レーヴァティン
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第五十六話 ミラノの街その七
「それはな」
「そうでしょ、だったらね」
「間違えられたらか」
「もうそれでいいってなるのよ」
「だからそれはおかしいからな」
「今度からはっていうのね」
「ああ、それ止めろよ」
くれぐれという口調でだ、正は女にまた言った。
「子供に化けて金誤魔化すのはな」
「じゃあそうするわね」
「やけに素直だな」
「何かそう言われると止めようって気になったからよ」
それでとだ、女も正に返した。
「それでよ」
「そうか、じゃあそういうことでな」
「お酒も飲めるしね。煙草は吸わないけれど」
「二十歳の料金でいくんだな」
「何時でもね、じゃああらためて言うけれど」
女は正とのやり取りを終えてから一行に話を変えて話した。
「私の名前言うよ」
「ああ、何ていうんだ?」
久志は女のその名乗りに応えた。
「それで」
「丹下留奈、あっちの世界じゃ八条大学農学部にいるわ」
「農学部か、だから獣使いか」
「自分でもそうだと思うわ、これで操ってるの」
銀で出来た杖を出して久志に話した。
「アルテミスの杖ね」
「アルテミス、ギリシア神話の月と狩猟の女神だったな」
「狩猟の関係みたいでね」
「それでその杖には獣を使う力があるんだな」
「どんな獣でもこの杖を前に出せばよ」
それでというのだ。
「私の言うことを聞く様になるんだ」
「成程な」
「それでこの杖でも戦えるから」
久志に杖を振って見せながら話した。
「私棒術も使えるし」
「ああ、それで戦闘も出来るか」
「あと超能力も使えるから」
こちらの術もというのだ。
「頼りにしてね」
「どんな獣も従えさせるだけじゃないか」
「そうよ、そこが他の獣使いと違うのよ」
戦闘が出来て術も使えることがというのだ。
「だから頼りにしてね」
「そうさせてもらうわ、ミラノであんたと会うつもりだったけれどな」
「一足先に会えたわね」
「そうだな、それじゃあな」
「今からよね」
「あらためてミラノに入るか」
「そうしようね、街も観ないとね」
剛が久志のその言葉に応えた。
「第一の目的は果たせたけれど」
「どんな街か観ておいてな」
「後で政をする時に活かそうね」
「そうしような」
久志は剛のその言葉に頷いた、そうしてだった。
一行はミラノに向かった、そのうえであの門番に事情を話した。生き残っている賊達は縛り上げて大型の獣達に背負わせて運び門番に突き出した。
「この連中が証拠になるか?」
「ああ、後で山に兵隊出して確かめるけれどな」
門番は久志に応えて話した。
「それでもな」
「捕虜が証拠になるか」
「充分にな」
「それは何よりだな、じゃあな」
久志は門番に笑って話した。
「報酬も貰えるな」
「市長さんに話しておくな」
「頼むな、あと生き残った賊はあれだよな」
「ああ、この辺りでとんでもない悪事ばかりしてきたからな」
門番はその賊達を睨みつつ久志に話した、身動き出来なくなり為す術もなくなった賊達はもう慄いているだけだ。
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