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万華鏡の連鎖

作者:fw187
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銀河動乱
  同盟軍の進撃

「殿下、生命をお救いいただき、ありがとうございます!!」
「君が盾となり、私を護った事実は忘れぬ。
 感謝する、ヴァーリン」
 勇敢な地球人《テラナー》の掌を握り、頭を垂れる。
 オプフェトミン10cc注射後、内通者の唇は滑らかに動く。
 帝国最高顧問オース・ポドマー筆頭の裏切者、詭弁家が暴露された。

 艦隊副司令官(セカンド・マスター)、ロン・ギロン乗艦に緊急事態用帯域で連絡。
 一部始終の動画、音響を見せ善後策を練る。
 中央銀河帝国秘密情報部2課所属、宇宙偵察機008乗員も動員。
 部外秘の通信手段を駆使、ダル・カールル推薦の腕利き達に話を通す。
 潜宙艦マーカブ艦長サーン・エルドレット他、反逆者は殆ど帝都で捕えた。
 自白剤を駆使、反逆者が事実を語る模様も撮影。
 特S級非常事態と報じ皇帝代理ジャル・アーン、直属の幕僚達に確認を望む。
 ヤマト艦橋に冤罪と認め謝罪、ザース・アーン援護者を賞賛の映像が届く。

 フォマロート王国、ポラリス王国、ヘラクレス男爵領にも通報。
 ザース・アーン帰還、名誉回復を告げ艦隊決戦に備える。
 各国公使達は最強兵器ディスラプター実験、心理効果で戦争回避を要望。
 私も補佐、試射の準備を命じられた。

 自動走路に乗り皇帝代理と邂逅後、大帝襲撃の裏切者が散弾銃を連射。
 咄嗟に私の脚を掃い、横に跳躍した漢の腕を弾が掠める。
 倒れ際に腰の麻痺銃《パラライザー》を抜き、侵入者を射った。
 散弾に塗った毒と闘い、最悪の事態も覚悟の勇者は実験完遂を厳命。
 皇帝代理に第二皇太子指名後、昏睡状態に陥り意識回復の時は見通せない。

 宮廷直属の医師団達にも緘口令を敷いたが、情報は洩れた。
 多数の潜宙艦《ファントム》が現れ、帝国領で無差別襲撃を開始。
 各恒星王国群の領域《テリトリー》は避け、中立維持を勧める。

 已むを得ず銀河王宮最奥、時間地下庫に直行。
 見覚えの有る男が現れ、ニヤリと笑う。
「我が子孫よ、奢ってはならぬ!
 帝国最強の武器は使い方を誤れば、星界の壊滅も懸念される禁断の《パワー》!!
 銀河文明の存続が脅かされし刻のみ、我が創造せし究極兵器を用え!
 マゼラン星雲の精神寄生体、デルゴン貴族の如き侵略者《インベーダー》を撃滅せよ!!」
 伝説の発明王ブレン・バー、中央銀河帝国中興の祖が獅子吼。
 ディスラプター発明者の顔、3次元立体映像は真田志郎に酷似していた。

 暗黒星雲同盟軍は通常の艦隊決戦を選ばず、広く薄く艦艇を展開。
 非武装の輸送船も襲撃、主要航路で神出鬼没の機動戦を挑む。
 敵艦は闇《ダーク》航行、瞬間的な解除《リセット》を繰り返し護衛艦を翻弄。
 宇宙偵察機008同様、防御力削減を代償に優れた隠密性能を備えていた。
 非武装の輸送船を護る為、帝国側の艦艇は無照準で邀撃出来ず被弾損傷。
 戦闘艦が航行中、突如として自爆の目撃例も後を絶たぬ。

 ショ-ル・カン配下の艦長達は意表を突き、狼群戦法を厳守。
 不利な重火力戦は避け、隊列を組まず、一撃離脱戦法《ヒット・アンド・アウェイ》に徹する。
 宇宙の狼《スペース・ウルフ》、ドメル将軍に劣らぬ勇者達は絶対的な戦力差を無視。
 幽霊艦隊《ファントム・フリート》と化し、謎の新兵器で重防御の戦艦も次々に撃破された。
 防御不能の新兵器で帝国艦隊壊滅、戦闘不能の欺瞞情報も乱れ飛び恒星王国群は動揺。
 通常の艦隊戦と異なる展開に幕僚達は狼狽、秘密兵器を使う他に道は無い。

 ディスラプター装着、ヤマト発進の直後に艦橋上部の通信スクリーン全域が急変。
 画面上に異様な模様《パターン》が瞬き、眩暈を誘う。
 伝説の催眠暗示能力者《ヒュプノ》、オーヴァヘッド創造の精神物理学的共鳴作用を励起。
 ヤマト艦橋の要員は催眠暗示攻撃の虜と化し、非人間的な赤い光を瞳に帯びる。
 妖波動が意識を暗転させ、心身喪失状態に陥れ盲目的な破壊衝動を解放。
 各種エネルギー制御機構を無茶苦茶に操作、自爆に導く罠だ。


 星暦20数万年の星間国家、諜報機関群も精神制御対策は怠っておらぬ。
 思考波スクリーン発生装置の艦内携帯は通常、破壊工作員を発見の為に厳禁であるが。
 ダライアス星系の苦い経験に基き、皇太子の特権を駆使して精神遮蔽装置を常時展開。
 ヤマト自爆の事態を阻む為、麻痺銃《パラライザー》で艦橋を薙ぎ払う事が出来た。
 全員に活を入れ意識を回復の後、状況を説明。
 第1艦橋に機械要員《ロボット》を配置、麻痺銃を照射の自動命令を組み込む。

 自動計測装置を検査の後、新兵器の概要が判明。
 催眠暗示攻撃の直前、レーザー通信波が計測されていた。
 敵艦は闇《ダーク》航行の儘、至近距離から無照準で短距離限定の通信光線を照射。
 超空間通信波《ハイパー・ウェーブ》と異なり、極度に集束の通信波は他の艦に届かぬ。
 妖波動を見た艦橋要員が錯乱状態に陥り、自爆の為に観測データ伝達も阻まれ通信波攻撃を隠匿。
 秘密兵器の短所が暴露される事無く、帝国艦隊の恐慌を煽り続ける事が可能であった。

 艦隊司令部に情報を廻し、レーザー通信波の計測装置に射撃指揮システム直結を指示。
 帝国最大の要塞、死の星《デス・スター》周辺宙域に戦闘艦を集結させる。
 各地で敵味方の全力疾走が開始され、一点に集中。
 レーザー通信波、妖波動の表示、麻痺銃の照射、送信源を射撃、敵艦撃破、の報告が相次いだ。
 ヤマト艦首を要塞の敵側、敵艦が比較的多数と期待する宙域に固定。
 ディスラプター主解放スイッチ、運命の引き金《トリガー》が動く。

 円錐形の結晶体《クリスタル》12基が煌き、タキオン粒子と異なる碧い波動を投射。
 一点に集束の後、共鳴現象を励起する。
 闇色の渦動エネルギー、4次元時空連続体転換力場が急激に膨張。
 宇宙空間そのものを破壊、消滅させる異様な黒太陽《ブラック・ホール》と化す。
 空間破砕爆弾《スペース・スマッシャー》の暴走、無限の連鎖反応。
 重力崩壊に類似の雪崩れ現象、万物を呑み込む虚無の領域が蠢いた。


 波動砲の増幅と極大化、同調相乗効果《オーバー・ドライブ》と踏んでいたが。
 甘かった、の一言に尽きる。
 次元共鳴波の増幅、干渉で多元宇宙《パラレル・ワールド》の存在確率が限界値を突破。
 下手をすれば銀河系崩壊に留まらず、宇宙が滅ぶ。
 無限に拡がる異次元空間、虚無の海に繋がる闇黒の回廊を遮断。
 可及的速やかに引き金《トリガー》から指を離したが、充分に手遅れであった。

 四次元時空連続体の破壊された副作用、想定外の地滑り現象が戦場を席捲。
 宇宙空間を疾走する濁流、驚異の暴風《サイクロン》が吹き荒れる。
 闇黒物質《ダーク・マター》の破砕流、嵐《ハリケーン》は艦隊を直撃。
 敵味方関係無く、一切の容赦を見せぬ超自然現象に蹂躙された。
 宇宙嵐に巻き込まれた敵艦が衝突、無数の破片と化して虚空を漂流。
 帝国最大の要塞、死の星《デス・スター》も急発進を強いられる。

 死の星《デス・スター》は前代未聞の副作用、想定外の急加速を体験。
 彗星帝国の都市要塞と同様、虚空を疾走する事となった。
 味方の戦闘艦も濁流に薙ぎ払われ、制御不能の状態で要塞と激突。
 凄絶な衝撃に耐えきれず、宇宙の塵と化す。
 ヤマト周囲の護衛艦が数隻、激流の渦に巻き込まれて爆発。
 次元断層消滅の際、数百光年の範囲で文字通り《星が揺れた》。

 宇宙嵐の余波で恒星が震え、惑星を激震が襲い、衛星の軌道が乱れる。
 戦闘宙域に近い青色巨星、真紅の太陽は濁流に押し流され公転軌道も変化。
 太陽系《ソラー・システム》崩壊、惑星衝突の事態に陥った。
 戦場からの距離と反比例で甚大な被害を蒙り、人類居住惑星は緊急避難を実施。
 数多の客船に避難民を収容、生活費を帝国政府が負担している。

 4次元時空連続体転換力場に呑まれ、消滅した敵艦の数は確認不能。
 帝国領内の星間補給線《スター・レーン》、主要航路から敵艦が消えた。
 副作用の濁流に巻き込まれ、闇《ダーク》航行装置が故障の潜宙艦《ファントム》は総て降伏。
 常識を無視した秘密兵器で乗組員が恐慌状態《パニック》に陥り、艦長も抵抗を諦めている。
 ヤマト以下の帝国艦隊は態勢を整え、暗黒星雲に接近。
 ディスラプター破壊を試みる命知らず、無鉄砲な勇者は皆無であった。

 他の星域に影響が及ばぬ様、暗黒星雲外縁部から徐々に消し去る計画と通告。
 帝国艦隊の旗艦に《銀河系を壊した戦艦》、の汚名を着せる訳には行かぬ。
 ディスラプター副作用、星雲内部の雪崩れ現象も警告。
 様々な損害賠償の請求受諾、和平交渉の開始を超空間通信《ハイパー・ウェーブ》で勧める。
 制限時間が尽きる直前クーデター勃発、盟主死亡、要求受諾の通報を受信。
 ナスカ提督に酷似の巡航艦艦長、ダル・カールル指揮の数隻が確認に赴く。


 暗黒星雲同盟の首都ティラン着陸後、先遣隊は通報が真実と報告。
 ロン・ギロン司令長官に武装解除を任せ、極秘資料を直接回収の為と称し地球に向かう。
 ヤマト離艦の直前、戦友達に感謝の辞を述べる事に決めた。
「諸君は裏切り者の汚名、濡れ衣を着た私を助けてくれた。
 恩義に応え、真実を話そう。
 ザース・アーン本人は銀河系統一の為、過去界の地球を調査している。
 私は地球人《テラナー》ジョン・ゴードン、第2皇太子の身体に宿る別人格だ。

 研究所の機械を使えば時を超え、星体《アストアル・ボディ》を送る事が出来る。
 私と第二皇太子が精神交換の最中、潜宙艦《ファントム》が現れたのだよ。
 諸君の援護に拠り、銀河大戦《ギャラクシアン・ウォーズ》は帝国の勝利で幕を閉じた。
 別人の精神が宿った儘で制限時間を超えた場合、人格崩壊に至る。

 諸君の援護で暗黒星雲同盟の脅威は潰え、大帝と第一皇太子も数日後に回復する。
 私は第二皇太子との約束を守り、自分の役を立派に演じ終えたと思う。
 本来の身体、過去界に帰る刻が来たのだ。
 今は拍手で、私の退場を祝ってくれ給え」 
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