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第三章

「本当に」
「そう思うとどんどん変わってるね」
「そうだろ、日本がどんどん変わってるよ」
「これからもっと変わるかな」
「そうじゃないのか?新幹線も開通するっていうし」
「オリンピックだってやるし」
「ああ、凄いことになってるな」
 私は心から思った、そのうえで一旦自分の部屋に入った。そうしてそこで着替えて明日の予習復習をした。
 数ヶ月もしたら別の曲が人気になっていて私はあの曲も昔のものになったとか流行はすぐに変わるとか思ってだ。
 そしてだ、家に普通に出る様になっていたカレーライスを楽しんだり家に洗濯機や冷蔵庫が来たのも見て。
 高校を卒業してから働いた、働いて数年経った頃にだった。
 家で両親にこんなことを言われた。
「そろそろお見合いするか?」
「いい人がいるのよ」
「お見合い?」
 そう言われて私はきょとんとなった。
「僕が」
「ああ、御前もいい歳だしな」
「そろそろいいでしょ」
「結婚して所帯持ってな」
「その人と暮らしなさい」
「結婚ねえ」
 私はそう言われてもピンとこないでこう返した。
「別にね」
「意識していなかったか」
「そうなの」
「これまで」
 今親に言われるまでだ。
「そうだったけれどね」
「まあそれでもな」
「もう就職して結構時間が経つし」
「社会人として板についた感じだからな」
「もういい頃よ」
「それでだね」
 お見合いをとだ、僕は両親に応えた。
「お見合いだね」
「ああ、それでどうだ?」
「受けるの?」
「少し考えさせて」
 この時はこう答えただけだった、それでもだった。
 私は結局お見合いをしてそうして結婚した、もう社会はカラーテレビの時代になっていて洗濯機も絞りローラーから脱水機のものになっていた。
 あの歌を歌っていた人はもう歌手じゃなくてタレントになっていた、それでテレビでよく観ていた。
 そんな中私は妻との間に産まれた息子にこう言った。
「今テレビに出ている人は歌手だったんだよ」
「そうだったの」
「ああ、いい曲歌ってたんだよ」
 こう息子に話した。
「凄くね」
「そうだったんだね」
「ああ、いい曲だったよ」
「それでどうして今は歌ってないの?」
「歌手としてはその曲だけだったんだよ」
 どうもそうだったみたいだ、少なくとも私は次の曲は知らない。
「だから今はこうしてなんだよ」
「歌を歌わないで」
「こうした番組に出ているんだよ」
 ドラマに出ているその場面を観ながら息子に話した。
「今は」
「そうなんだね、また歌わないのかな」
「どうかな。ひょっとしたら」
 私はあの歌を思い出しながら息子に話した。
「歌うかも知れないな」
「そうなんだね。僕その歌聴きたいね」
「じゃあレコード聴くか?買ってくるぞ」
「レコードもあるんだ」
「ああ、それでどうだ?」
「うん、それじゃあね」
 息子は私のその言葉に頷いた。
 そして私が買ってきたそのレコードの曲を聴いた、そうしてとてもいい曲だと私に笑顔で言ってくれた。
 息子の次は娘が出来て何時しか子供達も大きくなっていた、世の中はカラーテレビどころか洗濯機も冷蔵庫も普通になった。 
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