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真田十勇士

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巻ノ百二十八 真田丸の戦その四

「だからじゃ」
「迂闊に攻めればですな」
「そこでいらぬ兵を失う」
「そうなってしまうからですな」
「また何を企んでおるかわからぬ」
 上田城の記憶からの言葉だ。
「だからじゃ」
「はい、それではです」
「真田丸はです」
「攻めずにいきましょう」
「築山だけを攻めて」
「そこで止まりましょう」
「その様にな」
 このことを命じるのも忘れていなかった、だがそれは既に手遅れであり前田家や越前松平家の兵達は築山を押さえたがだ。 
 そこからだ、また扇動を受けたのだった。
「よし、築山を押さえたぞ!」
「次は真田丸じゃ!」
「この勢いのまま攻めよ!」
「そして一気にじゃ!」
「あの忌々しい出城を押し潰せ!」
「この大軍でそうせよ!」
 十勇士達が闇夜の中で騒いでだ、そうしてだった。 
 兵達はさらに攻めた、これには秀忠も報を受けて仰天した。
「何っ、兵達がさらにか!?」
「はい、真田丸に向かっております!」
「何処からかの命を受けて!」
「そしてです!」
「真田丸を攻めんとしております!」
「まさかこれも真田の謀か」
 秀忠は彼の本陣においてこのことを悟った。
「最初から煽ってそして」
「そうやも知れませぬ」
「兵達は遮二無二真田丸に向かっております」
「もう止まりませぬ」
「真田丸に向かっております」
「こうなってはどうしようもないのか」
 秀忠は歯噛みしつつ言った。
「兵達は」
「このままです」
「真田丸を攻めて」
「そのうえで」
「倒されるか」 
 最早兵達の勢いは止まらず築山から真田丸に向かっていた、そしてその真田丸に空が明ける頃にはだった。
 まさに攻めんとしていた、幸村はその彼等を見てだった、控えている赤備えの兵達に対して告げた。
「よいか、ではな」
「これよりですな」
「殿が命じられるまで、ですな」
「我等は」
「撃つでない」
 鉄砲、それをというのだ。
「よいな、しかし合図を言えばな」
「それと同時に」
「即座にですな」
「撃つ」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ」 
 こう言うのだった。
「よいな」
「承知しております」
「それではです」
「今は抑えて」
「そうしておきます」
「頼むぞ」
 こう言って今は兵達を抑えさせた、そして真田丸に戻り今は彼の後ろに控えている十勇士達にも言った。
「ではな」
「はい、我等もですな」
「殿のご命令があれば」
「その時はですな」
「一気に攻める」
「そうせよというのですな」
「その術を思う存分使うのじゃ」
 忍の術、それをというのだ。 
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