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儚き想い、されど永遠の想い

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65部分:第六話 幕開けその九


第六話 幕開けその九

「欧州は英吉利や仏蘭西だけではないのですね」
「そうだな。波蘭だな」
「そうした国もあるのだな」
 兄達もだ。そのことを知ったといった感じだった。
「私は独逸が好きだが」
「私は伊太利亜が」
 義愛と義智でだ。それぞれの好みが出ていた。
「他の国もな」
「これからは学んでいくべきか」
「そうですね。私もそう思います」
 演奏を聴きながらの言葉だった。
「音楽においても」
「音楽はいいものだ」
 義愛はだ。微笑んで話すのであった。
「心を豊かにし清らかにするだけでなく」
「そうしたことも教えてくれますね」
「音楽にも力を入れたいものだな」
 義智も言った。ここでだ。
「八条学園に芸術学部を設けるか」
「あの学園にですか」
「そうだ。そうしてはどうだろうか」
「そうですね」
 義正は次兄の提案を受けてだ。考える顔になって述べた。
「いいことだと思います」
「そうだな。これからは芸術も広めなければな」
「私もそう思うな」
 義愛も話した。その通りだとだ。
「元々八条学園は様々なことを学ぶ為の学園だからな」
「はい、だからこそ」
「芸術もまた」
 そうした話にもなった。その間にもだ。
 音楽は進んでいく。そのショパンの演奏がだ。
 だが一時休憩となった。それを受けてだ。
 義正はだ。席に座っている兄達に対してだ。こう言うのだった。
「少しです」
「ここを出るか」
「そうするのだな」
「はい、少し座り疲れてしまいました」
 それでだとだ。微笑んで話すのだった。
「ですから。少しロビーに」
「わかった。それではな」
「休むといい」
 兄達は弟に笑顔で告げてだ。彼が行くのを見届けた。そしてだ。
 真理もだ。喜久子と麻実子に対してこう言っていた。
「少しです」
「休憩されますか」
「ロビーで」
「はい、そうさせてもらいます」
 こうだ。笑顔で言うのだった。
「少し」
「そうですか。それでは」
「行ってらっしゃいませ」
「はい、それでは」
 こうしてだ。彼女もだった。
 ロビーに向かう。そしてそこでだった
 二人はだ。会ってしまった。御互いに目が合ってしまった。
 ロビーの中央でだ。二人は向かい合っていた。まずはだ。
 真理がだ。咄嗟にだ。そこから去ろうとした。しかしだ。
 義正はその彼女にだ。無意識のうちに言ってしまったのだ。
「あの」
「はい?」
「少し。宜しいでしょうか」
 こうだ。声をかけたのである。
「御話がしたいのですが」
「御話ですか」
「こうして御会いしたのも。何かの縁です」
 こうだ。彼女に言ったのである。
「ですから。宜しいでしょうか」
「ですが私は」
 真理は彼に顔を向けている。しかしそれでも言うのだった。
「私達は」
「ですがそれでもです」
「それでもだというのですか」
「はい、それでもです」
 強い声でだ。真理に告げる義正だった。
 
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