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儚き想い、されど永遠の想い

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455部分:第三十五話 椿と水仙その六


第三十五話 椿と水仙その六

 今も真理の背中にいる。秋よりも深く服に包まれてだ。そして眠っている。
 その安らかな顔を見てだ。真理が言うのだった。
「先程のお話もこの子の心に届いていますね」
「そうなっていますね」
「椿については昔から不吉なものという指摘がありましたが」
「実は違って」
「これもまた新生なのだと気付きました」
 椿が落ちる、そのことがだというのだ。
 その椿を見つつだ。義正は話すのだった。
「色々なことを学んで」
「椿はただ落ちるだけではないと」
「そうです。花が一輪落ちて終わるものではないのです」
「むしろ落ちなければ」
「それで終わりです。しかし落ちることによってです」
「新たなことがはじまるのですね」
「そのことをこの子も知ってくれますね」
 やはり優しい目でだ。義正は我が子を温かい目で見て話した。
「そのうえで生きてくれます」
「そして私はそのことを知ってくれているこの子の中で」
「生きるのです」
「椿が教えてくれたことですね」
 まさにそうだった。それはだ。
 そのことを話してだった。二人でだ。
 椿をさらに暫く見た。それからだった。
 ここでも義正からだ。こう話したのである。
「では。冷えてきましたので」
「お茶をですね」
「何かお茶ばかり飲んでいますが」
 義正はこのことに気付いてふと苦笑いを浮かべた。そうなったのだ。
「お抹茶ですを」
「そういえばそうですね」
 真理も義正に言われてだ。そのことに気付いた。
 そしてだ。彼女も冬のその澄んだ空気の中で苦笑いになりだ。こう言ったのである。
「私達はあの頃から」
「お酒ではなくお茶を」
「お茶はとてもいいものですね」
 真理は茶にもだ。温かいものを見て話した。
「身体にいいだけでなく」
「心も落ち着かせてくれて」
「温めてもくれます」
 そうしたこともできるというのだ。お茶というものはだ。
 そのことを話してだった。義幸を連れてだ。
 老人に出してもらった茶を飲みだ。そのうえでだった。
 温もりを中に入れた。椿で温められた心に加えて。
 一月が過ぎた。だがまだ冬は続いている。その冬の深い中でだ。
 佐藤がだ。義正にこの花の話をした。その花はというと。
「そこがいいのか」
「はい、水仙も御覧になられるおつもりでしたね」
「最初からそのつもりだった」
 冬の中で見ようと思っていた。それは確かだというのだ。
「ではその水仙が奇麗な場所はか」
「その神社です」
「神社の中の池にあるのか」
「水仙は水の花ですから」
 だからだ。その神社の池に行けばいいとだ。佐藤は義正に話すのだった。
「そこに行かれればいいです」
「わかった。では行こう」
「そうして頂けると何よりです」
 佐藤が義正の返事にだ。笑顔で応えた。そうしてだった。
 彼にだ。こんなことも言うのだった。
「実は私もです」
「君もか」
「はい、私も先日妻と共に行きました」
 そうだったというのだ。今義正にそのことを話したのである。
「非常に素晴らしい場所でした」
「そうか。そこまでか」
「行かれるといいと思います」
 その判断は正解だったというのだ。義正にだ。
「二月の。冬の中にも花があるものだとわかりましたし」
「ずっと。冬はな」
「そうは思えませんでしたね
「冬にあるのは雪だけだと思っていた」
 義正も長い間気付かないことだった。このことは。
「しかし違ったな」
「そうですね。本当に」
「花もあった。そして」
「そしてですか」
「自然もだ」
 それもあったというのだ。何があったかというと。
 
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