真田十勇士
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巻ノ百三十一 国崩しの攻めその五
「それこそ我等が大坂から出るしかなくなる様なことをな」
「そしてそれはですな」
「茶々様は絶対に大坂から離れたくはない」
「大坂におられることこそが天下人の証だからですな」
「茶々様にとってはな」
天下人である秀吉が築いたこの城にいてこそというのだ、そして茶々は大坂にさえいれば何があろうと安心だとさえ思っているのだ。もうそれで落城し大切な者を失うこともないと確信しているからこそだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「そうなってもじゃ」
「講和となり大御所殿にどうされても」
「ここからは離れぬ、わしも大坂でそれがわかった」
茶々自身を見て彼女と話をしてだ。
「あの方はどうなってもな」
「例え大坂から離れるしかなくなっても」
「あの方だけはじゃ」
「大坂から離れられず」
「そしてじゃ」
「最悪、ですな」
「滅びられるやも知れぬ」
こう木村に話した。
「まことに最悪であるがな」
「左様でありますか」
「それは避けたいが」
大坂の将となったからにはとだ、後藤は木村に暗い顔で話した。
「ここで講和すればな」
「最悪そうなることもですな」
「有り得る、だからな」
「何とか講和にはならぬ様に」
「せねばな、そしてその為にはな」
「茶々様を説得し」
「うって出てじゃ」
「戦うのが一番ですな」
木村もこう応えた。
「やはり」
「何といってもな」
「さすれば」
「うむ、今のうちにじゃ」
「茶々様を説得しましょうぞ」
「何とか茶々様の御前に行ってな」
こう言ってだ、後藤達は茶々に何とか会おうとしたがだ。それは有楽とその子長頼だけでなく大蔵局までもが血相を変えて彼等に言った。
「茶々様は誰ともお会い出来ぬ」
「そう言われますが」
「会ってどうされるおつもりか」
大蔵局は諸将に険しい顔で問うた。
「一体」
「一体も何も」
毛利が大蔵局に返す、当然幸村や後藤達諸将もいる。
「我等は茶々様のことを思い」
「それでお会いしてか」
「はい、外にうって出てです」
そしてというのだ。
「一気に攻めんとしております」
「その様なことは勝手にされよ」
戦のことを知らない大蔵局は怒った顔で言い返した。
「貴殿等で」
「ですがそれも茶々様のお許しがなければ」
今度は塙が言ってきた。
「ですから」
「ならばまたの機会にされよ」
「またの」
「そうじゃ、今の茶々様はお疲れじゃ」
ただ茶々のことを思い言った言葉だ、もっと言えば茶々のこと以外は頭の中にない言葉である。
「だからじゃ」
「左様、大蔵局殿の言われる通りです」
ここでまたしたり顔で言う有楽だった。
「各々方申し訳ありませぬが」
「下がられよ」
また言ってきた大蔵局だった。
「また今度じゃ」
「今度といいますと」
大野は母に問うた、大蔵局には言えるのだ。
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