儚き想い、されど永遠の想い
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44部分:第四話 はじまりその八
第四話 はじまりその八
そしてだ。二人で紅茶を飲む。そうしたのである。
この日はそれで終わった。しかしだ。
義正も真理もだ。御互いのことを考えるようになっていた。それが次第に止まらないようになっていた。そうしてであった。
義正はだ。こう供にいる佐藤に話すのだった。
「思えば」
「何でしょうか」
「縁というものはわからないな」
こう言うのだった。
「人の出会いは」
「人のですか」
「どうして出会ってしまうのかわからない」
実際にこう言うのだった。それも一度や二度だけではなくだ。
仕事の合間の休憩の時にも町を歩いている時にもだ。言ってしまう。言う時のその目はだ。何処かだ。遠くを見る目になっていた。
その目で話してだ。いつもこうも言うのだった。
「そして」
「そして?」
「実際にあるのだな。許されない関係というのは」
話す言葉はこれだった。
「想えない相手というのは」
「悲劇ですか?」
「ロミオとジュリエットか」
彼は自分から話した。それをだ。
「あれは。本当にあるのか」
「そうですね。大なり小なりですが」
それでもだと。佐藤は話す。
「あるのでしょうね」
「そうなんだね。実際に」
「シェークスピアは舞台です」
現実ではない。それでもだというのだ。
「ですが。それでもです」
「現実も書いているんだね」
「人間の書くものは。全てが夢ではありません」
「現実も含まれているんだね」
「人間が現実の存在ですから」
だからだというのだ。舞台であってもだ。
そこにあるものは全て夢ではない。そうだというのだ。
「ですから。現実もまたです」
「そこにあるんだね」
「そう思います。ただ」
「ただ?」
「ロミオとジュリエットは絶望して死を選びましたが」
それでもだというのだ。ここで話したのは佐藤であった。
「しかし現実はです」
「絶望してもだね」
「はい、諦めてはいけません」
これが彼の言うことだった。
「ましてや自ら死を選ぶのは」
「駄目だね」
「決してです。あってはなりません」
佐藤はいつもその言葉を強くさせる。そしてだった。
彼はだ。主にだ。念を押す様にして述べるのだった。
「若しも旦那様がロミオだとしても」
「そうだとしても」
「ロミオにならないで下さい」
こう言うのだった。
「絶対にです。ならないで下さい」
「それは絶対にだね」
「はい、絶対にです」
強い言葉でだ。いつも話す。
「何があってもいけません。それは」
「じゃあどうするかだね」
「恋は成就させるものです」
「絶対にだね」
「悲恋ではなく幸せな恋です」
彼もだった。話すのだった。
「人が目指すべきはです」
「それなのだね」
「幸せを求めずして何なのか」
こう話していく。
「そう思います」
「強いね」
「そうした強さはあっていいと思います」
佐藤はいつもだ。己のその信念を話すのだった。
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