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ゴブリンの貿易

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第一章

                ゴブリンの貿易
 浮島が多く空にあるこの世界では実に多くの種族が混在して共生している。それはインドでも同じでありゴブリンのスルムティ=スワラージも同じでカルカッタにおいて貿易商をしている。彼は中々商売上手でカルカッタに来る他国の商人達に多くのものを売っていた。
 だがゴブリンの彼を見てだ、欧州からはるばる来た者達はよくびっくりして店にいる彼だけでなく彼の家族や店の使用人達まで見て言った。
「ゴブリンが商人!?」
「インドではそうなのか!?」
「いや、こんなのははじめて見たぞ」
「そもそも人間やニンフやバンパイア以外にも色々な種族がいるな」
「インドはそうした国なのか」
「いやいや、それはですよ」
 スワラージは驚く彼等に笑って話すのが常だった、商人らしく低姿勢で礼儀正しい態度であり店の中も清潔にしてある。
「こう言ったら何ですが欧州以外じゃ普通ですよ」
「ゴブリンが商人で店を持っていてもか」
「それでもか」
「そうですよ、もうインドだけじゃなくて」
 この国に留まらずというのだ。
「マラッカ海峡を超えた太平洋の方もアフリカも」
「そういえばアフリカもな」
「色々な種族がいるな」
「そういえばそうだな」
「欧州と違って」
「そうですよ、欧州は欧州ですが」
 人間やニンフ等言うならばヒューマンと呼ばれる種族に近い者達に近い姿の種族が殆どなのが欧州なのだ。
「こっちはこっちですよ」
「そうなのか」
「だからゴブリンが商人もしているのか」
「オグルやオークが船乗りでいたりするしな」
「トロールの料理人もいたし」
「色々な種族が色々な仕事をしている」
「そうした世界ってことか」
 このことを納得した欧州人達だった、彼等にとっては不思議なことだったが実は彼等以外の種族にとっては特に不思議でもなく普通に商いをしていた。それでスワラーディ自身も笑って店の者達に言っていた。
「わしは欧州に行ったら相当目立つな」
「ですね、わし等にしても」
「ゴブリンの商人ってことで」
「欧州じゃいないらしくて」
「それで、ですね」
「珍しがられるみたいですね」
「向こうじゃ人間とかニンフ以外の種族が殆どいないのか」
 ここでまた言ったスワラーディだった。
「わしにとってはその方が不思議だな」
「そうなりますよね」
「インドや他の地域じゃこれが普通ですから」
「種族によって多少の得手不得手ってありますけれど」
「本人の努力次第でどうにもなりますしね」
「あと外見は種族単位の好みってありますけれどね」
「わしは自分のかみさんが一番好きだ」
 スワラーディは自分の女性の好みも話した。
「ゴブリンのな」
「ゴブリンはゴブリンですね」
「ホブゴブリンやオークが好きって奴もいますけれど」
「まあ大抵ゴブリンですね」
「ゴブリンが好きなもんですね」
「それはあるな、しかし本当に欧州じゃゴブリンはどんな扱いなんだ」
 このことも気になるスワラーディだった。
「まさか盗賊やっていたり洞穴で暮らしていると思っているのか?」
「まさかと思いますが」
「そんなことはないですからね」
「ゴブリンだって普通に暮らしてますよ」
「わし等みたいに」
「そこが気になるな」
 どうにもと言うスワラーディだった。
「悪いことばかりする連中とか思われていると嫌だな」
「全くですね」
「大抵のゴブリンは真っ当に暮らしてますからね」
「それも平和に」
「そうしていますからね」
「最近減ってきたがまだわし等を見て驚く人間がいる」
 ゴブリンの商人達をだ。 
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