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エアツェルング・フォン・ザイン

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そのじゅう

寺子屋で働き始めてもう少しで一年が経つ。

けーね繋がりで妹紅や阿求や小鈴とも知り合ったりした。

「じゃーねーセンセー!」

「おー、明日ちゃんと来いよ」

「うん!」

と何時ものやり取りをして帰路に着いた。

そして翌朝…

「おはよう、ザイン。もう朝よ」

「なんだよ…ありすぅ…まだくらいじゃないか…」

んだよ…んな朝っぱらから…まだ4時くらいだろ…

「起きなさい」

「やだぁ…」

ギュッと玉藻を抱き締める。

「起きなさい!」

と耳元で叫ばれた。

「わかったよぉ…おきるってぇ…」

俺はのそのそとベッドから這い出る。

「なんだよ…」

「外、見てみなさい」

そう言われて窓から外を見る。

空が、一面深紅に染まっていた。

「は?」

「起きたらこの有り様よ」

えーと…空が赤く染まったってことは…

かりちゅま…

PAD長…

動かない大図書館…

居眠り門番…

キゅっとしてドカーン…

「これは異変ね、まぁ、博麗の巫女が直ぐに解決するでしょう」

「っしゃぁ!」

紅霧異変来たぁ!

「ちょっと、どうしたのよザイン?」

「ちょっと面白そうだから行ってくる!」

俺は寝ている玉藻を抱えて家を飛び出した。

「あ!ザイン!待ちなさい!」

というアリスの声は無視だ。

『原作ブレイク』を避ける為、俺はこの一年間、アリスの家と人里以外に行っていない。

人里で原作キャラを見かけたらできるだけ会わないよう道を変えたりしていた。

だが、原作が始まったなら話は別だ。

家から飛び出した俺は魔法の森を抜けるべく高速飛翔中だ。

上空から魔法の森を見ているがそこかしこで妖怪が活性化している。

どうやらこの霧は妖力で作られているようだ。

それも結構濃い。

「感受性の強い人間は体調を崩すかもな…」

頭によぎるのは俺の生徒達。

「興味本意だったが…これは早めに解決しないとマズイ事態かもしれん」

「うぅん…ご主人?」

あ、起きた。

「なんで飛んでるの?」

「異変だ、空を見ろ」

玉藻の質問に答え、空を見せる。

「わー!空が真っ赤だー!」

「しかも濃い妖力が混じってやがる。殆ど障気みたいな物だ…」

「障気?でもなんともないよ?」

「俺達にはな、だが人間、特に感受性の強い子供は体調を崩しかねん」

俺は今までよりも強く、翅を羽ばたかせた。












「ねぇ…貴方は食べてもいい人類?」

「うぉぁ!?」

横からいきなり聞こえた声に驚き、俺は声の方向と逆向きに瞬時に飛翔した。

そこには『くらやみ』があった。

「『深淵の恐怖(アビッサル・ホラー)』!?」

なぜお前がここに居る!?

何故!

神話級宇宙獣『深淵の恐怖』、数万の暗素からなる、人々の怨念の塊。

星王、星王妃、星騎士団を以てして倒せなかった存在…

目の前に居るのは恐らくそのカケラ。

この大きさならばアイツ等無しでも!

俺は無意識に能力を行使していた。

四肢が伸び、体が膨張する。

髪が紫から黒へ変わり、右手に忠誠剣が顕れる。

体が鎧に包まれる。

ALOの鎧ではない物。

黒と白と蒼のハーフプレートメイル。

そこに居るのは星騎士団団長だった。

「システム・コール!ジェネレート!ルミナス・エレメント!」

自らの周囲に数万の光素を産み出す。

深淵の恐怖を滅する為に編み出した術式を使う。

俺、キリト、アスナを除くとかの最高司祭アドミニストレーターしか使えなかったという神聖術の奥義である素因多重生成すら前置きとする術式。

産み出したその全てを『くらやみ』の周りに展開した…

そして…

「リリース・リコレクション!」

光の檻を造り出す。

深淵の恐怖は光に弱い。

「バースト!」

檻の形だった光素が一瞬にして爆ぜた。

太陽の如くまばゆい光が発生する。

カケラなら今のでかなりのダメージを受けた筈!

そう思って星騎士の忠誠剣を構えて突貫したのだが…

「きゅ~…」

光が収まり『くらやみ』があった場所から一人の女の子が落ちてきた。

「え?」

あれ?なんで深淵の恐怖から女の子が?

あれ?あの女の子何処かで見たような。

あれ?ここってアンダーワールドじゃなくね?

あれ?深淵の恐怖って宇宙にしか居なくね?

あれ?俺って…今どこにいる?

「やべぇ!」

ぽしゅん、と体が縮む。

即座に鎧を解き、俺は玉藻を放り出し大急ぎで落ちていく女の子を追った。

「間に合え!」

その願いは叶い、地表ギリギリで女の子を抱き抱えた。

「はぁ…はぁ…」

「ご主人、いきなり投げないでよ」

と追い付いた玉藻に文句を言われた。

「悪い…」

あぁ、そうじゃん、ここは幻想郷…

UWじゃぁないんだ…

深淵の恐怖なんて居ないんだ…

「この子には悪いことしたな…」

腕に抱える俺より大きな女の子。

黒と白のワンピース、頭に着けた赤いリボン、サラサラの金髪…

ルーミア…だな…

「う、うぅん……」

起きたかな?

「起きたかい?お嬢ちゃん?」

「あ…なたは?」

「俺はザイン、さっきは済まなかった」

「!?」

驚いたのか、彼女は俺に向かって手を向け、俺の回りに闇の刃を展開した。

ふむ…

「玉藻」

「はーい!」

玉藻が俺の合図で元の大きさに戻り、地面に伏せる。

「なんであんなことしたの?」

なんで…か…

「昔、闇の玉と戦った事があってな…それでお前さんがそれに似ていたもんだからつい反射でな…。
すまない、君に対して敵意は無いんだ」

「そう…あなた…その闇の玉に仲間を殺されたの?」

「え?」

どうして、わかったんだ?

「今のあなた、悲しそうな顔してたから」

どうやら俺はそんな顔をしていたらしい。

彼女は手を下ろし、闇の刃を霧散させた。

「いいのか?俺を攻撃しなくて?」

「別にいいわ…貴方妖精みたいだし、食べても美味しくなさそうだもの。
それに妖精を虐めてたなんて噂が立つのはごめんだわ」

理由がそれかよ…

「ねぇ…あなたの名前を教えて?」

「俺はザイン」

「ザイン…ね。私はルーミアよ」

「そうか、では俺はおいとまさせて貰うよ。玉藻を残して行く。玉藻、ルーミアを頼んだ」

「ご主人は?」

「何処へ行くのかしら?」

二人に聞かれた。

「このウザったい霧を出してるアホを懲らしめて来るのさ。
女の子を一人で置いとく訳にはいかんのでな」

「そう、頑張って」

「ああ。いつか必ず、君の言うことを一つだけきこう」

俺は玉藻とルーミアを置いて飛翔した。

玉藻を置いていった理由はルーミアの面倒を見させる為と危ないからだ。

「それにしてもルーミアって意外と大人びてたな…」

俺のイメージじゃぁ少しアホっぽいのを想像してたが…

「まぁ、とにかく紅魔館へ行こう…」

俺はこの霧を止めるべく翅を動かした。
 
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