い瞳が見詰める

これで、死んだ
死んだ筈だ、殺した筈だ

【……………】

砂塵は未だ晴れない、それだけでどれだけの数の魔弾を撃ち込んだかが分かる

「アレ」がどれほど強くとも、抵抗の出来ない状態で自らの魔弾を撃ち込んだのだ、死なない筈はない

ゆっくりと、砂塵の中へと向かう



「少し無理矢理だったけれど、まぁ成功かしら」


声が、聞こえた
目を見開き手に持った銃を握りなおす

―――瞬間、吹き荒れる魔力の暴風が砂塵を、冥獣を、全てを吹き飛ばす

すぐに体制を立て直し、黒い殺意を放つ


「さぁ、もう少し踊りましょう
少しは楽しませて頂戴?」


瞳は明るい桃色へ、髪は薄らと金色に光っている
そして、禍々しい形の、頭部に存在する片角



先程とはまるで違う「少年」の姿を見て
冥獣は、静かに嗤った


 
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