外伝・少年少女の戦極時代
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
デューク&ナックル編
ライダーズ・ロジック ③
「……ボッコボコにされたあとなのにすぐリベンジに行く辺り、あいつもバロンのメンバーだよなあ」
さすがは駆紋戒斗の系譜――という所感は胸にしまっておくことにした城乃内である。
「で、ミッチ。本当にここで打ち切っていいんだな? あいつに手を貸すの」
「ん。いいですよ。代表のザックが今回のことを『チームバロンだけの問題』だと見なすなら、僕らにできる後押しはここまでです。城乃内さんだって、分かってたから、ネオ・バロンが出て来てもすぐに乗り込んだりしなかったんじゃないんですか? ベルトもロックシードも持ってるくせに」
「……最近のお前、どんどん、したたかになってってない?」
「さあ、どうでしょう?」
お前そんな悪い笑顔ばっかだと妹離れが早まるぞ、という所感も胸にしまっておく城乃内であった。
「とにかく。あとは信じて今度こそ吉報を待つだけです。――碧沙、帰ろ。追手第二波迎撃中のトモちゃんも……まあ大丈夫だとは思うけど、迎えに行ってあげないと。送ってあげて、僕らもうちに帰ろう。貴虎兄さんが心配する」
はい兄さん、と答えた碧沙の声は若干硬かった。それ見たことか。
「これが終わったら忙しくなりますよー。空中分解寸前の本家バロンのメンバーの再招集と、説得するペコとザックのフォロー、ネオ・バロンのせいで広まったバロンの風評被害の火消し――やることがいっぱいだ」
困ったことを言い連ねながらも、光実の顔から笑みは消えない。
「で、お前のことだから、どーせ俺にも手伝わせるんだろ」
「仲間は助け合うもの、なんでしょ?」
「……いいけどさ。俺も社会的立場とかある身だってとこ覚えててくれれば。これでも一応、凰蓮さんからシャルモンの留守任されてますから?」
そこで碧沙が焦れたのか「先に行く」と歩き出した。光実は笑顔で城乃内に手を振って、妹を追いかけて去った。
城乃内も、師匠である凰蓮を迎えに行くべく踵を返したが、
「あ、そうだ」
気絶して転がっているネオ・バロンの男たちから、量産型ドライバーとマツボックリのロックシードを回収した。後で光実か貴虎に渡せば、良いように処分してくれるだろう。
…
……
…………
――起爆スイッチを押した感触を、親指がまだ覚えている。
“ザック……貴様ぁ!”
“俺の務めだ――!”
量産型ドライバーとクルミの錠前でナックルに変身し、今度こそ引導を渡そうと殴りつけた衝撃を、拳がまだ覚えている。
“強くなったな”
今から殺そうという相手からの最高の賛辞に、高揚したことを、心臓がまだ覚えている。
それらがザックという男が冥土へ持っていける全てだと覚悟したのに。
まず、ありえない目覚めに驚いて。次に、病院のベッドに横たわる自分のすぐそばに、
“目が覚めたか”
駆紋戒斗が付き添っていたことに、今度こそ死ぬかと思ったほど驚いた。
“落ち着け。何もしない。もう全て終わったからな”
“終わった?”
“ああ。葛葉と――室井が、終わらせた”
絋汰と咲が。意外といえば意外で、けれどもしっくり来る組み合わせだった。
どんな顛末で、絋汰と咲がどんな手段を用いて、戒斗の命を奪わず地球を救ったのか、気にならないと言えば嘘だった。
だが、ザックの口を一番に突いた疑問は――
“お前、人間に戻れたのか?”
こうして傍らにいる戒斗は、ザックが知る人間・駆紋戒斗なのか――だった。
戒斗はベッドサイドのイスから立ち上がって、病室のドアに向かった。おい、とザックは引き留めたが、戒斗は足を止めず、ドアのスロープに手をかけて。
“戻れるわけないだろう”
自嘲とも自責ともつかない答えを残して、病室を出て行った。
――こうなった今だから、ザックには言える言葉がある。あの時から言えずじまいだった、誰にとっても大切なこと。
(馬鹿野郎。戻れねえわけねえだろ)
ザックはついに、シュラ一人が待つがらんどうの闘技場に辿り着いた。
後書き
我が家の光実は城乃内と仲良しです。
そしてたまーに黒いです。
何気にトモが実はチューやんと一緒に踏ん張ってたりします。
ページ上へ戻る