儚き想い、されど永遠の想い
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401部分:第三十一話 夏の黄金その五
第三十一話 夏の黄金その五
向日葵を見終わるとだ。八月も終わりに近付いてきていた。その中でだ。
真理はだ。屋敷の中でこう義正に話した。
「夏の間は穏やかでしたね」
「御身体のことですね」
「このまま。春まで過ごせたらいいのですが」
「大丈夫です」
その真理にだ。義正は優しい笑顔で答えた。
「夏。暑さが怖いこの季節を無事に越えられたのです」
「だからですね」
「春まで。必ず過ごせます」
「そして桜を」
「見られます」
最後に見ると誓っているその花もだというのだ。
「その時まで」
「春。待ち遠しいですね」
夏の終わりにもうだ。真理は春を見て焦がれていた。
「本当に」
「私もです。ですが」
「それでもですね」
「春までまだ時があります」
それならばだとだ。真理に話す義正だった。
「秋もあります」
「秋ですか」
「はい、秋です」
夏の後の秋、その季節についてもだ。義正は話すのだった。
「秋には多くの実りがあります」
「実りが」
「そして花達も」
ひいてはだ。それもだった。春や夏と同じくだった。
「ありますので」
「実りに花達を楽しんで」
「はい、そうして」
「過ごしていきましょう」
そのだ。秋をだというのだ。
「そうされますか」
「秋。そうですね」
秋にだ。真理は希望を見て応えた。
「その秋もまた」
「楽しめるものですから」
「春を焦がれてもそれでもですね」
「秋もまたあります」
「そして冬も」
辛いと思いがちな。その季節についてもだった。
「三人で。心地よく」
「過ごしましょう」
「では。まずは」
「まずは?」
「夏の終わりに」
そのだ。今終わろうとしているその季節についてだ。真理は話したのである。
「これを」
「それは」
「はい、無花果です」
それを出しての言葉だった。真理が出したのである。
白い皿の上に幾つか置かれていた。よく熟れた赤い無花果である。その無花果達を見てだ。義正は目を細めさせて言うのだった。
「実は私は無花果は」
「お好きですか?」
「はい、そうだったのです」
「そうですか。それではですね」
「一緒に召し上がって宜しいですね」
「是非」
そうして欲しいとだ。真理も微笑みと共に話す。
「無花果もまた身体にいいそうですし」
「ええ。身体を癒すものでもあります」
「それならです」
「頂きましょう」
無花果をだというのだ。
「そうさせてもらいましょう」
「はい、それでは」
義正も応えた。こうしてだ。
二人でその無花果を食べてだった。
夏の終わりを迎えそのうえでだ。秋も迎えた。その秋にだ。
真理はだ。最初に義正にこう言ったのだった。
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