真田十勇士
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
巻ノ百三十五 苦しい断その一
巻ノ百三十五 苦しい断
家康は駿府に戻り暫くは機嫌がよかった、大坂の大野とのやり取りと彼の文を読んで満足していた。そうしてだった。
正純や崇伝にもだ、こう言っていた。
「右大臣殿の江戸屋敷を考えておくのじゃ」
「何処にどれだけの屋敷を建てるか」
「そのことをですな」
「国持大名の屋敷にせよ」
大きさ、そして格はというのだ。
「よいな」
「はい、そして入られるお国は」
「どの国にされますか」
「上総と下総じゃな」
この二国と言う家康だった。
「考えたがやばりな」
「この二国ならばですな」
「幕府の目も届く」
「しかも国持大名の格になる」
「だからですな」
「この二国がよい、あと茶々殿じゃが」
彼女の話もするんどあった。
「もうわしの正室にという話はな」
「宜しいですな」
「それは」
「ははは、わしももう古稀を超えた」
七十、その高齢をというのだ。
「だからじゃ」
「それはいい」
「もうですか」
「そうじゃ、まあ茶々殿は江戸で姉妹でな」
常高院、彼女とというのだ。
「静かに暮らしてもらい時にはな」
「末の妹であられる奥方様とも」
「上様の奥方様とも」
「会ってじゃ」
そうしてというのだ。
「仲良くしてもらおう」
「そうしてですな」
「ことを収めますか」
「修理は腹を切るそうじゃ」
家康はこのことも話した。
「責を全て負ってな」
「戦のこと、切支丹のこと」
「それ等全てのことについてですか」
「修理殿が全ての責を負われ」
「腹を切られますか」
「そうじゃ、確かに責は誰かが負ってじゃ」
そうしてというのだ。
「ことを収めねばならんからな」
「だからですな」
「修理殿が腹を切られ」
「全てを終わらせるか」
「そうなる、これは仕方ないな」
大野の切腹、それはというのだ。
「やはりな」
「左様ですな、責のことは」
「どうしても」
「では、ですな」
「このことは」
「修理は手厚く弔ってやることじゃ」
責を負って腹を切ったならというのだ。
「そうせよ、ただ修理は今大坂でとかく恨まれておる」
「それは仕方ないですな」
「どうしても」
「講和から裸城になったことは」
「修理殿が茶々様を止められなかったのですから」
「そうなる、しかし怨みを買ってな」
その為にというのだ。
「身が心配じゃな」
「左様ですな」
「大坂であまりにも怨みを買っています」
「だからですな」
「何かありますと」
「そうじゃ、それでじゃ」
家康は二人にさらに話した。
「修理の身の周りに誰か密かにつけるか」
「伊賀者か甲賀者を」
「そうしますか」
「そうも考えておるが修理は己の家臣達に絶対に信頼を置いていてじゃ」
そうしてというのだ。
ページ上へ戻る