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レーヴァティン

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第五十話 今度は南へその六

「商いとか農業は賑わってるな」
「そうだね、戦っていっても何処も民や街や村には手を出さないから」
「それが大きいか」
「戦があっても戦見物をする位だから」
「戦国時代の日本みたいにか」
「戦はしょっちゅうだけれど」
 それでもというのだ。
「そんなに迷惑はかからないし」
「昔の欧州みたいにか」
「特に宗教戦争みたいなね」
 十字軍や三十年戦争の様にというのだ。
「そういうのにはならないから」
「いいんだな」
「ああした戦争になるとね」
 それこそというのだ。
「もう行くところ何もかもをじゃない」
「壊して殺してな」
「何も残さないから」
「そんな事態も起こらないからか」
「幾ら戦いが多くてもね」
「比較的平和なんだな」
「そうだよ、街も村もね」
 そのどちらもというのだ。
「こうして栄えてるんだよ」
「コペンハーゲンもこのハンブルグもな」
「他の街もね」
 そして村もだ。
「そうなんだよ」
「そうか、いいことだな」
「このことはね」
「そんな何でもとかいう戦争とか。あと軍税制度ってあったな」 
 久志は大学に入ってから読んだ本で得た知識をここで思い出した。
「土地だの何だのを荒らされたくなかったら金出せっていうな」
「それだね」
「ていのいい恐喝だよな」
 軍税制度についてだ、久志はこう評した。
「これってな」
「そうだよね、実際に払わなかったらね」
 その時はというと。
「略奪とか放火とかね」
「やるんだな」
「元々そういうことをされたくなかったらね」
「金とか出せってことだからか」
「そうなるよ」
 実際にというのだ。
「もっともそうした場合払えるだけを要求するけれど」
「略奪みたいに獲れるだけじゃなくてか」
「それに伴う蛮行もないし」
 こちらもというのだ。
「ないからね」
「素直に顔払う方がか」
「いいからね」
「それで払わせるんだな」
「ていよくね」
 それが軍税制度だ、三十年戦争の時にワレンシュタインがはじめ欧州において長い間定着した制度である。
「そうさせていたんだ」
「それがないからか、この世界にはか」
「悪い奴等は略奪するけれど」
「それはどうしてもあるよな」
 悪質な者達はだ、傭兵だけでなく正規の軍勢でもある。
「それでな」
「そう、そうした連中はね」
「取り締まられてるか」
「まともな領主や騎士団や傭兵団ではね」
「若しもそうしないとでござる」 
 騎士団にいた進太も言ってきた。
「政なぞ出来ないでござる」
「犯罪を取り締まらないってことでか」
「その様な騎士団なぞ誰も信じず尊敬しないでござる」
「領主だってそうだな」
「そうでござる、政をするならば」
 それこそというのだ。
「まず悪人達を取り締まる」
「それからだからな」
「略奪なぞはでござる」
「絶対に許さずにか」
「見付け次第捕まえて処罰でござる」
「当然のことだな」
「若し公然と略奪をするのならば」
 三十年戦争の様にだ、ワレンシュタインもそれを見てより効率のいい軍資金及び財産の得方として軍税制度を思い付いて実行に移したのだ。 
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