夢幻水滸伝
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第四十六話 都の星達その十
「それでどうや」
「どれだけでもええんですか」
「自分が欲しいだけな」
「わしは金が好きです」
まさにという返事だった。
「もっと言えば銀も宝石も」
「そうしたもんがやな」
「全部好きです」
それこそというのだ。
「それがどれだけ貰えるか」
「それがやな」
「この人伏星若山茂の関心ごとです」
「ほなそれで」
「そうしてです」
まさにというのだ。
「それがどれだけ貰えるか」
「それ次第でやな」
「お誘いがあって決めるつもりでしたが」
「自分が好きなだけ貰ってええで」
「ほんまにですか」
「ほんまやで」
綾乃は笑ってそのドワーフ若山に答えた。
「自分が好きなだけ」
「ほな一月辺り百両」
「あれっ、それ位でええん?」
「随分無欲ですにゃ」
若山の望む報酬の額を聞いてだ、綾乃だけでなく弥生も驚きの声をあげた。
「百両だとですにゃ」
「うちの星の子等やと安い方やな」
「うち二百両貰ってます」
「うちは棟梁やさかい貰ってないけど暮らしに不自由してへんから」
別にいいというのだ。
「百両って言われても」
「随分安いですにゃ」
「ほな二百十両で」
若山は二人の話を聞いてこう言った。
「それで頼みます」
「ほなそれでな」
「これから宜しくな」
「いや、百両でかなりって思ったのに」
それがとだ、唸って言う若山だった。ここで刀打ちが終わったが見事な出来だった。
「関西は凄いですな」
「内政充実してるからそれ位は何でもないで」
星の者に一月辺り二百両の報酬を出すこともとだ、綾乃は若山に対して実にあっさりとした口調で答えた。
「その分働いてもらうし」
「そうですか、二百十両分」
「あんじょうな」
「わかりました、鍛冶道具の稲荷と共に」
「それが若山君の神具やね」
「そうです、稲荷明神の力がそのまま宿っていて」
そうしてというのだ。
「決して壊れんし最高の鍛冶をさせてくれて鍛冶のことなら何でも道具から意志が伝わって教えてくれます」
「そうした神具やねんな」
「そうです」
こう綾乃に答えた。
「そしてそれで」
「頑張ってもらうで」
「一回雇ってもらったからには絶対に他には移りません」
他の勢力にはというのだ。
「それは約束します」
「義理やね」
「若し多くの報酬が欲しいなら」
若山はその黒い目を燃え上がらせて語った。
「それだけの仕事してみせますさかい」
「鍛冶屋としてやね」
「そうさせてもらいます」
「ほなこれからはやな」
「はい、思う存分です」
鍛冶屋としてとだ、若山は綾乃に目を燃え上がらせたまま応えた。
「働きますさかい」
「ほな内政の鍛冶全般をな」
「やらせて頂きます」
こうしてだ、若山もまた関西の勢力に加わった。彼は綾乃にこのことを約束してからこうしたことも言った。
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