夢幻水滸伝
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第四十五話 神戸の大工その十一
「ここでも有名な嫌われモンや」
「ここでも同じことしてか」
「徹底的に嫌われてる」
「性根は変わらんってことか」
「そういうことやな、それでな」
「死ぬまでここか」
「まあそのうち死ぬわ、魂までもな」
そこまで磨り潰されてというのだ。
「終わるわ」
「そうなる運命か」
「そや、そういう奴も世の中におってな」
「ここには星の奴もおるか」
「そうや」
鉱山の中の地下道、掘っていったその中を進みながら向かう。そうしてだった。
二人は暗い灯りに照らされたその道の中を進んでだ、そのうえでだった。今丁度つるはしを使って掘っているゴブリンと話した。軽装で動きやすい身なりで背中にはスコップもある。
「自分が地刑星、川端豊やな」
「そうですで」
ゴブリンは陽気な声と表情で二人に顔を向けて応えた。
「あっちの世界じゃ工業科の二年C組、農業科に彼女がいます」
「彼女の話はええわ」
「そうですか、ほなわい自身のことですか」
「そや、自分に誘いをかけに来たんや」
「関西の陣営に入れってですか」
「そうしてもらいに来たんやけどな」
「紫さんの話はここで銭稼ぐ為に堀りながら聞いてました」
そのゴブリン、川端は作業を中断して芥川達に向かい合ったうえで答えた。
「凄い人やって」
「そうやったんか」
「それやったらわいもって思ってましたけど」
「そう思いつつここで働いてか」
「ここ銭稼ぎに来たら随分貰えるんです、ええとこに住めて美味いもんも食わせてくれて」
その銭がというのだ。
「重罪人はこき使われても」
「それで働いてたか」
「そうでした、このつるはしとスコップと一緒に」
持っている両方に先があるつるはしと見事なスコップを見せての言葉だ。
「つるはしが金山彦神 スコップが石凝戸邊命です」
「それぞれ日本の鉱山とか石の神様やな」
「その神様達の力で鉱山、鉱業のことは何でも出来て何でもわかります」
知識まで授けてくれるというのだ。
「わいの相棒ですわ」
「そうなんやな」
「わい自身工業科でそういうの学んでますし」
「鉱山のことやったらやな」
「あと幾分工業の方も」
そちらの知識もあるというのだ。
「自信あります」
「その鉱業と工業の知識と力、うちに役立ててもらいたい」
「それわいがここでの仕事終わったら都に行ってお話するつもりでしたが」
それがというのだ。
「それならです」
「今からやな」
「頑張らさせてもらいます」
「よろしゅう頼むで」
「はい、そしてわいの神具の詳しい力ですが」
「鉱山、鉱業のことはやな」
「何でも教えてくれます、持ってたら」
それでというのだ。
「色々教えが伝わります、それに何処にどんな資源がどれだけあるかも」
「それもわかるんか」
「はい、石凝戸邊命は何処に何があるかを教えてくれて」
「つるはしがやな」
「金山彦神はどれだけあるかを、そしてどう掘ればいいかを」
「そっちはそれを教えてくれるんか」
「それでどっちもどんな硬いもんでも砕いて好きなだけ掘らせてくれます」
そうした力もあるというのだ。
「わいが望むだけ」
「それは凄いな、まさに鉱業の申し子やな」
「こっちの世界ではそうですわ」
「そやな、ほなその鉱業とな」
「工業でも」
「頑張ってもらうで」
芥川は川端に笑顔で応えた。
「よろしゅうな」
「それでは」
川端は芥川に笑顔で頷いた、こうして彼も関西の勢力に加わり芥川の人材勧誘も全て終わった。そうして彼は今都に戻ったのだ。
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