レーヴァティン
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第五十六話 ミラノの街その五
「所詮烏合の衆ってことか」
「そうね、数もね」
「千人ならな」
「私達なら何てことはないね」
「一人でもな」
久志は自分達の持っている武器のことから話した。
「これ位ならな」
「何でもないわね」
「ああ、だからあちこちにいる奴等をやっつけないといけなかったから時間がかかっただけでな」
山のあちこちを歩いてその移動に時間がかかったというのだ、実際に久志達の今回の戦いはそちらに多くの時間を費やした。
「それでもな」
「戦い自体はね」
「楽だったぜ」
自分達にとってはというのだ。
「これ位じゃな」
「確かにね。モンスターと比べたら」
ヴェネツィアからミラノまでの道中で戦ってきたモンスター達との戦闘を思い出してだ、清音も話した。
「この程度のならず者達はね」
「何でもないよな」
「私もね」
「この程度の連中じゃ何ともないさ」
「はい、巨人一人にも及びません」
順一もこう言った。
「これ位の賊が千人いようとも」
「そうだよな、じゃあミラノに戻るか」
「そうしましょう」
順一は久志に応えそのうえでそのミラノに戻ろうとした、だが山を降りたところでだ。
多くの獣達。狼や熊それに虎や獅子、豹といったこの島にいる者達を見てだ。順一はその目を瞬かせてから言った。
「これは」
「ああ、あれだよな」
「只の獣ではないですね」
「ってことはな」
「獣使いがいますね、すぐ近くに」
「そうだよな、どの獣も軍隊みたいに整っているぜ」
見れば整列さえしている、それを見れば明らかにだった。
「普通の群れじゃないからな」
「そもそも狼と熊が一緒にいるとかね」
淳二も言う。
「ないからね」
「ああ、俺もこっちの島に入ってわかったけれどな」
「狼と熊はね」
「仲悪いよな」
「森にいたら互いに争うね」
「そんな連中だからな」
「ライオンと豹もね」
この獣達もというのだ。
「お互いに仲悪いからね」
「縄張りが重なると餌の取り合いになるからな」
これは狼と熊も同じだ、何故肉食獣同士の仲が悪いかというと彼等が食べる餌の取り合いになるからだ。
「それでだからな」
「うん、それでね」
「仲が悪い者同士なのにな」
「一緒にいるのは」
それはどうしてかというのだ。
「獣使いが操っている以外にないからね」
「本当にな、しかもな」
「ここまでの獣の数だと」
それこそだ。
「相当な使い手でないとね」
「動かしきれないぜ」
「うん、ってことは」
「来たのかよ、本人が」
「まさかと思うけれどね」
「九人目がね」
「そうみたいだね」
ここで獣達の中から人間の声がした、そしてだった。
小柄で黒髪を左右でツインテールにした大きな黒い瞳と小さな紅の唇を持ったアジア系の童顔の少女が出て来た、紅いドレスを着ていてその上にえんじ色のマントを羽織っていてブーツも赤い。
胸は中学生の様な背丈の割にかなり目立っている、その少女が出て来て言ってきたのだ。
「私もこっちの世界に来た人間だよ」
「何だ、随分と小さいな」
正はその紅いドレスの少女を見て言った。
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