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血の味

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第一章

               血の味
 パウロは陰のある外見の美男子だ、職業は情報屋兼仕事人と完全に裏の仕事だ。表の世界では一応は喫茶店の駄目店長となっている。だがそれはあくまで表向きのことで彼が住んでいるのは裏の世界だ。
 そこでの彼は神出鬼没で晴らせぬ恨みを晴らし法で裁けぬ外道を裁く死刑執行人である。だがその彼の好物は。
 血だ、その血を好む彼に裏の世界での仕事仲間達は聞いた。
「何で血なんだ?」
「血が好きなんだ?」
「吸血鬼でもないっていうのに」
「どうしてなんだ?」
「それは決まっているだろう」
 陰のある顔に暗い笑みを浮かべてだった、パウロは彼等に答えた。
「それはな」
「それは?」
「それはっていうと?」
「どうだっていうんだ?」
「美味いんだよ」
 こう言いつつまた血を飲む、グラスに入れたそれをワインの様に。
 そうしてだ、彼は仲間達にさらに話した。
「とてもな」
「血が美味いか?」
「また変わった味覚だな」
「血が美味いなんてな」
「吸血鬼でもないのに」
「俺にとってはそうなんだよ」
 ここでまた血を飲んで言うのだった。
「こうして血を飲んでな」
「そしてか」
「そのうえでか」
「また飲んでか」
「これからも飲んでいくんだな」
「そうしていくさ」
 美味いからだとだ、そうして実際にまた血を飲む彼だった。
 だがその血が具体的に何の血かだ、仲間達は今度はこのことが気になってそれでパウロに対して言った。
「それ何の血だ?」
「美味いっていうけれどな」
「具体的に何の血なんだ?」
「まさか人間の血?」
「違うよな」
「自分の血を舐めてみな」
 これがパウロの返事だった。
「そうしてみな」
「鉄の味するぜ」
「自分の血舐めたなら」
「血には鉄分あるからな」
「そんな味だぜ」
「まずいだろ」
 正直言ってとだ、パウロは問い返した。
「そうだろ」
「ああ、確かにな」
「言われてみればな」
「人間の血はまずいぜ」
「本当にな」
「そうだろ、人間の血なんて飲まないさ」 
 その通りとだ、パウロも返した。
「俺はな」
「そう聞いてほっとしたぜ」
「吸血鬼でもないのに血が好きっていうからな」
「まさか人間の血かって思ったけれど」
「そうじゃないのならな」
「だから自分の血を舐めてまずいからな」
 それでというのだ。
「俺は人間とか他の種族の血は飲まないんだよ」
「じゃあ何の血なんだ?」
「人間や他の種族でないなら」
「それならな」
「何の血を飲むんだよ」
「ああ、それはな」
 パウロはその彼等に話した。
「牛が一番多いな」
「牛か」
「牛の血か」
「牛の血を飲んでるのか」
「そうなんだな」
「ああ、あと羊の血も飲むぜ」
 こちらの血もというのだ。
「馬もな。あとな」
「あと?」
「あとっていうと何だよ」
「スッポンの血も飲むな」
 この生きものの血もというのだ。 
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