憤怒身
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第三章
週末で甲子園で巨人との三連戦の時が来た、この時寿は千佳に誇らしげに笑って言った。
「千佳、今年の阪神を見ていろよ」
「ここから勝ちまくるっていうのね」
「巨人は既に死んでいるからな」
近頃の巨人の不調を見ての言葉だ。
「どうせなら強い相手と戦いたいけれどな」
「そこで余裕出すのね」
「余裕も余裕だ、けれど全力でな」
「巨人に勝つのね」
「ああ、三連勝だ」
それを果たすというのだ。
「そこから一気にな」
「一位になってっていうのね」
「ああ、優勝だ」
そうなるというのだ、そしてだった。
寿は甲子園に自転車で向かった、千佳はネット観戦に興じることにしたが。
ここでだ、母にこんなことを言った。
「お兄ちゃん凄い顔で帰って来るかも知れないわね」
「そうなのよね」
母もわかっている顔であった。
「阪神って何があるかわからないから」
「普通はね」
ここでこう言った千佳だった。
「今の巨人だったら二勝は出来るわ」
「三連戦の中で」
「ええ、出来る筈なのよ」
「筈なのね」
「そう、筈よ」
こう言うのだった。
「あの巨人の調子じゃね」
「けれどね」
「ええ、開幕でもだったでしょ」
千佳は兄があえて無視しているこの時のことを話した。
「最初は勝ったけれどね」
「それからね」
「連敗してるじゃない」
「しかも同じ選手に二試合連続でスリーラン受けて」
「あんな冗談みたいな展開がね」
「普通にあるチームなのよね」
「だからね」
それ故にというのだ。
「負け越しとかね」
「ありそうね」
「ええ、けれど流石にね」
千佳はこうも言った。
「一勝はするでしょ」
「今の巨人相手なら」
「阪神もそんなに弱くないし」
「そうなるかしら」
「多分ね。というか三連勝はね」
寿が言い切ったそれはというと。
「まあないわね」
「それはよね」
「ええ、ないわ」
こう言うのだった、だが。
一試合目は藤浪が乱調で惨敗、寿は怒り狂って全速力で家まで帰ってきた。すると母はすぐに息子に言った。
「お風呂入りなさい」
「うん、入るよ」
怒った顔で応える寿だった。
「今全身汗だくだから」
「また西宮から全速で帰ってきたのね」
「そうだよ、全く」
寿は憤懣やるかたない顔で言った。
「四球出しまくって討たれて」
「負けたっていうのね」
「何でいつもああなんだろうね」
ここ三年の藤浪はというのだ。
「困るよ」
「それはわかったからね」
「うん、お風呂だね」
「まずは冷たいシャワー浴びなさい」
言うまでもなく怒りを鎮める為だ。
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