| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十三話 水の都にてその九

「商人っていうかな」
「貴族でござるな」
「それも大きなな」 
 こう剛に言った。
「領主様のお屋敷みたいだな」
「そうでござるな」
 剛も同意して頷いた。
「これだけ立派でござると」
「そうだよな」
「やはり資産があるとでござる」
「階級に関係なくな」
「いい邸宅に住みたくなってでござる」
「宮殿みたいな家に住むんだな」
「そうなるでござる」
「そういうことか」
「それで、でござる」
「グリマルディ家もか」
「資産があるからでござる」
 商売で得たそれがだ。
「それでこれだけの屋敷を建てたでござる」
「成程な、赤煉瓦で造られててな」 
 四階建ての見事なものである、ルネサンス時代のイタリアの建築様式だ。
「立派だな」
「その立派な屋敷にでござる」
「今から入るか」
「そしてでござる」
「八人目か」 
 久志はその吟遊詩人が仲間の場合も述べた。
「そうなるか」
「若し仲間であるなら」
「そうなるな、楽しみだな」
 笑ってだ、久志はこうも言った。
「今から会うのが」
「そうでござるか」
「どんな顔や外見か気になるしな」
「美人だといいね」
 淳二は笑ってこう言ってきた。
「そうだとね」
「ああ、しかしな」
「顔のことはだね」
「聞く限りだとな」
 久志は吟遊詩人についてこれまで聞いたことから淳二に述べた。
「特に不細工じゃない感じだな」
「不細工だったらだね」
「注目されてる存在だからな」
 今現在このヴェネツィアで、というのだ。久志は仲間達と共に屋敷の門に向かいつつ共にいる淳二に話した。
「噂に入ってるだろ」
「不細工なことも」
「そうなってるさ、まあ逆にな」
「美人でもだね」
「そっちでも噂になるな」
 注目されている人間ならというのだ。
「そうなるな」
「じゃあどっちでもないかな」
「普通じゃないか?」
 その顔立ちはというのだ。
「アジア系の顔立ちなのは事実としてな」
「じゃあ外見はだね」
「普通だろ、というか俺達全員な」
「ああ、皆だね」
「アジア系なのは話題になってもな」
「美形とか不細工とかね」
「そうした話題にはなってないだろ」
 このことを言うのだった。
「そうだろ」
「確かにね」
「成程な、それじゃあな」
「うん、今からお邪魔しようね」
 グリマルディ家、吟遊詩人が今いるその屋敷にとだ、彼らはお互いに話してそのうえで共にだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧