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八条学園騒動記

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第四百六十五話 あまり投げるなその三

「その選手の選手生命が終わる」
「それはな」
「駄目だな」
「ああ、一点はそれこそな」
「何時でも取れるものだ、しかしだ」
「選手生命はな」
「そうはいかない、点は取り返せるが」
 それでもというのだ。
「選手生命はそうはいかない」
「今の技術でも回復出来ないものがあるからな」
「確かに今の技術は凄い」
 スポーツ医学のそれがだ。
「それで昔は再起不能の怪我でも回復する」
「それでもだな」
「回復しきれない怪我もある」 
 こうした怪我はどうしてもある、医学もどれだけ進歩しても完璧はないのだ。それで完璧になろうとしてもだ。
「そうだからな」
「危険なプレイはさせないことか」
「最初からな、だから肩もだ」
 ここでフランツに今日はじめて変化球を投げさせた、カーブだ。
「あまりだ」
「投げ過ぎないことか」
「多投は本当に慎むべきだ」
「それよりもだな」
「足腰だ」
 こちらを鍛えることを優先させるべきだというのだ。
「むしろな」
「だから俺にいつも言っているんだな」
「今日もな」
「投げるより走れか」
「そういうことだ、もっとも全く投げないのもな」
 フランツの手元で大きく曲がるカーブを受け取りつつ言った、その曲がり方は二階から斜めに落ちるかの様だった。
「よくないがな」
「ピッチャーはそうか」
「投げて覚えるのも事実だ」
 それもというのだ。
「だからだ」
「投げることもか」
「大事だ、だから毎日最後はな」
「こうしてか」
「御前に投げてもらっている」
「そういうことか」
「しかもこの部活は変な上下関係がない」
 このことにもだ、タムタムは言及した。
「先輩が威張っていないな」
「ああ、それもないな」
「もっとも連合全体でそうだがな」
「昔の日本みたいなな」
「そんな先輩後輩のしきたりもない」
 二十世紀の日本のことだ。
「それもいいことだ」
「何かやたら先輩が威張っていてか」
「そして先輩の言うことは絶対でだ」 
 そうしたしきたりだったのだ、当時の日本では。
「先輩がちょっと気に入らないと怒ってな」
「やたら厳しい罰則があったんだな」
「正座で一時間とかな」
「その正座はトレーニングか」
「違っていた」
 フックは受けたカーブのボールを返球しつつ話した。
「正座が練習になるか」
「身体の何処を鍛えるか」
「そうなるか」
「足が痺れるだけじゃないのか」
 フランツは正座についての彼の知識から応えた。
「それだと」
「その通りだ、ただの罰でだ」
「それもただ痛いだけのか」
「それだけだ、本当に何もだ」
「意味はないんだな」
「そうしてお説教会があったりだ」
 そうしてというのだ。 
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