ロボスの娘で行ってみよう!
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第11話 遠洋航海へ
第11話 遠洋航海へ
宇宙暦788年5月1日
■ハイネセン 軍事宇宙港
リーファ達784年度生が遠洋航海の為に、ハイネセン軌道上で待機している、
シトレ中将指揮下の第8艦隊に搭乗する為にシャトルにて飛び立った。
「おー絶景かな絶景かな」
「なんじゃそりゃ?」
「昔の人が良い景観だとこう言ったのさ」
「リーファは物知りだからね」
「そうだねー」
「それほどでもないよー」
そんな感じで話しながら行くと、軌道上の第8艦隊各艦へシャトルが着艦していく、
リーファ達の乗るシャトルは第8艦隊旗艦ヘクトルへと吸い込まれていった。
「おー流石でかいね。アキレウス級は大きいや」
「そうだねー」
「着いた着いた」
担当の教官が各艦に乗り込んだ全員に秩序を持って艦橋へ行くようにと連絡をしている。
「行きますか」
「はいな」
「あいよ」
各艦で同じような風景が繰り広げられていた。
艦橋に着くと、シトレ中将が出迎えてくれた。
そして、クラスヘッドが挨拶を行う。
「第784年度士官候補生、ジャック・クロンバイン以下50名。旗艦ヘクトルに着任しました」
シトレ中将が応対をする。
「御苦労、私が艦隊司令官シドニー・シトレ中将だ、貴官らの着任を歓迎する」
「はっ」
「此から1ヶ月間短い間だが確り勉強して貰いたい」
「はっ」
「では、カリキュラムに対応して順次作業を始めるように、解散」
各艦で候補生に渡されていたカリキュラムに従い、ある者は航法へある者は索敵にと各所に散っていく。
リーファは本来補給課であるが、今回はシトレ中将の参謀見習いとなっていた。
「校長あ、司令官、今回はポレヴィト星系までの航海です」
「ロボス候補生、未だ未だだな、堅くなっているぞ」
「はっ、申し訳ありません」
「まあ、確り勉強しなさい」
「はっ」
「各艦隊、準備でき次第順次発進せよ」
シトレ司令官の号令で艦隊がハイネセンを出立する。
航海参謀役の候補生が行き先を伝えていく。
「今回の航海は、ケリム、ジャムシード、ランテマリオ、ポレヴィトと向かいます。
ポレヴィトで戦闘演習後。逆のルートで帰還します」
「御苦労」
こうして、第784年度士官学校生の遠洋航海が始まった。
宇宙暦788年5月2日
■エル・ファシル 宇宙港
ヤン・ウェンリー中尉が乗った巡航艦ミランダがハイネセンから到着した。
お客さんとして暇だったヤンは、リーファから貰った歴史ディスクを見ながら暇つぶしをしていたのでそれほど苦には成らなかったし、ラップと久しぶりに会えるのが楽しみであった。
地方政府関係者が便乗していた為、シャトルが宇宙基地ではなく民間空港へ降りたのだけが面倒くさい事だと思うのである。シャトルから降りると、空港にはラップが迎に来ていた。
「ヤン、こっちだ」
「ラップ、久しぶりだな」
「卒業以来だな」
「ラップ、体の方は大丈夫なのかい?」
「ああ、こっちへ来てからは、小康状態って感じかな。まあ艦隊所属だと辛いから今は基地所属だよ」
「ラップは、艦隊で力量を発揮出来るタイプだと思うんだけどね」
「此ばっかりは仕方ないよ。リンチ少将からも、まずは体調を整えるようにと言われてるからな」
「リンチ少将か、グリーンヒル少将の後輩らしいね。少将からお土産を渡してくれと頼まれたよ」
「そうか、後で司令に挨拶に行こう」
「えっ、ラップが渡しておいてくれよ」
「ヤン。厄介ごとを逃げるのは悪い癖だぞ」
「やれやれ、ラップは友達がいがないな」
「全く、いい加減だな」
面倒くさそうなヤンと、苦笑いのラップであった。
「けど、調査の為に動くのには、司令部の協力は必要だから挨拶はしておかないと駄目だぞ」
「仕方ないな。判ったよ、じゃあ案内してくれよ」
「OK、早速行こう」
エレカータクシーに乗って2人は空港から、駐屯基地に向かうのであった。
50分間ほど色々な話をしながら過ごしていく。
「ヤンも災難だったな、リーファの論文のお手伝いとはな」
「いや、リーファの論文も色々有るそうなんだよね」
「へー、それはまたなんだい?」
「此は内緒だが、統合作戦本部と宇宙艦隊司令本部しか閲覧が許可されない論文を書いてしまったそうで、リーファは前線にでられないんだそうだ、それで私が代わりに送られて来た訳だよ」
「へー流石リーファだな、しかもヤンを使うのはたいしたモノだ」
「まあ、まんまと利用されたよ」
ヤンは苦笑いしている。
「で何を餌にされたんだい?」
「これさ」
ヤンが歴史ディスクを見せると、ラップは納得顔になる。
「流石だな、やる気がないヤンの操縦法を心得てるよな」
「それに乗る私も私だけどね」
「あははは、まあ久しぶりに会えたのだから良いかもな」
「まあね。そうそうジェシカとリーファからお土産だ」
ジェシカのお土産に喜ぶラップ。
「ヤン、サンキュー」
話している内に軍基地の入り口に着き、MPにより身分照会をうけて入場を認められた。
司令官室へと案内される2人。
「司令官閣下、ラップ中尉とヤン中尉をお連れしました」
「入りたまえ」
部屋に入ると、精悍な軍人と見える人物が迎えてくれた。
「司令官閣下、ジャン・ロベール・ラップ中尉、ヤン・ウェンリー中尉をお連れしました」
「ヤン中尉、良く来たね。小官はエル・ファシル警備隊司令官アーサー・リンチ少将だ」
「初めてお目にかかります、ヤン・ウェンリー中尉であります。この度はよろしくお願いします」
幾らヤンでも上官には取りあえず真面目に挨拶はする。
それを見てラップは苦笑いしたいが我慢していた。
「まあ2人とも座りたまえ」
「「はっ」」
コーヒーが出されてきてヤンは苦手そうである。
「ヤン中尉はラップ中尉と同期だそうだね」
「はい」
「ラップ中尉は良くやってくれているよ、最近持病のせいで地上勤務をして貰っているが残念な事だよ」
「閣下お役にたてずに申し訳ありません」
「いやいや、今は確り直してくれたまえ」
「はっ」
「リンチ閣下、ハイネセン出立時にグリーンヒル少将閣下から、預かり物をしてきました」
「グリーンヒル先輩からか」
「此であります」
ヤンは、グリーンヒルから預かった箱を渡す。
「ヤン中尉、ありがとう」
「いえ」
「ヤン中尉は、士官学校の仕事で此処へ来たそうだね。必要なことがあれば力になろう」
「ありがとうございます」
「ラップ中尉、今日はもう良いので旧交を温めて来るが良い」
「はっありがとうございます」
「ヤン中尉も御苦労」
「はっ」
リンチ少将の前から帰り、ヤンはラップに連れられて、エル・ファシル市内で取りあえず旧交を温める為のささやかな飲み会をするのであった。
その頃イゼルローン要塞では、久しぶりの人狩りを行うべく1000隻程度の艦隊が出撃しようとしていた事をヤン達は知らずにいたのである。
唯一、戦艦ヘクトル上のリーファのみが此から起こることを考えながら、あれこれとシミュレーションをしていたのである。
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