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儚き想い、されど永遠の想い

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421部分:第三十二話 紅葉その十一


第三十二話 紅葉その十一

「しかし生まれる時にですか」
「忘れてしまうものの様です」
「面白いといいますか」
「不思議に思えますね」
「どうしてもです。ですが」
「ですが?」
「温かさも感じます」
 その話にだ。それも感じるというのだ。
 その話をしてだった。二人はだ。義正が誘ってだった。
「それではです」
「はい、今からですね」
「蘭を見に行きましょう」
 そのだ。蘭だった。ここに来たその目的にだ。
「そうしましょう」
「はい、蘭をですね」
「見ましょう。植物園というものは」
「様々な植物やお花を見られる場所ですか」
「その為にできたものです」
 それがだ。植物園だというのだ。
「ですからここではです」
「蘭をですか」
「それを見に行きましょう」
 目的のその花をだと話してだった。三人でだった。
 その生まれる前にいた世界の様な場所を後にしてだ。その場に入ったのだった。そこは緑の葉と茎がありそしてだった。
 赤や黄色の鮮やかなまでの蘭達が咲き誇っていた。その場所は先程の熱帯の場所よりは暖かさは弱まっていた。しかしそれでもだった。
 その赤や黄色を見てだ。真理は微笑んで述べたのだった。
「暖かいですね」
「お花がですね」
「はい、暖かいです」
 その花、蘭から感じるというのだ。
 その鮮やかな赤や黄色を見てだ。義正に話した。
「赤や黄色を見ているとそれを感じますね」
「そうですね。こうした色からは」
「はい、感じます」
 真理はここでも笑顔で述べる。微笑みでだ。
「青や白は涼しさを感じ」
「そして赤や黄色からは」
「暖かさを感じます」
「前の場所と比べてどうでしょうか」
「何故か変わらない気がします」
 その暖かさがだというのだ。
「ですが実際はなのですね」
「そうです。先程の場所よりは気温は低いです」
 そうだというのだ。低いというのだ。
「ですが色で、です」
「暖かく感じられるのですね」
「その通りです。そして蘭達はです」
「この花達は」
「人に鮮やかさも感じさせてくれます」
 そうしたこともだ。感じさせるというのである。
「それがこの花達なのです」
「暖かさ、そして鮮やかさ」
「どうでしょうか」
「有り難うございます」
 ここでもだ。礼を述べた真理だった。
 そのうえで義正を見てだ。そして言うのだった。
「いつも違うお花ですが」
「そのそれぞれがですか」
「はい、それぞれに意味があってなのですね」
「季節そのものにです」
「意味があるのですね」
「この世に意味がないものはないと思います」
 義正はこうも話した。
「そして花達にはです」
「この蘭にしてもですね」
「それぞれ言葉がありますし」
「花言葉ですね」
「私は花言葉については考えていません」
 それはあえて考えずにだ。真理を案内してきているのだ。
 それでだった。また言う彼だった。
「花そのものが見せて教えてくれるものをです」
「それを私にですか」
「見て感じ取ってもらいたくて」
「春からこうしてですか」
「そうです。この蘭もです」
 ひいてはこの花もなのだった。蘭もだ。
「奇麗なだけではないのですから」
「そうですね。様々な意味がありますね」
「はい。そして」
「そしてですね」
「心に残ります」
 そのだ。花が見せて教えてくれたものがだというのだ。
「そして離れません」
「そうなることが最もです」
「嬉しいのですね」
「永遠に覚えておいて欲しいのです」
 義正はふとだ。遠い目になった。
 
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