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儚き想い、されど永遠の想い

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468部分:第三十七話 桜を前にしてその二


第三十七話 桜を前にしてその二

「そうされますか?」
「はい、今日は無理でも」
「明日ならですね」
「明日退院してそうして」
「わかりました。では残りの時間は」
 桜までの時間。それまではだというのだ。
「お屋敷でお過ごし下さい」
「そうさせてもらいます」
 こうしてだ。話を決めてだった。
 義正は医師と別れの挨拶を交えてだ。そのうえでだ。
 真理が入院している病室に入る。そしてその白い部屋の中の白いベッドの中に横たわる彼女のところに来てだ。微笑んで告げたのである。
「明日です」
「明日退院ですね」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。微笑んで彼女に話すのである。
「明日。退院しましょう」
「わかりました。それでは」
 真理も微笑みだ。ベッドの中から義正に話した。
「お屋敷に」
「もうすぐですね」
 真理の枕元に座りだ。義正は彼女に話していく。
「桜が観られます」
「何とかここまで来られましたね」
「そうですね。冬を越えて」
「春まで来ることができました」
 それならばだというのだ。
「後は。本当に少しですね」
「もうすぐ桜が咲きます」
「はい、その桜が」
「本当にあと少しです」
 義正は微笑んでいた。とても優しい微笑みだった。
「頑張りましょう」
「そうしてそのうえで」
「三人でその桜を観ましょう」
 こう真理に話すのだった。その話を終えてだ。
 義正は今は自分の屋敷に戻る。そしてだ。
 屋敷に戻りだ。婆やと佐藤に話したのである。
「明日また行きます」
「病院にですね」
「御見舞いにですか?」
「いえ、迎えにです」
 見舞いではなくだ。そちらだというのだ。
「迎えに行きます」
「迎えに、ですか」
「そうされるのですか」
 義正にそう言われてだ。二人はまずは目を丸くさせた。
 そのうえでだ。それぞれこう問い返したのである。
「大丈夫なのでしょうか。奥様は」
「かなり酷い喀血だったとのことですが」
「大丈夫です」
 医師に言われたこともあり。こう答える義正だった。
「このお屋敷に戻りそうしてです」
「桜が咲くまで、ですか」
「過ごされるのですね」
「あともう少しです」
 二人にもだ。その時間を話すのだった。
「ですから。このお屋敷で三人で過ごします」
「奥様もそう望まれているのですね」
「その通りです」 
 そのことについて深くは話していない。だがそれでも今の彼にはわかることだった。
「今の私達の考えは同じですから」
「そうですね。だからですね」
 婆やも彼の今の言葉を聞いてだ。笑顔で頷くことができた。
「奥様はお屋敷に戻られて」
「この世での生の最後まで。このお屋敷で過ごします」 
 そうするというのである。
「ではお願いします」
「はい、それでは」
「私達もまた」
 二人もだ。義正の決意を知りだ。
 言葉を明るくさせてだ。こう応えたのである。
「旦那様と奥様の為に」
「最後の最後まで」
「有り難うございます。ではシェフに伝えて下さい」
 二人の心を聞きそのうえでだ。義正は。
 
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