転生とらぶる
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ペルソナ3
2037話
「さぁ、寿司はたっぷりと用意した。皆、好きなだけ食べてくれ」
そう言った武治は、珍しく笑みを浮かべている。
そして俺達は……というか順平とか山岸とか天田とかは、ただ唖然としている。
いやまぁ、その気持ちは分かる。
今夜は寿司パーティだという話は聞いていた。聞いていたが……俺はてっきり、寿司桶に入った寿司を食うのだとばかり思っていた。
だが、現在巌戸台分寮のリビングに用意されているのは、3人の寿司職人が寿司ネタの入ったケースを前にして、こちらの注文を待っているという状況だ。
当然寿司ネタの入っているケースに関しては、寿司職人が持って来た……正確には、桐条グループの方で用意したらしい。
寿司ネタの方も、それこそありふれたものから、高級魚の類まで様々なネタがあり、ケースの中に入っているネタがなくなっても、すぐに追加で用意出来るらしい。
武治なりの感謝と、恐らく起こるだろう幾月の襲撃に対する士気を高める為……といった感じで張り切ったのだろうが、予想外だった。
ちなみに、コロマルも当然のように一緒にここにいて、現在は寿司職人がコロマル用に作った魚のアラ汁に顔を突っ込んでいた。
「そうだな、ならまずは蒸しエビを頼む」
最初に注文したのは、俺。
蒸しエビは寿司ネタとしては安いネタに入るが、値段云々ではなく、純粋に俺はエビが好きだ。
特に茹でたり、蒸したり、炒めたり、揚げたり……そういう火を通したエビの食感が好きなのだ。
逆に、刺身とかになればそんなに好きじゃないんだが。
「はいよ、お待ち」
そう言いながら、目の前の寿司職人がエビの握り寿司を俺の前に置く。
それを醤油につけ、口に運び……うん、美味い。
普通なら安いネタなのだが、このエビはかなり肉厚だ。
同じ蒸しエビでも、素材と職人の技量によって大きくその味は変わるという事だろう。
「あ、じゃあ中トロ」
有里が注文し、職人が中トロを握る。
それが切っ掛けとなったのだろう。他の者達も次々に寿司を頼んでいく。
「ウニ、ウニ、ウニ!」
順平のそんな叫びが周囲に響き、他の者達は小さく笑みを浮かべていた。
いや、実際にウニとかも美味そうだけどな。
「穴子の一本握りをよろしく」
そんな中、俺が頼んだのは穴子の一本握り。
普通なら穴子の切り身を煮て握るのだが、こちらは穴子を切り身にしないで一本そのまま煮込んだネタ。
そうして出て来たのは、酢飯ではなく穴子がメインとなっている寿司。
煮込まれた身は柔らかく、濃厚な味が口の中一杯に広がる。
「じゃあ、私はアワビを」
俺の隣に座ったゆかりがアワビを注文する。
分厚いアワビの身に幾つも隠し包丁を入れて、噛み切りやすくなっているそれは、見るからに美味そうだった。
穴子の一本握りを食い終わり、俺もアワビを注文。
分厚い身なのに、予想通りあっさりと噛み千切る事が出来た。
赤身、中トロ、大トロといった風に順番に食べ比べ、ネギトロや漬け、炙りといったものも食べていく。
個人的にはマグロの頭の脇の身を使った巻物が美味かったと思う。
他にもヒラメの昆布締め、鯛の湯引き、ちょっと珍しいところでハモといったところ。
それ以外にも様々な寿司を食べ……最終的に、寿司ネタが全てなくなるまで食いつくす事になった。
ちなみに、3人の寿司職人は、全員が高級寿司店で働いている寿司職人で、今日は武治が桐条グループとしてのコネを使って特別に呼び寄せたらしい。
ちょっと聞いた感じだと、普段は一貫で数千、もしくは数万単位の寿司を握っているような職人だとか。
……そういう職人をこういう場所に連れてくる辺り、桐条グループの力って凄いよな。
デザートに用意されたアイスを食べながら、しみじみと思う。
「アルマーさん、その……お腹、大丈夫ですか? 今夜戦いになる可能性が高いんですよね?」
そんな俺に、天田が心配そうに話し掛けてくる。
「ああ、問題ない。俺はどれだけ食べても腹一杯で動けなくなるって事はないしな」
寿司を味わって、それが腹の中に入れば即座に魔力として身体に吸収されるのだから、食いすぎで動けなくなるといった事は有り得ない。
もっとも、俺が混沌精霊だと知らない天田にとっては、魔法でどうにかしているとか、そんな風に思っても不思議ではないのだが。
「あれだけ食べても動きに影響が出ないなんて……羨ましいわね」
ゆかりがそう言うと、他の面々も同意するように頷く。
まぁ、恐らくこれから幾月の襲撃があると判断している中で、戦いに影響するくらい腹一杯食べるという事が出来なかったからだろう。
一流の職人を呼んで、ネタも一流のものを揃えての寿司パーティで腹一杯食べる事が出来ないというのは……いやまぁ、結果的に俺は多く食べられたから文句はないんだが。
正直な話、かんぴょう巻きですら唸るくらいに美味かったというのは、かなり驚きだった。
俺にとってかんぴょう巻きというのは、おまけというか、箸休めというか……そんな印象だったんだが、かんぴょうというのも手間暇を掛けて技術を持った職人が作ると、あそこまで美味いものになるんだな。
そんな俺達の話を聞いていた武治が、笑みを浮かべて口を開く。
「ふむ、ではそうだな。全てが無事に片付いたら、改めて皆に何かご馳走しよう。寿司は今日食べたから……それ以外で何か希望する料理があったら考えておいてくれ」
「お父様、いいんですか?」
武治のその言葉は、娘の美鶴にとっても意外だったのだろう。驚いたようにそう声を掛ける。
「ああ、構わん。美鶴にも影時間の件では色々と苦労を掛けたしな。彼と一緒にゆっくりと楽しむといい」
「なっ!? お、お父様!?」
美鶴が顔を赤く染め、武治に何かを言い返そうとする。
それを見たゆかりは、何故か俺にジト目を向けてきた。
いや、俺が何でそんな風な目で見られるんだよ。
「へぇ、好きな料理か。な、チドリは何が食べたい?」
「中華。この前順平の部屋で見た漫画で美味しそうだったし」
「あー……なるほど。フカヒレとか北京ダックとか、高いけど美味そうだよな。豚の角煮とか……うん、そうだな。なら俺も中華料理に一票かな」
順平とチドリのそんな会話が聞こえてくるかと思えば、少し離れた場所では真田と荒垣の2人も話している。
「高級牛丼とか、ちょっと食べてみたいと思わないか?」
「馬鹿、止めておけ。折角奢ってくれるって言うんだから、もっと美味い料理を頼め」
「いや、けどよ……」
「けどじゃねえ。ったく、こういう時じゃねえと食べられないものを頼むんだよ」
「高級料理……フランス料理のフルコースとか?」
「……お前の中が典型的な感じなのはよくわかった。高級料理=フランス料理のフルコースとはな。いやまぁ、実際にそういうのを食べようとすればかなり高くなるんだろうが……お前、ナイフとかフォークを使って作法通りに食べる事が出来るのか?」
「ぐ……いや、じゃあ、お前はどうなんだよ」
相変わらずの2人の会話。
離れた場所では、アイギスが有里や山岸にどのような料理を食べたいのかを聞いている。
ちなみにアイギスは今日の夕方まで掛かってしっかりと調査し、幾月が仕掛けたと思しきプログラムの類は全て消去済みだ。
そんな訳で、こうして現在は寮に戻ってきていた。
「ふむ、寿司でありますか? 今日食べたばかりなのでは?」
「うん、そうだけど。今日はこれからの件で腹一杯食べる事が出来なかったからね。殆どアルマーに食べられてしまった形だし」
「……アルマー君、よくあんなに食べられるわよね。凄いです。……私があんなに食べたら……」
山岸の言葉に、どこか恨みに近い感情が混ざっているように思えるのは、俺の気のせいだろうか。……うん、気のせいだよな。
そう思いつつ俺も他の面々と話をし……やがて、時間が午後11時59分となると、皆が自然と黙り込む。
俺だけではなく、皆が既に今夜も影時間が来るだろうというのは予想している筈だ。
それでも、もしかしたら……本当にもしかしたら、影時間は昨日の一件で解決したのではないかと。そんな一縷の望みを抱きながら、自然と皆の視線が時計に向けられる。
そして秒針が55秒、56秒、57秒、58秒、59秒となり……日付が変わった瞬間、世界は影時間へと姿を変える。
「やっぱりな」
そう呟く俺の言葉に、何人かが頷いているのが分かる。
予想通り、影時間はまだ終わっていなかったのだ。
「はぁ」
武治の口から漏れるのは、苦い溜息。
だが、他の面々と同様、そこにショックはない。
武治も当然のように、昨日で影時間が終わっていたとは思っていなかったのだろう。
「さて、では……」
そう武治が何かを言おうとした、その瞬間……リンゴーン、リンゴーンといったような鐘の音が聞こえてくる。
それは、影時間の中では今まで聞いた事のない音。
当然のように俺達は視線を合わせるが、誰もがその鐘の音の正体を知っている訳ではない。
だが……それでも、誰が原因なのかというのは、予想するのは簡単だった。
「これは……月光館学園、いや、タルタロスから聞こえているのか?」
美鶴のその言葉は正しく、反射していて分かりにくいが、この鐘の音が聞こえてくるのは間違いなくタルタロスからだ。
「どうやら、向こうは俺達をタルタロスで待ち受けているらしいな。これは、幾月からの挑戦状だろう」
結果として、そのような結論となる。
他の面々も俺の言葉に異論はないのか、早速戦闘準備を整えてタルタロスに向かおうとするのだが……
「アクセル、私も連れて行ってくれないか?」
不意に、武治がそんな事を言ってくる。
そんな武治の様子に、正気か? といった視線を向けてしまったのは、間違っていないだろう。
「これから向かう場所は、多分……いや、恐らく確実に戦闘になるんだぞ? そんな場所に、こう言ってはなんだが、戦闘力という点では全く数えられない足手纏いを連れていくのか? しかも、もしこれが本当に幾月の仕業だとすれば、幾月は戦闘力がない武治を狙ってくるのは間違いないぞ」
「心配するな、一応戦闘力はある」
そう言いながら、懐から拳銃を取り出す武治。
……まぁ、それが普通の相手なら特に問題はないが……いや、戦闘力という点で考えれば、幾月も武治とそう変わらないのか。
だが、向こうにはタカヤとジンが……それを言うなら、こっちにはより多くの戦力が揃ってるな。
不味い、武治の意見を否定する理由が思いつかない。
勿論、ただ漠然と危ないからここに残れというのもありなのだろうが、武治の様子を見る限りでは、そう言っても多分聞き入れる様子はない。
そうなると……
「美鶴達が構わないのなら、俺は別に構わない」
結局、美鶴達に丸投げする事にした。
もっとも、これは何の理由もなくそのような真似をしている訳ではない。
美鶴率いるS.E.E.Sは、桐条グループの傘下にある組織と言ってもいい。
つまり、美鶴の上司が武治であると言ってもいい。
一応俺やゆかり、コロマルといった面々も桐条グループとは協力関係にあるのだが、俺達とS.E.E.Sのどちらが桐条グループと関係が深いのかと言われれば、それは迷う事なくS.E.E.Sだろう。
ましてや美鶴は武治の娘なのだから、その辺りを決めるのは当然のように美鶴が決めた方が、後々揉めずに済む。
「わ、私か?」
「ああ。美鶴が連れていってもいいのなら、俺は構わない。一応護衛として炎獣を1匹用意してもいい。ただし……戦場になった場合、そこでは何が起こるのか分からない。それは、今までシャドウとの戦闘を続けてきた美鶴なら、十分に分かっている筈だ。それでも構わないというのなら、俺はこれ以上は何も言わない」
その言葉に、美鶴は難しい表情を浮かべる。
武治には安全な場所にいて欲しいという思いと、武治が影時間撲滅にどれだけの執念を燃やしてきたのかを知っているからこそ、タルタロスに連れていってやりたいという思いが交錯してるのだろう。
「お父様、どうしても行かれるのですか?」
「そのつもりだ。幾月を信じて重用してきたのは私なのだから、その最後はしっかりと見届けたい」
「ですが、お父様では……」
最後まで言葉にはしなかったが、美鶴が何を言おうとしたのかは分かる。
単純に言えば、足手纏いだと言いたかったのだろう。
だが、武治はそれを理解した上で、再び口を開く。
「どうあっても、今回私は退く訳にはいかんのだ。それに、私は美鶴達を……そしてアルマーを信じている。私の身に危険が迫る事はないだろう、とな」
「……分かりました。アクセル、頼む」
結局、美鶴は武治に押し切られて……武治の同行を承諾するのだった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389
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