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おぢばにおかえり

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103部分:第十四話 騒がしい中学生その八


第十四話 騒がしい中学生その八

 私達は今そのお墓地へのお参りを済ませて坂道を下っているところでした。このお墓地は山から作ったものなんです。それで木々が周りにあります。お父さんとお母さんはその坂道を下りながらあの子の話をしています。
「あれだけ食べるのもいいけれど」
「元気がいいしね」
「そうかしら」
 私はお父さんとお母さんのその話にはどうも賛成できませんでした。疑問符をつけた顔で首を捻るしかありませんでした。
「私はそうは思わないけれど」
「千里もそのうちわかるわよ」
 お母さんはにこりと笑って私に言ってきます。
「男の子はあれでいいのよ」
「それはお店でも聞いたけれど」
「それがわかるのとわからないのとで成人が違うわよ」
 心の成人です。これもおみちの言葉で成長することをこう言うんです。
「いいわね、それは」
「何かわからないんだけれど」
 また首を傾げてしまいます。
「そうなのかしら」
「おいおいわかるさ」
 お父さんも言ってきました。
「少しずつな」
「特にね」
 またお母さんが私に言ってきます。
「うちのいんねんだと千里も」
「私も?」
「多分年下の御主人貰うだろうし」
「つまりお婿さんよね」
 教会は私が継ぐことになっていますんで。会長さんを迎えるわけですがそれは私の旦那様でもあるんです。できれば信仰心があって優しい人がいいです。そりゃ顔は格好いいに越したことはないですけれどやっぱり一生二人でいるんですから心が大事ですよね。
「だったら余計にしっかりした人が」
「しっかりするのは女の仕事よ」
 天理教ではそうした考え強いです。女はおみちの土台だからです。
「だから千里もしっかりね」
「凄い不公平みたいなんだけれど」
「そうかしら」
 何で自覚ないんでしょう。本気で理解不能です。
「男の子を照らしてあげないといけないのに。そんなこと言ったら駄目じゃない」
「駄目って言われても」
「そのかわり。女は明るく」
「明るく!?」
「そうよ、明るくね」
 また言われました。
「わかったわね、それは」
「明るくないと駄目なの」
「お日様は明るいでしょ」
 それはまあ言われるまでもなく。明るくないとやっぱり困るものです。けれどそれはもう言うまでもないことなんじゃないかな、って思いますけれど。
「だから。千里も明るくね」
「わかったわ。男の子を照らすのね」
「あの子なんかいいかも」
「そうだよな」
 何でこんなに絶好のタイミングでお父さんまで頷くんでしょう。幾ら二十年近く夫婦やってるにしろこのタイミングはありません。
「千里にお似合いだな」
「何で年下の子を」
「千里はお姉さんよ」
 お母さんがまた言います。何かお母さんはこうした話で私の味方をした記憶がありません。
「だから。もう一人弟をね」
「お母さんにとっては息子になるのよ」
 私の旦那様ですから結果としてそうなります。こんなことはそれこそ言うまでもないことだと思いますけれどどうしてお父さんもお母さんも平気な顔なんでしょうか。
「それでもそんないい加減な子でいいの?」
「それはさっき言ったじゃない」
 あっさり切り返されました。完敗です。
「男の子はある程度はそれでいいから」
「ある程度って」
 そのレベルがあんまりにも大きいような。
「あの子かなりみたいだけれど」
「そうかしら」
「普通だよな」
 この二人は。私の両親とはいえ。
「肝心なのはおみちに沿っているかどうか」
「心さえしっかりしていれば問題はないんだよ」
「そうなの」
 私は何事もちゃんとしないと駄目だと思いますけれど。駄目だったらそれこそ徹底的に教えてあげて。そうしてあげないとやっぱり駄目なんだと思います。
「そうよ。自然に沿ってくるから」
「長い目で見てな」
「長い目で見るのはわかるけれど」
 それはわかります。けれどそれでも。
「そんなにおおらかだと何か」
「おみちはおおらかなものよ」
 今度はこう言われました。
 
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