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レーヴァティン

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第五十二話 水の都その六

「やるか」
「おいおい、まさかと思うけれどな」
「だから俺達がな」
 遠い目をで水面を見つつ親父に話した、水面からはその下にいる魚達が見える。観れば結構な大きさである。
「やるかって言ったんだよ」
「海の魔神を倒すのかよ」
「そうしようか」
「無理だろ、それは」
 親父は久志の今の言葉を笑い飛ばして言った。
「流石にな」
「そう思うよな、普通は」
「あんた達強そうだけれどな」 
 それでもというのだ。
「相手は魔神、神様だからな」
 それ故にというのだ。
「ちょっと以上に無理だぜ」
「その無理をな」
「やる気かい?」
「そうしてみるな」
「じゃあその言葉信じさせてもらうか」
 親父は何処かに希望を見出して久志に応えた。
「そうしていいか?」
「期待してもらって結構ですってな」
 久志は親父に顔を向けて笑って応えた。
「そう言っておくな」
「期待してもらってか」
「いい言葉だろ」
「ああ、あんたの言葉かい?」
「俺の知ってるスポーツ選手だった人の言葉だよ」
 正確に言えばプロ野球チーム、阪神タイガースの監督であった岡田彰布である。現役時代は強打だけでなく守備もよい二塁手で監督としても的確かつ理論的で育成にも秀でた監督であった優れた野球人である。
「その人の言葉だよ」
「スポーツ?フェシングかい?」
「剣じゃなくて棒を使う方だよ」
「ああ、棍棒かい」
 親父は今度はこれを出した。
「それを使うのかい」
「そうだな、そうなるな」
 この島の人間は野球を知らない、だから久志もそのことを念頭に置いてそのうえで親父にこう返した。
「棍棒で球を打つんだよ」
「ビリアードみたいなのか」
「それは違うか」
「そうなんだな」
「けれどな、棒で球を打つスポーツでな」
「選手だった人がか」
「ああ、そう言ったんだよ」
 こう話すのだった。
「期待してもらって結構だってな」
「そうか、じゃあ頑張りなよ」
「この島と東の島だけだとな」
「やっぱりあれだよ」
 それこそとだ、親父は久志に話した。
「商いとかにも限界があるしな」
「ヴェネツィアでもな」
「ああ、ここでもな」
 実際にと言う親父だった。
「二つの島だけだとな」
「商売も狭いか」
「まして戦争ばかりしてるだろ」
「どっちの島でもな」
「モンスターだって出るしな」
 こちらの問題もあってというのだ。
「何とかして欲しいってのはあるな」
「誰かにか」
「ああ、平和になって魔神も倒して」
 そうしてというのだ。
「下の世界とも商いとか出来たらな」
「もう最高か」
「そうだよ、それこそな」
 まさにと言う親父だった。
「だからな」
「俺達がそう思うならか」
「それで動いてくれたらな」
 それこそと言うのだった。 
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