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レーヴァティン

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第五十一話 川旅その十一

「青、そして」
「白か」
「そうした温度のものを出せば」
 それでというのだ。
「水の中でもです」
「戦えるか」
「はい」
 こう久志に話した。
「間違いなく」
「水の中でもな」
 レーヴァティンで戦える、それならだった。
 久志も安心してだ、こう言えた。
「それならいいさ」
「それでは」
「水の中でもレーヴァティンでいくな」
「そうしていきましょう」
「そういうことでな、しかし今はな」
 今度は今の船旅のことをだ、久志は思って言った。
「のどかだな」
「そうだね、今のところはだけれど」
 源三も言う。
「のどかだね」
「穏やかな船旅だな」
「本当にね、飲んで食べて」
「豪華客船ではといかないけれどな」
 そうした優雅な旅ではないがというのだ。
「いい旅だな」
「そうだね、料理もいいし」
「酒も美味くてな」
 久志はここで白ワインを飲んで言った。
「いいワインだな」
「甘口でね」
「幾らでも飲めるな」
「ムニエルにも合ってるよ」
 一行の食卓に出ているそれにもだった。
「カルパッチョにもね」
「やっぱり魚介類には白だしな」
 ワインはとだ、久志もその通りだと言いつつ食べる。
「それならな」
「白ワインが美味しいといいね」
「ああ、しかもムニエルの鱈もな」
 それもだった、食べると。
「でかくて身もしまってて」
「美味しいね」
「味付けもいいぜ」
 肝心のそれもというのだ。
「オリーブオイルで程よく焼いていて」
「塩胡椒で上手に味付けしてて」
「ソースだってな」
「完璧に近いね、この味付けは」
 源三はムニエルの味を駒かいところまで味わいつつ久志に話した。
「イタリアの感じだね」
「ソースもか」
「オリーブが第一だけれど」
 それだけではなくというのだ。
「味付けや焼き加減がね」
「イタリアか」
「ソースもね。僕達の世界で言う」
 イタリア、この国の味付けだというのだ。
「多分シェフの人はヴェネツィアの人なんだろうね」
「それでイタリアの味か」
「少なくともドイツじゃないよ」
 この国の味付けではないというのだ。
「ドイツは魚料理はメジャーじゃないし」
「肉だよな」
「そう、豚肉だよ」
 ドイツでよく食べられる動物性蛋白質はというのだ。
「そっちでね」
「魚はあまり食わなくてか」
「こうした料理の仕方とも違うんだ」
「洒落た感じにはか」
「しないよ、オリーブだってこんなに使わないし」
 食べつつ言う源三だった、そのムニエルを。 
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