『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』
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一話目
「なんと言うか、不思議な感覚だよな」
己が転生者と言う存在であると自覚はしているが、実感は湧かない。そんな事を考えてしまう。
彼、『天地 四季』は転生者であると言う自覚は有っても、前世のことが殆ど思い出せないために実感が湧いていないのだ。
「しかし」
転生特典は拠点となる家の地下に置かれたガチャと呼んで居る機械によって武器や仲間を召喚できる事で、四季の手にはそのために必要な三枚のチケット、『武器ガチャ二連確定チケット』、『キャラクターガチャ確定チケット』、『能力ガチャ二連確定チケット』の三枚がある。
能力ガチャは技術や知識の他に戦闘技術等の能力にあたるものが得られる。
武器ガチャはその名の通り武器、または武器に分類されるものが出てくる。
最後にキャラクターガチャは漫画やアニメなどの登場人物(主人公以外)をこの世界に存在する者として召喚できるガチャだ。
本来ならば三種類の内容からランダムで選ばれたものが出てくるのが本来の特典にあたる。
彼の手の中にある三枚は転生前のチュートリアルを終えた記念の品らしく、予め記憶を消される前の自分が選んだモノが出てくるそうだ。
武器や能力はこれからの運命を決定づける。少なくとも、カードゲームで運命が決まる世界ならば最高のドロー運もそれ以外の世界では大して役に立たない。
キャラクターガチャの方は下手したら命に関わる。敵役や味方になったとしても最初は主人公を殺そうとする者もいる。
最初に出てくるのが自分が選んだ物や相手と言うのは都合がいい事この上ない。
「取り敢えず、マトモなものを選んでてくれよ、オレ」
真っ先に回すのは二連の能力ガチャ、目の前の機械の中にチケットを入れると機械が起動して動き出し、能力の書かれた球が二つ出てくる。強制的に付与されるのではないことに安堵しつつ、キャラクターガチャの方で呼び出された者にも付与可能らしいことが理解できた。
下手に身につけたら危険な能力は厳重に封印しようと心に誓いつつ手に入れた能力を確認する。
『仮面ライダービルドの桐生戦兎の開発能力』
『東京魔人学園の主人公(デフォルト名:緋勇龍麻)の戦闘能力』
技術と身体能力関連を選んだ事に何となく武器ガチャの内容も理解できた。早速、手に入れた二つの能力を自分に付与させ、次の二連の武器ガチャを回す。
出てきたのはお約束のガチャのカプセルで、カプセルのまま中身の確認もできる。
『ビルドドライバーと各種フルボトル』
『VSチェンジャーとルパンレンジャーのVSビークル』
ビルドドライバーの方は予想していたが、両方共特撮ヒーロー関連だった。カプセルの中にはそれぞれビルドドライバーとVSチェンジャーが入っているのが見て取れる。能力と同様に呼び出されたキャラクターにも使用可能なものだが、ノーリスクで使えるのは四季だけで他の人間が使用するには原作通りの条件がいるらしい(単純に選ばれると言うのが条件の場合は無条件で使用可能)。要するに、他の誰かに使わせるには能力のガチャの方で能力を入手する必要がある。
その手の条件が薄い傾向にある戦隊ヒーローの物は仲間用、仮面ライダービルドのドライバーは自分用という事だろう。
なお、ドライバーとフルボトルだけで封入されてないビルドの武器は最悪能力で自分で作れるように、と言う事なのだろう。
装備の方もカプセルのままなら安全な様子だ。最悪危険な武器はカプセルのままなら厳重に保管しておける。
「最後はこれか」
キャラクターの確定ガチャ。キャラクターの初期好感度はそのキャラクターが登場する作品で初登場した時に主人公向けている感情となり、このチケットで初期好感度は通常よりも高く設定されて呼び出されるようであり、一番信頼できる仲間になる様子だ。
なお、同一人物が被ることはなく、その人物の別の可能性、または別の武器を使っている状態を呼び出すと元からいる者の強化に繋がるらしい。
(大丈夫なんだろうか?)
そう思わずにはいられない。好感度が通常よりも高いとは言っても、その感情が好意的とは言えない場合もある。
記憶には無いが、流石に自分が選んだのだから問題のある相手は選ばないだろう。
一抹の不安を覚えつつ、最後のチケットを使い出てきたのはガチャを開けると目を閉じた青い髪の少女が映る宝石だった。
『シノン(GGO)』
それが彼女の名前だ。少なくとも呼び出して早々に敵対される相手では無い事に安堵しつつ、早速彼女を呼び出す事に決める。
呼び出す方法は特別なことはなく少しだけ石に呼び出すと言う意思を持って力を加えるだけで済む。
手の中から宝石が消えていく感覚を感じながら、ふとした疑問を思い浮かべる。
(待て、なんで二連なんて中途半端なんだ?)
十連や五連なら兎も角二連とは結構中途半端な数だ。下手したら単純に二枚同じチケットがあれば良いだろう。
そして、キャラクターだけ一回のみと言う点。何かの為に回数を犠牲にした可能性もある。
《ピンポン! ピンポン!》
なんか妙な音が頭の中に響いた。その瞬間、ガチャの回数が変化した理由を理解する。
予め10段階で表されたキャラクターの感情を5まで上げていたらしい。その結果、本来五連のキャラクターのガチャが4回分が犠牲になったらしい。同じく本来は東都、北都、西都と別になっている六十のフルボトルをドライバーとセットにしたりした結果武器の方も二回に減ったらしい。(その為に武器は最悪自分で開発するように、と言う事らしい)
ついでに言うとVSチェンジャーとビークルの方は普通にワンセットだった。まあ、当然と言えば当然だが。
なお、同時に理解したことだが、召喚されたキャラは地上部分の居住エリアに当人の部屋ごと追加されるので、例外を除いてこの場に召喚されるとかは無いそうである。
「次は、と」
チュートリアル(自覚はないが転生前の説明とかと推測している)突破記念でもらえたガチャのポイントは合計11回分とガチャには表示されているので、早速記念に一度回してみる。
出てきたカプセルの中には有るのは変わった形の戦艦の様な物体。
『ナデシコC』
それがその戦艦の名前だ。機動戦艦ナデシコの劇場版に出てくる三番目のナデシコ。運用するのに必要なマシンチャイルドとかナノマシンとかどうすべきかと迷い暫くお蔵入りかと思ったが、AIでの単独運用もフルスペックは無理だが可能らしい。
それならば問題はないかとカプセルを開けると今いる部屋の壁が開き地下につながる階段が出てきた。地下格納庫という事だろう。
(自分の家ながら、この家ってどうなってるんだ?)
何人いるか分からない同居人達を収容する部屋に地下の格納庫には宇宙戦艦まで入っている。下手しなくても怪しげな家で有る。
「考えるだけ無駄か」
そう思って考えを切り替える。少なくとも、自動で動いてくれる戦艦が有れば行動の幅も増えると言うものだ。
『ガチャ初回記念プレゼント『アイテムストレージ』』
新たに表示された文字に驚いていると腕時計の様な物が現れ、同時に真後ろの壁が開く。
『アイテムストレージ』、腕時計型の端末を通してガチャ室の奥に設置された武器庫から繋がる武器庫の中の装備を取り出せるそうだ。また、バイクや戦艦の様な大型の物は武器庫ではなく地下格納庫という別の場所に置かれているので取り出せない。
「まあ、やっぱり何も入ってないか」
武器庫という言葉に不安を覚えながら入ってみたが、何も入っていなかった。折角なのでフルボトルとビルドドライバー、VSチェンジャーとビークルを置いて置く。
「それにしても」
通常のフルボトルだけでなく、レジェンドライダーの力を借りる為のフルボトル、エグゼイドならばドクターとゲームのフルボトルが必要になるそれまで存在している。
だが、スパークリングになる為に必要なスパークリングフルボトルやハザードトリガーの様な強化変身用のアイテムに、仮面ライダークローズに変身する為のパーツであるクローズドラゴンは当然ながらフルボトルと認定されなかったらしくここには無い。
(まあ、良いか。それと、お蔵入りの決まったものもここに隠して置くか)
安全そうだからと考え、あとで三つほど金庫でも用意するかと考えつつ、最後に残りの10回分のガチャポイントで十連の方を回してみることにした。
「来てくれよ、当たり!」
少なくとも狙っているものが二つ。通信用の道具と移動用の道具だ。ナデシコCは移動用に使うには大き過ぎ、あれははっきり言って、仮の拠点とでも言うべきレベルの代物だ。
「良し!」
出て来た十個のカプセルを確認しながら、その中に目的の物がある事に気付く。
『ビルドフォン』×2
ダブってしまったが、ビルドファンはスマホの機能だけでなく、ライオンフルボトルを差し込んでマシンビルダーと言うビルドの専用マシンに変形する機能がある。それが二つ出て来てくれた事は幸運と言って良い。
「っと、他にビルドの強化アイテムは無いか」
残りの八個のカプセルをどうするべきか、そんなことを考えながら一つ一つ確認していくと、その中の一つが目にとまる。
『パトレンジャーのVSビークル三種類』
初期の二つの戦隊の変身アイテムが揃った事は幸運と考えるべきだろう。他は“一応”危険な物は無いが、アイテムと能力のみで幸か不幸か仲間は増えなかった様子だ。そんな事を考えて居ると新たに表示される文字が視界に入る。
『ガチャ10回突破記念『保管用金庫』』
武器庫の奥に何かが設置される音が聞こえる。表記を信じるならば、保管用の金庫が設置されたのだろう。買いに行く必要がないのは助かるが、それでも初回記念に比べると、かなり道具としての格が下がる。
武器庫の奥に扉の所に液晶画面が付いた金庫が三つ設置されて居るが、一般的な大きさの金庫だった。武器庫に残りのVSビークルを置いて、金庫の中にカプセルを入れようとすると、勝手に吸い込まれていった。
「見たとおりの容量じゃなさそうだな」
扉の所にある液晶画面を操作すると中にある物の名前と数が表示されて居る。容量は不明だが、中に入って居るものが一目で分かるのは助かる。
「しかし、勢いで戦艦呼び出しちゃったけど、そっちは本気でどうするかな?」
地下の格納庫の様子も見に行くべきかと思いながら、残りのカプセルの中の一つに視線を送る。
『アメイジングストライクフリーダム』
これ、ガンプラだろ? と心の中でツッコミを入れる。確かにプラモを使って戦うビルドファイターズの漫画版のメイジンカワグチの愛機だが。そんな事を考えながら呼び出してみると格納庫に何かが追加された音が聞こえた。
間違いなく、本物のMSになったアメイジングストライクフリーダムが追加された様子だ。
戦艦に続いてMSまで置かれた地下の格納庫を一度見に行くべきか、そんな事を考えて居ると、上の方から足音が聞こえてくる。
「ねえ、いつまで待たせる気なの?」
地上部分に繋がる階段から出てきたのは『朝田 詩乃』という少女。先程呼び出したシノンの現実での姿だ。
しかも、呼び出されてから結構待たされた為にかなりお怒りのご様子だった。
(しまった)
まさか待っているとは思って居なかったとは言え、呼び出してそのままと言うのは本当にまずい事をしてしまったと思う。
性格も良く、GGO(ガンゲイルオンライン)のゲームの中のスキルが現実で使えるならば十分に頼りになる相手。寧ろ、友好的な関係を築くためにも、さっさと挨拶くらいしておくべきだったと思う。
「えーと、ごめん」
「反省してるなら、良いわよ」
謝る四季に対して何処か拗ねたようにそう答える詩乃。
「改めて、天地四季だ。これから宜しく」
「え!? ええ、『朝田 詩乃』よ。これから宜しくお願いするわ」
「オレのことは好きに呼んでくれて良い」
「じゃあ、四季って呼ばせてもらうわ。私のことはシノンで良いわ」
互いに挨拶して握手をする。
「ところで、四季は私達が居るのが如何いう場所か知ってる?」
「いや、その辺は全然」
転生前の記憶は殆どないためにどんな世界に転生したのかは分かってないが、最低限仮面ライダーの力が身を守る為に必要な危険はあると言うのは大体理解して居る。
「私も、この世界に召喚された時に貰った簡単な知識くらいしか」
続けて告げられた『天使と悪魔と堕天使とか、その他の神様とかがいる』と言う言葉で候補が絞られた上に、ある種の核心が得られる。
ハイスクールD×Dの世界だろう、と。
ぶっちゃけ、他に思い付いた世界だと生き残れる気がしないので、これであってくれと心から願う。主にメガテンとかだと。
「そう言えば、ここで何をすればいいのかって聞いてる?」
「何も」
首を振りながらそう答える詩乃。転生したのはいいが何をすれば良いのか分かっていない現状だ。
仮面ライダーやスーパー戦隊の力があるとは言え目的もなく無闇に行動するのは危険極まりない。
ぶっちゃけてしまえば、原作介入など、しなくていいならば関わらない方が良いだろう。
そんな会話を交わしていると式の持っているビルドファンに振動する。
「メール?」
詩乃に対して見ても良いかと問い掛けると、見ても良いという返事が返ってくる。
先ほど届いたメールを開くと、
『賞金リスト』
と言うタイトルのメールが届いていた。怪しいとは思いながらメールを開くと、はぐれ悪魔の等級とそれに対する報奨金の幅、そしてガチャをするためのポイントなどが書かれていた。
更に注意書きのように、『リストに無い相手などと戦い、勝利した際にもガチャポイントは発生します。また、不定期に発生するイベントを攻略することでガチャポイントや賞金を大きく入手することが可能です』と書かれている。
「なるほど、オレ達は賞金稼ぎ兼傭兵みたいだな」
時にはぐれ悪魔を倒して、時にどこかの勢力に味方して賞金やガチャポイントを稼いで行く。確かに、賞金稼ぎであり傭兵でもある。
「そこはせめて、バウンティハンターにしない?」
「そっちの方が聞こえが良いか」
詩乃の言葉にそう返しながら自分の手に入れた能力を思い出しつつ二つ目のビルドファンを詩乃へと差し出す。
「渡すのが遅れたけど、これはシノンの分のビルドファン」
渡されたビルドファンを見ると、どこか嬉しそうな微笑みを浮かべながら、
「ありがとう、四季」
渡されたビルドファンを抱きしめながら嬉しそうに告げる詩乃。まあ、その後でフルボトル差し込めばバイクになる事を教えた時には通常のスマホよりも高性能な機能に流石に絶句していたが。
互いに番号とメールアドレスを交換した後、先ほどのメールに続けて届いていた二通目のメールを開くと、そこには。
「明日から駒王学園に入学、か」
「四季が新しい子を召喚しても其処に通う事になるらしいわよ」
どこか『新しい子』と言う部分の、言葉に棘がある気がするがそこはスルーしておく事にした四季だった。
まあ、先ほどの十連の中にも無かったので暫く新しい仲間の召喚はできないだろうし。
仮面ライダービルド兼徒手空拳技《陽》の使い手として前衛を自分が、スナイパーとして詩乃が後衛を担当して暫くは二人でやっていく事になるだろう。
そんなことを考えていると、詩乃は思い出したように告げる。
「ところで、冷蔵庫の中に何も無かったんだけど」
「寧ろ、今のオレ達にはそっちの方が重要だよな」
ここに来る前にキッチンによってらしい詩乃は冷蔵庫の中を確認していた。その結果、分かったのは何一つ食材の入っていない冷蔵庫。寧ろ、空っぽのため、今は電気代の無駄と言ったところだろう。
まあ、昨日まで無人だった家に食料がある方が変なのだろうが、早めに買い物に行かなくては店が閉まってしまう。
今日の夕飯と明日の朝食はまだ何とかなるが、明日は学校なので昼食が拙い。
「取り敢えず、通帳とカード探して買い物に行こうか」
「あ、私も行くわよ」
「いや、ビルドファンが有るから一人でも大丈夫だけど」
つ
「四季、この辺のお店の値段は知ってるの?」
「え? い、いや、全然」
必要な物以外は行ってみて安い物を買えば良いかと思っていたのだが、詩乃からはジト目で睨まれてしまう。
「幾ら入ってるか知らないけど、少しでも節約しないとダメよ」
「ごもっともです」
賞金首のはぐれ悪魔を狩れる機会はそうないと思うのだから、今は少しでも節約するべきであろう。
そもそも、ゲームではないのだから、相手も隠れ潜んでいるだろうし、そんな相手に簡単にエンカウントは出来ない。どう考えも節約は大切である。
冷蔵庫の中が空であった時に近所の店の情報を確認してくれていたのだろう。
なお、交通費についてはビルドファンという強い味方がある。フルボトルのエネルギーで走ってくれるようだ。
序でに地下にあるAストライクフリーダムとナデシコCに付いては完全に放置の構えだ。一応、彼女を艦長と登録しておいたが、完全に人員不足なのだ。
ナデシコC
艦長:朝田詩乃
パイロット:天地四季
艦載機
アメイジングストライクフリーダムガンダム
コレが現在のナデシコCの状況である。
すぐに運用する気はないが、人員不足だといざという時に使えない。艦長とオペレーターの兼任については、流石に無理と言われた。一応パイロットなしも問題なので、現状では四季がアメイジングストライクフリーダムガンダムのパイロットになっている。
いくら高性能な戦艦と言えど、運用出来なければ単なるホテルだ。
「買い物が終わったらナデシコの中を確認して見るか」
「私もそれが良いと思うわ。使う必要がある時に慌てるのは良くないと思うから」
まあ、改めてナデシコCの中を確認して広さは兎も角、ホテルにも負けてない設備に驚いたのは二人だけの秘密だ。まあ、何ヶ月もの間船員が生活するのだから、ある程度ストレスの無い設備も当然だろう。
通帳を探してる間に詩乃が銀行と買い物に行く店の道筋を確認、家の敷地内の外から見えない位置でビルドファンにライオンフルボトルを装填すると、手のひらサイズのスマホから人が乗れるサイズのバイク『マシンビルダー』へと変形して行った。
「改めて見るとすごいな」
「どうなってるのよ、これ?」
恐るべし天才物理学者と心の中で呟きつつマシンビルダーに乗り、詩乃も後部座席に座る。
「じゃあ、しっかり掴まってろよ」
「うん」
幸か不幸か何事もなく買い物は終えたのだが、通帳の中には百万ほどの金額があった事を追記しておく。
さて、問題なく買い物は終わったのだが、荷物を置いた時に改めてビルドフォンにメールが届いた。
『賞金首情報』
そう表されたメールを見て四季は夕飯の支度を任せた詩乃を残してはぐれ悪魔の出現地点へと向かった。
(これが初めての戦闘。一人でどこまでやれるかも今のうちに確かめておきたいからな)
廃墟を一瞥し、ビルドドライバーを装着し、取り出すのはラビットフルボトルとタンクフルボトル。
「……早速この力を試してみるか」
赤いラビットフルボトルと、青いタンクフルボトルを振りながらビルドドライバーへと装填する。
『ラビット! タンク!』
『ベストマッチ!』
『Are you ready?』
(この場合、ビルドアップと言うべきか、変身って言うべきかは分からないけど、やっぱり)
そう考えながらベルトの右側のレバーに触れ、
「ビルドアップ!」
そう叫びながらそれを回転させる。
『鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イェーイ!』
兎の赤の半身、戦車の青の半身を持った仮面ライダー、『仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム』へと変身する。
「さてと、それじゃあ早速……お邪魔します!」
そう叫びながらビルドに変身した四季は回し蹴りを廃墟の扉の部分に叩き込み。
廃墟となった工場の跡地、あのメールの内容が事実ならばここにはぐれ悪魔がいる様子だが。
フルボトルは全種類使えるが武器は無い。いっそ、武器がなくても戦えるボトルを選ぼうかとも思ったが、何があるかわからない為、最初は安定性の高いラビットタンクを選んだ訳だ。
そうして廃工場の中に踏み込んだビルドの前に異形の影が現れる。下半身は蜘蛛の様に成っており、人間の上半身だが眼球が昆虫の複眼の様になっている異形の怪物。
「なんだお前は~人間か~」
相手の言葉を聞き流しながら足に力を込める。緋勇龍麻のそれは彼の操る異形を討つための古武術であり、その身に纏う力もまた異形を討つための力である仮面ライダーの力。
片や呪術などの超常的な力で生まれたもの、片や火災で発見された地球外生物由来の超常的な科学で生まれたもの乃違いは有れど、この二つの力を同時に扱って、
「負ける気はしない!」
目の前の相手に負ける理由などないのだから。
床が割れるほどと言う比喩をでは無く、本当に床を踏み砕くほどの踏み込みで床を蹴り、はぐれ悪魔とか距離を詰め掌打を打ち込む。
「破ぁ!」
続け様に放つのは上段蹴り、徒手空拳拳技の技の一つである《龍星脚》。
ウサギと戦車の力を借りた姿で龍の星を名に持つ技を放つのも洒落が効いてるかと思いながら蹴り飛ばされたはぐれ悪魔に視線を向ける。
「ガァ、ガガ」
「早速で悪いが、はぐれ悪魔」
ラビットハーフボディの脚力を活かして蹴り飛ばしたはぐれ悪魔へと肉薄し、
「オレとビルドの、実戦テストの相手になってもらう!」
そう宣言しながら上空で一回転しながらタンクハーフボディの踵部分を頭へと叩きつけ、動きが止まったところに掌打を叩きつけ、
「破ぁ!」
徒手空拳技《陽》の基本技の一つである発勁を撃ち込む。
気を使った技は生身でも仮面ライダーの姿でも大して変わりはないだろう、そう考えて居たが、
「グギャァ!」
「あれ?」
必殺技を使うまでもなく体に大穴を開けて絶命したはぐら悪魔を見て、
「……加減間違えて中位技使っちゃったけど、これは威力あり過ぎじゃないか?」
その理由も先ほどの感覚で何となくだが、理解した。タンクハーフボディが原因だろう。
変身後のボトルの影響か、何故かは分からないが、遠距離技、主に発勁の系統の技が砲弾の様な破壊力が与えられている。
「うわぁー」
この上の上位の技に位置する奥義級の技になると、人に向ける事自体が間違ってくる、確実に相手を葬るための技、文字通り必殺技になってしまう為に使えないが、ライダーに変身した後は遠距離技は人には使うまいと心に決めたのだった。
後書き
四季は気づいてませんが
フルボトルの力+緋勇龍麻の力(黄竜の器)
で、変身状態の四季の気の力は、言わば《地球の力》と言うものに変化します。
攻撃オンリーですが、エボルトの攻撃だけなら火星の力といい勝負できると言う裏設定も。
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