天体の観測者 - 凍結 -
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レーティングゲームⅠ
前書き
連続投稿
此処はオカルト研究部の部室。
リアス達は命からがらウィスの地獄の特訓から生還し、地球へと帰還していた。
時刻は深夜へと迫ろうとしている。
先程から室内の時計の指針が嫌にリアス達の耳に煩く響いている。
「それでは皆様、準備はよろしいですか?」
そう問い掛けるはグレモリー家のメイドであるグレイフィア・ルキフグス。
彼女は相変わらずの無表情にてレーティングゲームの開始の旨をリアス達へと伝えている。
オカルト研究部の室内を見ればこの10日間リアス達を鍛えていたウィスの姿も。
見ればウィスの膝の上にはゴスロリ姿の謎の幼女の姿もある。
その幼女は先程からウィスによって餌付けされている。
彼女の口周りにはケーキの泡が多く付着し、ずっとウィスからスプーンをその小さな口に入れられている。
「んー、ウィス。これから何かが始まる…?」
無表情にその幼女はウィスへと問い掛ける。
「気になるのですか、オーフィス?これからライザーという悪魔、そうですね…、焼き鳥とリアス達がレーティングゲームにて闘うのですよ。」
ウィスの余りの言いように吹き出すリアス達。
ウィスの口から放たれたオーフィスというビッグネームにはリアス達はノータッチである。
リアス達はもうウィスの規格外さについて思考することを止めていた。
慣れとは恐ろしいものである。
グレイフィアは自身の当たって欲しくなかった予想が当たっていることを理解し、余りの衝撃に意識を飛ばしてしまっている。
見れば彼女にしては珍しく表情を崩し、口をポカンと開けていた。
「ん、分かった。そんなことよりも我はケーキを所望する。」
「やれやれ食いしん坊ですね、オーフィスは。」
ウィスは苦笑しながらも手のかかる妹に接するようにオーフィスにケーキを与え続ける。
そんなオーフィスに対してついジェラシーを感じてしまっている朱乃。
とんだカオスである。
レーティングゲーム開始前にも関わらず、オカルト研究部の室内は混沌を極めていた。
だがこんな状況でも流石、ウィス。
どこまでも平常運転であった。
「コ…コホンッ!失礼しました。それではレーティングゲームを始めさせて頂きます。」
呆然としていたグレイフィアはすぐさま意識を取り戻し、レーティングゲームの開始の旨を述べる。
レーティングゲームの舞台は駒王学園を模したレプリカ。
グレイフィアの言葉を開始の合図にリアス達の姿は光に包まれ、舞台へと転送されていった。
「こらこら、これは私の分ですよ、オーフィス。」
「それでも食べたい。ウィス、我はお代わりを所望する。」
まるで親子の遣り取りを行うウィスとオーフィス。
「それではウィス様とオ…オーフィス様、お二人をVIPルームへとご案内させていただきます。」
もう自分一人では対処できないと判断したグレイフィアは思考を放棄した。
▽△▽△▽△▽△
此処はレーティングゲームを観戦することが可能なVIPルーム。
「いやはや実に楽しみですな。リアス様とライザー様とのレーティングゲームは。」
「はっはっは、早計過ぎではないですか?まだゲームは始まっておりませんぞ。」
「ですが正にその通り。あのリアス嬢がどうフェニックスのライザー様と闘うか実に見物です。」
「聞くところによりますとリアス様は10日間の修行期間をライザー様から頂いたらしいですぞ。」
「ほう、それはまさしくこのレーティングゲームの行方が分からなくなるというもの。」
「タイトルは紅髪の滅殺姫vs不死鳥に決まりですな。」
実に好き勝手物申す悪魔達。
彼らは此度のリアスとライザーのレーティングゲームを観戦しに来た悪魔の連中である。
彼らの口元に浮かぶは嘲笑の笑み。
奴らは確信しているのだ。このゲームはライザーの勝利で幕を閉じるのだと。
彼らは決してこの場にどちらかの応援をするべく来たわけではない。
奴らが本日このVIPルームに赴いた理由はただ一つ。
そう、暇つぶしだ。
その一言に尽きる。
初めから彼らはリアスに期待などしていない。
如何にリアスが自分達を楽しませてくれるか否か、それだけだ。
遠巻きにそんな悪魔の連中を見据えるはリアスの兄であるサーゼクス・ルシファー。
殺意を内包した眼光でその悪魔の連中を睨みつけている。
奴らは談笑に夢中になり、そんなサーゼクスの視線に気付いてはいない。
サーゼクスが彼らに一言物申そうと一歩踏み出した刹那…
「サーゼクス様。お客様をお連れしました。」
自身の最愛の妻であるグレイフィアが入室してきた。
「お疲れ、グレイフィア。」
気を取り直し、サーゼクスは彼女へと弔いの言葉をかける。
グリフィアは己の主であるサーゼクスへとぺこりと礼儀正しく頭を下げた。
「…それで君がグレイフィアとリアスが言っていたウィス君か。」
続けてサーゼクスは視線を横にずらし、グレイフィアの隣に佇む件の人物へと目を向ける。
「お初にお目にかかります、サーゼクス様。ご存知であるようですが改めまして…、私がウィスです。」
件の人物であるウィスを見れば奇抜なデザインが施された服装に身を包んでいる。
サーゼクスはそんなウィスに対して見定める様な視線を投げかけた。
ウィスもそんなサーゼクスを見返し、2人の視線が交錯する。
「ッ…!?」
途端、感じるまでの圧倒的な存在感。
成程、体感した。グレイフィアの報告通りだ。
推し量ることも愚かな程の圧倒的なまでの超越的な存在感。
サーゼクスはそんなウィスの存在そのものに圧倒されそうになりながらも、何とか気を取り直す。
「…話はかねがね聞いているよ。君がリアス達の修行を見てくれたんだってね。」
サーゼクスは動揺を悟られることがないように話題の転換を図る。
「ええ、その通りです。10日間の修行期間でリアス達は格段に強くなりましたよ。」
サーゼクスからの問いかけに対するウィスの反応は好感触だ。
彼曰くリアス達の実力は飛躍的に上昇したとのこと。
それは実に僥倖だ。
「そ…そうかい。」
ウィスの返答に喜色の色を浮かべるサーゼクス。
ウィスはそんなサーゼクスの内心を見透かしたように笑みを浮かべる。
見ればウィスの隣に佇むグレイフィアも心なしか嬉しそうである。
「ほう、それは実に僥倖ですな。」
「それはさぞかし素晴らしいゲームになることでしょう。」
「リアス様も上級悪魔としての実力に恥じない力をこのゲームで示せるというもの…。」
「兄として妹冥利に尽きますな、サーゼクス様。」
いけしゃあしゃあと心にもない言葉を述べる悪魔連中。
空気を少しは読め、老害共。
見ればサーゼクスとグレイフィアの視線も再び厳しいものへと変わっている。
ウィスの視線と纏う雰囲気も同じ様に厳しいものになっていた。
「それは聞き捨てなりませんね。何も知らない老害共は黙ってレーティングゲームを静観しているか、早々に出口から出て行ってくれませんか?」
ゴミ共は黙るか、早々に帰るの二択に限る。
「き…貴様っ!」
「口を慎め、人間風情が!」
「唯の人間がこの場にいることも許容し難いことだというのに我らに口答えをするか!」
「魔王様の御厚意も忘れたか!下賤な人間めが!」
煽り耐性、全くのゼロ。
こんな奴らは早々に破壊すべきなのではないだろうか。
これが悪魔の上級階級の悪魔なのだと考えるともう悪魔社会は終わりかもしれない。
だが、ウィスは決してこの場でそんな愚行は起こさない。
そう、ウィスがこれから行うのは言葉による説得だ。
「…もう貴方方は黙っていてください。」
ウィスは静かに、深く閉じていた紅き瞳を開く。
そう、勢い良く。
瞳を見開き、ウィスはその深紅の瞳にて目の前の悪魔共を射抜いた。
途端、ウィスを中心にVIPルーム内にて暴風が吹き荒れる。
かまいたちが如く暴風が周囲に暴れ狂い、瞬く間にその猛威を振るう。
室内の地面はウィスを中心にたちまちひび割れ、壁には大きな亀裂が走った。
天井はボロボロになり今にも崩れ落ちてしまいそうである。
モニターは全て割れ、老害共は皆一様に吹き飛ばされている。
奴らは無様に地面を転がり、威厳もくそもなく壁に埋もれていた。
傍に佇んでいたサーゼクスはウィスの超越的な力に戦慄し、グレイフィアもスカートを抑えながらも同じ様にウィスから放出される圧倒的なまでの力の本流に圧倒されている。
これが本当にたった一人の存在から放たれる力だというのか。
そう、ただ射抜いただけ。
ウィスは眼力だけでここまでの存在感を放っているのだ。
グレイフィアの予想は正しかった。
ウィスという存在は此方が御し切ることなどできない圧倒的なまでの超越者であったのだと。
超越者と呼ばれる自分でも全く太刀打ちできないことをサーゼクスは強く実感せざるを得ない。
気を抜いてしまえば自分もグレイフィアもその場から吹き飛ばされてしまいそうである。
ウィスから今なお放たれる圧倒的なまでの力はリアスとライザーがいる異空間にまで影響を及ぼし、空間にひびが出始めていた。
このままではあと数秒で異空間そのものが破壊されてしまうだろう。
そう、異空間を含めたこの空間そのものが揺れているのだ。
VIPルーム内の誰もが言葉を発せない。
ウィスの超越者たる力の片鱗に当てられているがゆえに。
「ほっほっほ、これは失礼しました。少し取り乱してしまいまして。」
途端、ウィスは先程までの雰囲気を一変させ、朗らかに笑う。
辺りを支配していた圧倒的な雰囲気が霧散し、周囲に吹き荒れていた暴風も治まった。
「あ…ああ、そうだね。そろそろリアスとライザー君とのレーティングゲームが始まる時間だ。」
周囲を見渡せばいつの間にか破壊された全ての物が修復されている。
影響を及ぼしていた異空間も何事もなかったかのように元通りになっている。
吹き飛ばされ、壁に埋まっていた悪魔の老害共も同様である。
訳が分からない。
今のは幻覚だったのか、それとも現実だったのか。
サーゼクスは長らく感じていなかった恐怖を思い出し、額から冷や汗を流していた。
見ればグレイフィアも同様に肩を上下させ、冷や汗を垂らしている。
「そ…それでは皆様方、モニターをご覧ください。」
息を整えながらもグレイフィアは皆にレーティングゲーム開始の旨を伝える。
グレイフィアの一言によりVIPルームの老害共を含めた全員がモニターを見詰める。
「ウィス、我はもう一つケーキを所望する。」
「ほっほっほ、またですか、オーフィス?」
サーゼクス達はウィスが最強の龍神の名を述べたことを幻聴だと思い込み、思考を放棄した。
─遂にリアスの運命を左右するレーティングゲームが始まる─
後書き
次回遂にレーティングゲーム始動
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