レーヴァティン
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第四十四話 琵琶湖その四
上には味付けして煮た鯖がある、英雄はそのにゅう麺を食べつつ言った。
「琵琶湖で獲れた鯖か」
「この世界ではそうでござるな」
智もそのにゅう麺を食べている、そのうえで英雄に答えた。五人が同じ席でにゅう麺を食べてそうしている。
「鯖は海ではなく」
「川で獲れるか」
「そうした鯖でござるな」
「淡水生の鯖か」
それだとだ、英雄は言った。
「味はそのままだが」
「不思議な感じがするでござるな」
「鯖は海にいる」
英雄は彼等の世界での定まっていることを言った。
「そう思っていたが」
「この世界では湖にいるでござる」
「琵琶湖にな」
「面白いことでござる、しかし鯖素麺は」
これはだった。
「同じでござるな」
「そうだな、このにゅう麺にしてもな」
「美味しいでござる」
「味も同じでな」
「鯖街道ではないですが」
良太はこちらの世界の話もした、若狭から近江を通り都に鯖を届けていたのでこの名前が付いたのである。
「しかし鯖があるのは面白いですね」
「全くであります、この鯖と麺の組み合わせが」
峰夫は五人の中で最も勢いよく鯖を食べつつ言った。
「最高でありますし」
「川の鯖というものが」
「面白いであります」
「世界が違いますと生きものも違う」
こうも言った良太だった。
「そういうことですね」
「魔物もいるでありますが」
「川に鯖がいることもある」
「そうでありますな」
「だからこうして鯖も食えている」
英雄は鯖とにゅう麺を交互に食べつつ言った、食べつつそのうえで鯖の中にある骨はしっかりと取っている。
「この世界でもな」
「そうですね、それも美味しく」
「この様にな、そしてこれを食ってな」
「温泉に入り」
謙二が応えた。
「身体を清めますね」
「そうしてからだ」
「遊郭ですか」
「見てみるか」
「入られないのですか?」
「気が向いたら入る」
英雄は入ること自体は否定しなかった。
「そうして楽しむ」
「そうされますか」
「いい女がいればな」
「ここは美女揃いと聞いていますが」
「なら入るだろう、そして入ればな」
「楽しまれますか」
「何ならだ」
こうも言った英雄だった。
「一度に二人も三人もな」
「同時にですね」
「楽しんでもみるか」
「それはまた」
「そうした遊びもあると聞いている」
複数の異性と床を共にするそれがだ。
「ならだ」
「この時を機会として」
「楽しんでみるか」
こう言うのだった。
「好きなだけな」
「銭もあるからでござるな」
智は遊郭に入るにも必要なそれの話をしてきた。
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