儚き想い、されど永遠の想い
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86部分:第八話 進むだけその三
第八話 進むだけその三
「須磨のことですが」
「そこに行かれるのですか?」
「そうされるのですか?」
「そう考えています」
実際にそうだとだ。義正のことを隠して二人に話すのである。
隠していても彼のことを考えながらだ。そのうえでまた話した。
「そこに行こうかと」
「いいと思います」
「私もです」
喜久子と麻実子は笑顔で真理に答えた。
「では。楽しんで行かれることを」
「そうして下さい」
「有り難うございます。それでなのですが」
ここでまた話す真理だった。
「須磨の砂浜ですが」
「いい場所ですよ」
笑顔で話す喜久子だった。
「あそこは」
「そうですか。白くて奇麗な砂浜と聞いていますが」
「そして海が青いです」
喜久子はこのことも話した。
「とても澄んでいて」
「海もですね」
「特に今の季節はです」
いいというのである。
「ですから是非共」
「そうします。楽しんできます」
真理はにこりと笑ってその喜久子に答えた。
「須磨を」
「そうですね。須磨は」
今度はだ。麻実子が話した。
「私も一度言ってみたいですね」
「麻実子さんもですね」
「はい、今の季節に」
行きたいとだ。こう話すのだ。
「そうしたいです」
「あの場所に源氏の君がいたのですね」
真理は今度は源氏物語の主人公を連想した。
そしてその主人公をだ。現実の世界に当てはめてまた言うのだった。
「あの場所を歩いていたのですね」
「そうなりますね」
「あの場所にですね」
二人もそうだと話す。
「源氏の君がいて時を待っていた」
「また都に戻る時を」
「そしてですね」
真理もだ。自然に微笑んで話すのだった。
「そこで新しい恋を見つけた」
「あの主人公はそれが仕事ですが」
「恋こそが」
「ですね。恋多き人です」
多過ぎると言ってもいい。とかく源氏の君は女性に彩られている。
「非常に」
「殿方としては魅力的ですが」
「ですが」
ここでだ。二人の言葉は少し曇った。
そしてだ。源氏の君についてこんなことを言うのだった。
「ああした。派手な女性遍歴は」
「少しどうかと思いますが」
「そうですね。確かに」
真理もだ。その通りだというのだった。
「それは少し」
「いえ、少しでは」
「少しではないかと」
二人も苦笑いで源氏の君について話す。
「女性遍歴があまりにもです」
「奔放に過ぎます」
「そうですね。あの方は」
「人格も立派な方ですが」
「それでもです」
「しかも御本人はです」
その源氏の君はどうかというのだ。そのことについてどう思っているかをだ。
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