天体の観測者 - 凍結 -
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レーティングゲームⅢ
前書き
レーティングゲームⅢです
ではどうぞ
堕天使の力である雷光と悪魔特有の力である魔力を同時に収束、圧縮、凝縮させることで放った朱乃の一撃はユーベルーナだけに止まらず、背後の体育館さえも消し飛ばした。
その絶大なる一撃は体育館を瞬く間に塵とし、体育館の後方の大地さえも消し炭と化す結果となった。
その威力、恐るべし。
その身に直撃を受けることになったユーベルーナを敵であるにも関わらず同情してしまう。
この場の誰もが驚きに言葉が出てこない。
当人である朱乃はユーベルーナを撃破した直後、手はず通りにこの場から飛翔している。
このレーティングゲームにて初めて彼女の実力を見ることになった一誠は呆然と焦土と化した大地を校庭から見渡していた。
一誠達と合流した木場も小猫と同じ様に表情変えずとも内心驚いていた。
朱乃の驚異的な成長スピードに。
「凄い…威力…。」
「何て威力なんだ…。」
光力と魔力の掛け合わせ技だなんて。
本来ならば相反する存在である者同士が有する力を混ぜ合わせるとは。
堕天使と悪魔の力を有する彼女ならばいずれ光力と魔力を同時使用することは予想していた。だがこのレーティングゲームの時とは、ライザー陣営も運が無い。
効率的な光力と魔力の遣い方を彼女はウィスから教授されていた。
今回のレーティングゲームに向けてウィスがリアス達に教授していたこともライザー陣営の運の無さを後押ししている。
リアス達は実に良い師に恵まれたようだ。
敵には容赦なし、見つけ次第サーチアンドデストロイ。
ウィスがリアス達に教授した作戦は実にSッ気な性格である朱乃に合っていたようである。
思い返してみれば先程の彼女は少しだけ頬を紅く染めていた気がする。
文字通り、ユーベルーナは朱乃の犠牲となったのだ。
「驚くのもそれぐらいにして、真打の登場だよ、一誠君、小猫ちゃん。」
前方を見据えれば新たな敵であるライザーの眷属達の姿が。
『騎士』カーラマイン&シーリス
『戦車』イザベラ
『兵士』ミィ&リィ
『僧侶』美南風
真打の登場である。
木場達は各自自身の武器を構え、彼女達を迎え撃った。
▽△▽△▽△▽△
「すー、すー…。」
可愛らし気な様子でオーフィスは寝息を立て、ウィスの腕の中で横になっている。
彼女は完全に目の前で繰り広げられているレーティングゲームへの関心を失っていた。
「さて、それでは、私はそろそろこの場から失礼させて頂きますね。」
もうこの場に用はないとばかりにウィスは椅子から立ち上がる。
変わらずオーフィスが起き上がることはない。
「おや、もう行ってしまうのかい、ウィス?まだリアス達のレーティングゲームは中盤に差し掛かったばかりだというのに。」
この場を去ろうとするウィスをサーゼクスは呼び止める。
そう、レーティングゲームは漸く中盤に差し掛かり、面白味が増してきたところなのだ。
仮にも10日間の間リアス達を鍛えてきたのならば最後まで見るべきなのでないかとサーゼクスは言外にウィスへと意見する。
「最後まで見るのはそれはそれで愉しみでもありますが…、残念なことに私にはこのレーティングゲームの行方は視えています。一足先に私はリアス達の勝利を祝うべくこの場を後にすることにしますよ。」
そう、この戦いはリアス達が勝利する。
この事実は依然として変わらない。
「その根拠とは一体何なのでしょうか、ウィス様?」
サーゼクスの言葉に続き、今度はグレイフィアがウィスへと問いかける。
「ふむ、そうですね。……一般的な悪魔の実力を1だと仮定した場合、上級悪魔であるライザーの戦闘力を5だとして話を進めましょう。」
上級悪魔であるライザーの悪魔としての実力を数値として換算した場合の値は5。
そう、5である。
「対するグレモリー眷属の戦闘力の数値ですが…、王と女王であるリアスと朱及の2人は5に届くかどうか、騎士である木場は4.5、戦車である小猫は4、兵士である一誠は神器込みでいえば4くらいです。」
此処では戦闘タイプではないアーシアは除外する。
「そして戦況を見れば、現在ライザー側の眷属達は女王と戦車1名、兵士6名を含めた計5名が脱落しています。対するグレモリー眷属は誰一人として脱落していない優勢。」
客観的な数値が全てを表すとは限らない。
だがモニター越しにレーティングゲームを見た結果、状況的にも実力的にも今のリアス達の方が優勢だ。
「このまま何事もなく進めば間違いなくこのゲーム、リアス達の勝利です。」
リアス達が慢心や油断をしなければの話だが。
『…。』
グレモリー眷属の勝利を言い残しウィスはその場を後にする。
サーゼクス達から向けられる怪訝な視線を背中に感じながら。
▽△▽△▽△▽△
「…何…だと…?」
邂逅の直後、地に倒れるはライザーの騎士であるカーラマイン。
勝利するは同じ騎士である木場祐斗。
「正直僕も驚いているよ。自身の実力がここまで伸びているなんてね。」
身体が噓のように軽い。
修行期間中に科されていた全ての枷が解かれた今、木場の実力は本人の想定以上に伸びていた。
さて、仕上げだ。
「一誠君!」
「おう、任せな!赤龍帝からの贈り物!」
一誠は木場がカーラマインと戦闘中に蓄積しておいた倍加効果を木場へと譲渡する。
途端、木場の身体は淡い緑の光を帯び、活力が身体中に溢れかえる。
続け様に木場は自身の神器を校庭の地面へと勢い良く突き立てた。
「魔剣創造!」
途端、残りのライザー眷属達を猛威が襲う。
それは剣でもあり、盾でもあった。
木場の神器によって創造された多種多様な武器の猛威が容赦なく彼女達に牙を向く。
為す術無くその身に数多の刃の猛襲を受け、致命傷を受けてしまう彼女達。
「…まだだよ。」
だがそれでも木場は攻撃の手を止めない。
否、己の主であるリアスの人生を賭けたこのレーティングゲームに必ず勝利するべく手を抜いてはならないのだ。
さあ、止めの一撃だ。
次の瞬間、魔剣創造によって創られた全ての武器から眩いまでの光が放たれた。
それに伴う大爆発。
校庭の地面は大きく凹み、爆風が辺りを支配する。
武器の内部に内包されていた魔力を暴発させ、爆発させた一撃。
致命傷を受け、リタイア寸前であったライザー眷属達は軒並み消滅した。
『ライザー・フェニックス様の騎士2名、戦車1名、兵士2名、僧侶1名、リタイア』
グレイフィアの戦況を伝える無機質な声がアナウンスで周囲に響く。
「やったな、木場!これも全て修行のおかげだな!」
「そうだね、一誠君。あの人に鍛えてもらっていなければこうも簡単に僕達は勝つことはできなかっただろうね。」
「…祐斗先輩の言う通りです。」
木場達は互いを労わる。
「あら、随分と面白いお話をしていますのね、リアス・グレモリーの騎士さん?」
そんな彼らの上空から透き通るような女性の声が。
「お前は…レイヴェル・フェニックス…!」
新たな真打の登場に身構える木場達。
彼らは油断も慢心もしていない。それがウィスから教わった闘いにおける心構えだからだ。
空から舞い降りるはライザー・フェニッスの妹であるレイヴェル・フェニッス。
人目を惹くは綺麗に編まれた金髪のツイン縦ロールの髪。
その背からはフェニックス特有の炎の翼を生やし、実に緩慢な動きで地上へと降り立った。
「正直、驚かされていますわ。貴方方の驚異的な実力の成長速度に。まさか誰一人として欠けることなく私とお兄様以外の眷属を倒してしまうなんて。」
彼女は明らかに数では劣り、不利な状況にも関わらず余裕を崩さない。
「ウィスさんの過酷な修行を乗り越えた俺達にとってこれくらい屁でもないぜ!」
「…一誠先輩の言う通りです。」
あの地獄の10日間の修行に比べたらこの程度どうということもない。
「"ウィスさん"…?それは一体どなたですの?」
一誠達の口から出た"ウィス"という名前に難色の色を浮かべるレイヴェル・フェニックス。
「ウィスさんは僕達の師匠のような方だよ。彼のおかげで僕達はここまで強くなれたんだ。」
木場は誇らしげな様子を見せながら、剣の切っ先をレイヴェルへと向ける。
「…成程、そういうことでしたの。その"ウィスさん"と呼ばれる殿方がここまで貴方達を鍛え上げたと…。」
彼女の脳裏に浮かぶは先日オカルト研究部を訪れた際に見かけた一人の男性の姿。
自身の兄であるライザーに目もくれず呑気にケーキを頬ぼっていたのを覚えている。
あの時は何の力も持ち得ない唯の一般人だと早々に見切りを付け、侮っていた。
だがそれは自身の慢心から生み出された誤解であったようだ。
あの能天気な様子は此方を欺くためのフェイク。
あのお気楽な様子は全て此方を見向きもせず、相手にもしていない証拠に他ならない。
「どうやら私達は貴方方を侮り過ぎていたようですわね。運も実力のうちと言いますし…。このレーティングゲームは"ウィスさん"を味方に付けた貴方方の勝利に傾きそうですわね。」
彼女の口から放たれるは実質的な敗北宣言。
その口振りから自身の兄を気にも留める様子は皆無だ。
彼女は実に口元に愉し気な笑みを浮かべている。
「恐らく、彼のことだ。この試合の行く末も視えているのだろう。」
「確かに…。」
「あの人は文字通り次元が違うからなぁ…。」
一誠は乾いた笑みを浮かべる。
「それはそれは…、わたくし…、"ウィスさん"という殿方にますます興味が湧いてきましたわ…。」
レイヴェルはそのきめ細かな指を顎へと乗せ、笑みを深める。
どこか意味深な言葉を残しながら彼女は木場達へと背を見せ、空高く飛び立っていった。
「何だったんだ、彼女は…?」
「…恐らく、ウィスさんに興味を持ったのかと…。」
「おいおい、これ朱乃先輩大丈夫か?」
そんな彼女を地面から木場達が見詰めていた。
「…。」
「ど…どうしたの、朱乃?殺気立てているけど…?」
剣吞な雰囲気を発する自身の女王にリアスは恐る恐る声を掛ける。
「いえ…、何か嫌な予感がしまして…。」
「そ…そう。」
今の彼女に余り関わらないことを決意し、リアスは足を進めた。
触らぬ神に祟りなしである。
「…!?」
突如、背中に感じる寒気。
久しく感じていなかった恐怖にも似た感情だ。
ウィスは懐かしくも、忘れがたいとある一人の女性との遣り取りを回顧する。
今感じた寒気は自分が女性と仲良さげにしていた時にその女性が自分に向けてきたものと同じものだ。
「すー、すー。」
ウィスは無意識にオーフィスを抱きしめる力を強める。
珍しくもウィスは焦った様子を見せていた。
▽△▽△▽△▽△
此処はライザー眷属の本拠地。
「…。」
そんな中、ライザーは一人静かに瞳を閉じ、重々しく座していた。
愛する眷属達が自分を除き全員がリタイアしたことはアナウンスによって既に知っている。
自身の妹であるレイヴェルも先程自らリタイアした。
初めから妹には期待などしていなかったが。
対するグレモリー眷属は誰一人として脱落しておらず、此方は残るは己一人だ。
何より自身の懐刀であるユーベルーナが撃破されたことに驚きを隠せない。
誰がこの意外な結果を予想できたであろうか。
「…ようやく姿を現したか。遅すぎる到着だな、リアス。」
背中からフェニックス特有の炎の翼を用いて宙に浮遊し、ライザーはリアスの遅すぎる到着を迎える。
眼下のリアスの表情は前髪に隠れ、伺い知れない。
リアスの傍には彼女の女王である朱乃と僧侶であるアーシアが佇んでいる。
「…ええ、そうね。」
リアスの口から出るは簡潔な言葉。
此方と問答に真面に応じるつもりはないようだ。
だがライザーは一瞬たりとも気を抜くことはない。
感じるのだ。
10日前とは比較にならない程にリアスの実力が飛躍的に上昇していることに。
一体どんな修行をしたのか。
今のリアスから感じる魔力の高まりは自分にも迫る勢いだ。
彼女の潜在能力は理解していた。
伊達に現魔王サーゼクス・ルシファーの妹ではない。
リアスは順調に悪魔として成長すれば最上級悪魔になる可能性を秘めているだろう。
だがそれは今ではない。
遥か未来の話だ。
しかしどういうわけか眼前に佇むリアスは最上級とはいかずとも上級悪魔に相応しい実力を有している。
想定外の事態だ。
しかし…
「…だが分かっているはずだ、リアス。いくらお前が強くなろうと現時点のお前では俺を倒すことなどできん!」
不死鳥としての炎を強く燃え上がらせ、ライザーはリアスを強く射抜く。
周囲の温度は瞬く間に上昇し、ライザーの存在感を圧倒的なものしていく。
「…。」
変わらずリアスはだんまりと黙り、依然としてライザーの問いに応えることはない。
「…いいえ、違うわ、ライザー。」
「何?」
途端、この場に数人の影が空から降り立った。
そう、リアスの眷属達だ。
「私達で貴方を倒すのよ!」
リアスの隣には赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》をライザーへと掲げる一誠の姿が。
見れば朱乃達は皆一様に体の何処かに傷や怪我を負っているが、至って軽症だ。
全員が戦闘続行に問題はなく、健在の様子である。
「…俺の下僕達を誰も欠けることなく打ち倒し、この場に勢揃いしたか。」
ライザーは戦況を冷静に分析し、リアスと彼女の眷属達を見下ろす。
「…成程。どうやら俺はお前を誤解していたようだな、リアス。お前はこの10日間という短い期間で大きく成長したようだ。」
「だが俺も三男とはいえ腐ってもフェニックス家の一人。こんなところで負けるつもりなど毛頭ない!」
フェニックス家としての誇りを胸にライザーは豪語する。
互いに本心で望まない政略結婚であろうとも貴族の責務を果たすべくライザーは自身を奮い立たせるのだ。
ライザーは上級悪魔に相応しい魔力を高まらせ、フェニックス特有の業火を燃えがらせた。
今此処で遂にリアスとライザーの両者が対面する。
─レーティングゲームの終極も近い─
後書き
レイヴェル・フェニックス好きな人います?
作者もHigh School D×Dの女性キャラの中でレイヴェルはかなり好きなキャラなんですなんが('ω')
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