共和制
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第一章
共和制
村本和毅は自分自身について自慢していることがあった、それは彼にとって絶対のアイデンティについてである。
彼はその細い目の顔でいつも言っていた、髪型は黒のボブカットだ。
「俺は階級否定してるねん」
「それでか」
「それでやねんな」
「そや、共和制を支持してるんや」
こう言うのだった。
「それが俺の考えや」
「そうやねんな」
「自分は共和制支持者か」
「ほな日本もか」
「共和制であるべきか」
「そう思ってる、皇室なんてね」
侮蔑を込めての言葉だった。
「なくしてや」
「共和制か」
「日本は共和国になるべきか」
「そう言うんやな」
「ああ、どの国もやけどな」
飲み屋で大学時代の友人達と話していての言葉だ、彼は今はある高校で教師をしているがそこでも生徒達に言っている。
「共和制であるべきか」
「階級なくしてか」
「皇室とか王室もか」
「なくしてか」
「どの国も共和制になるべきか」
「そうならなな」
それこそというのだ。
「あかんわ、人間は皆平等や」
「天の上に人を作らずやな」
一人がビールを飲みつつ福沢諭吉の言葉を出した。
「それやな」
「福沢諭吉は脱亜論で嫌いやけどな」
村本は福沢諭吉については嫌な顔をして言った。
「その通りや」
「それでか」
「そや、皆平等やのになにで王様とかおるねん」
そして皇室があるのかというのだ。
「それやったらな」
「もうか」
「絶対にや」
それこそと言うのだった。
「そもそも貧富の差とかもな」
「あってはならん」
「皆平等やからやな」
「階級も貧富の差もなくす」
「そうあるべきやな」
「今の日本見てみい」
村本は自分の酒の肴である焼き鳥を食いつつ言った、タレで味付けされている鶏肉と葱が実にいい。
「独占資本がのさばっててな」
「資本家がな」
「それで自分達だけ贅沢してやな」
「庶民はこんなもんや」
今の自分達の様にというのだ。
「しがない店でな」
「飲んでそしてやな」
「焼き鳥みたいなの食ってる」
「庶民の食いもので憂さを晴らす」
「そうしてるんやな」
「そや、そんなのや」
まさにと言うのだった。
「資本家の連中は酒池肉林でな」
「それで皇室もか」
「たらふく食ってる」
「そうした状況やってんやな」
「こんなの間違ってる、そやから革命を起こしてや」
そのうえでというのだ。
「日本を共和制にすべきや」
「平等な社会にか」
「そうしていくべきか」
「自分はそう考えてるんやな」
「それが俺の考えや」
まさにとだ、村本はジョッキのビールを飲みつつ誇らしげな笑みで言い切った。
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