儚き想い、されど永遠の想い
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40部分:第四話 はじまりその四
第四話 はじまりその四
「歌舞伎が面白いことになっているとか」
「面白いですか」
「はい、役者で素晴らしい人が出られたとか」
それでだというのである。
「それでそうなっているようです」
「東京の歌舞伎ですか」
「御覧になられたことはありませんか?」
「歌舞伎は。上方のしか」
観たことがないというのである。
「ですから」
「そうですか。上方ですか」
「江戸歌舞伎ですね」
上方に対してだ。それだというのだ。
「江戸のものはまだ観たことがありません」
「では一度御覧になられたいと思われたことは」
「助六でしょうか」
十八番の一つだ。それが話に出た。
「あれはいいそうですね」
「らしいですね」
「助六と揚巻のどちらも」
主人公とヒロインだ。その二人の存在がまずある演目である。
「衣装も役も素晴らしいと」
「江戸紫ですね」
「その衣装が素晴らしいとか」
「そうらしいですね。江戸の歌舞伎も素晴らしいのですか」
「それを確かめる為にも」
「一度はですね」
こんな話をしていくのだった。だがその話をする中でもだ。
真理はだ。やはり義正のことを思い浮かべる。そうなっていたのだ。
義正は屋敷に帰りだ。彼のその青を基調とした部屋の中でだ。こう佐藤に述べた。
「不思議だな」
「不思議とは?」
「いや、ふと見ただけでだ」
そのことをだ。彼に話すのだった。
「頭の中に残るものはあるな」
「頭の中にですか」
「そうだ。ふと見たものでも」
それでもだというのである。
「そう思う。そして」
「そして?」
「それが離れない」
真理のことを思い浮かべながら。話していく。
「そうしたこともあるのだな」
「そうですね。それはありますね」
何故主がそんなことを言うのか把握しないまま。佐藤は答えた。
「確かにその通りですね」
「はい。ただ」
「ただ?」
「それが奇麗なものなら」
それならばと。佐藤は義正にさらに話す。
「心を清らかにします」
「心をですか」
「そう、その人の心をです」
清らかにする。そうだというのだ。
「そうしていきます」
「逆に言えばそれが醜いものなら」
「それは心を蝕みます」
そうなるというのだ。その場合はだ。
「心に残るものはそれだけ大事だと思います」
「そうなのだね。それでは」
「はい、それは旦那様にとって奇麗なものですね」
「とてもね。そうだよ」
「それならです」
どうかと話す。そしてだった。
佐藤はだ。義正に対してだ。あらためてこう話した。
「その清らかなものを昇華させることもです」
「昇華?」
「はい、昇華です」
話がそちらに向かう。
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