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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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せいちょうき

「ベート…さん…は…悪く…ない…ですよ…」

この人は、とても不器用な人なんだな…

だけど、それでも、とっても、優しい人だ。

「お前…目がさめたのか?」

「っ…はい…」

口の中がカラカラだ…どれくらい寝てたんだろう?

体を起こすと、少し重かった。

「ベートさんは…悪くないです。
僕が、弱いから…」

唐突に、ベートさんに抱き付かれた。

「ベート…さん?」

「お前は…まだ、英雄になりたいか?」

「ふぇ?」

「ダンジョンで、怖い経験して、死にそうになって、それでも、英雄になりたいか?」

そう…か…僕は…アイズさんに助けられて…

「なりたいです」

僕は、あの時、アイズさんに助けられた。

「誰かを、守れるくらい。強くなりたい」

「そうか…悪かったな…」

そう言って、ベートさんは抱擁を解き、部屋から出ていった。

見れば、フィンさんとロキが、目を丸くしていた。

「どうされましたフィンさん、ロキ?」

「べ…」

べ?

「ベートがデレたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

とロキが叫ぶと、バタン!とドアが開いて顔を真っ赤にしたベートさんが戻ってきた。

「うるせぇぞクソ神!」

あぁ、成る程。

「ツンデレ…」

「喧しいぞクソ兎ぃぃぃぃぃぃぃ!」











「じゃぁ、話を聞かせてもらおうか」

ベートさんが出ていって、再び三人になった。

「話…ですか?」

「ああ、君には、マインドを消費して武器を創る<ヴァナディース>ともう一つ…
<トレイター・オブ・ワールド>…世界に抗う者というスキルがある」

「そうなんですか?」

ロキに見せて貰った紙には書いてなかったような…

「そのスキルに『前世の記憶』という一節があった…
君は何者だい?」

『オレ』の…記憶…

「僕には、スキルの通り、前世の記憶だけがあります」

「『だけ』?」

「はい。僕…いえ。僕の前世の男は死んだんです。
その時に、その世界の管理者が、彼を転生させました」

「つまり、ベルはその男の精神を持っとるんかいな?」

「いえ、僕の中には、彼の記憶だけが、知識としてあるだけです。
彼のクオリアは、消失しました。
彼が、そう望んだんです」

「ほーん…」

「僕の中の、彼の記憶が目覚めたのはつい最近…僕がミノタウロスに殺されかけた時です」

あの時、唐突にフラッシュバックした記憶。

そして、目覚める間際に見た、オレとカミサマの会話。

「そうか…うん。よく、わかったよ。
次にティル…」

「フィン!」

フィンさんのいいかけた言葉を、ロキが遮った。

「ベル。ステータスの更新しよか」

「ステータスですか?」

「おう。15階層まで潜ったんやろ?
せやったら相応のエクセリア持っとる筈や」

「わかりました」

何やら強引に話を逸らしたようにも思えるが、僕もステータスは気になるので従う事にした。

上着を脱ぎ、ベッドにうつ伏せになる。

「ほな。やろか」

腰のあたりにロキが乗る。

身長の割にはロキは軽……

あっ…そういうことか…

「ベル?なんか失礼な事考えてへんか?」

「ロキは身長の割に軽いなぁと」

「おお!そうけぇそうけぇ」

チラリとフィンさんを見ると、顔を背けて、肩を震わせていた。

どうやらフィンさんは察したらしい。

「じゃぁ、いくで」

ロキの指が、僕の背中に触れる。

「……………なるほど」

ロキはポツリと呟いて、それ以降無言だった。

沈黙が重い。

何故だろうか?

デバフの表示でも出たのかな…?

あれ?背中のステータスってバフとかデバフとかもでるのかな…?

それともステータスの伸びが悪いとか…?

「終わったで」

ロキが退いて、体を起こし、上着を着る。

「ステータス写すから、ちょい待ってぇな」

ロキが持ってきた紙にサラサラと書き記す。

ステータスはSTR、AGI、DEX、VIT、MINなどの数値が書かれている。

五分程して、ロキからステータスシートを渡された。

「スキルはわかっとるやろうから省いとるで」

「はい」

受け取った紙には…

力  0→66
敏捷 0→56
耐久 0→37
器用 0→62
魔力 0→89

「合計300超え…?」

「どうしましたフィンさん?」

「あ、あぁ、いや、なんでもないんだ」

「ベルは成長期やからな。
伸び率もええやろ」

「これって早い方なんですか?」

「うん。普通ならここまでは上がらんよ。
まぁ、今の内に伸ばせるだけのばすとええよ」

成る程…ステータスって『成長期でも』300くらいしか伸びないのか…

「ベル腹減っとるやろ?
食堂でなんか食うてこい」

「う、うん」

ロキに言われ、ベッドから降りる。

「後で行く。ベル、先に行っておいてくれ」

「わかりましたフィンさん」

するとフィンさんは苦笑した。

「団長」

「?」

「フィンさんなんて他人行儀な言い方はよしてくれ」

あぁ、なるほど…

「わかりました団長!」

「うん。行ってよし」

「はい」

ドアを開けると、ベートさんが居た。

「ずっと居たんですか?」

「うっせ」

ベートさんが、その手で、撫でてくれた。

「うみゅ?」

「よくやったよ。お前は。
ダンジョン十五階層…中層まで一人で行けるなんてよ」

「いえ…ただ夢中で…」

「いいんだよ。まぁ、後でリヴェリアには怒られるだろうがな」

うげ…忘れてた…

side out










「それで?ベルのステータスの事かい?」

「ああ、その通りや」

ベルが出て行った一室。

「さっきのベルのステータス、2掛けしとんのや」

「2掛け?なぜそんなことをした?
実力を見誤れば…!」

席を立ちロキに詰め寄るフィン。

しかし、ロキは動じない。

「アホ。2掛け言うたら、『0.2倍』やろが」

「0.2…?なら…だとしたら…!?」

合計…1500オーバー…

「まぁ、低めに言うとけば無茶もせぇへんやろ」

「ま、まぁ、一理あるが…」

彼はドカッと腰を下ろし、納得したような声を上げた。

「ベルの奴、どんな無茶苦茶したんやろな。
スキルの中身考えるに…相当死にかけとるはずやで。
いや、もしかしたら…」

≪夜と闇と死の眷属-ティルナファ・ファミリア≫
・死に近付くほど成長する。
・他者の命と引き替えに甦る。


「『他者の命』…他者、つまり倒したモンスターの命と引き換えに甦ったと?」

「そこら辺は…ベルに聞く他あらへん」

「聞くのか?」

「遠回しにな。モンスター討伐数の自己申告とステータスの上がり具合から予想するしかない」

「ベートかレフィーヤ辺りに聞いて貰おう」

「あー…リヴェリアやったらお説教やな…」


side out










もふもふもふもふもふもふもふもふ…

「なぁ、ベル」

もふもふもふもふもふもふ…

「なんですかもふ…ベートさん」

もふもふもふもふもふもふ…

「おい今俺の事なんて言った?
あぁ…いや、まぁ、いいや…楽しいのか?」

もふもふもふもふもふもふ…

「はい!スッゴク!」

もふもふもふもふもふもふもふもふ…

「そうか…」

新人がベートの尻尾をもふっているのを見て、中堅団員が卒倒しそうになったのは、また別の話。
 
 

 
後書き
TSベートをデレさせた理由?もふもふのためですが?
あと書いててもふもふがゲシュタルト崩壊しました。 
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