八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十三話 髑髏検校その十二
「それがわかった次第です」
「難しいことですね」
「はい、ですが義和様はもうおわかりの様ですね」
「いえ、とても」
そう言われても全く思えなかった、そんな筈がなかった。
「理解していないです」
「左様ですか」
「わかっていれば」
それこそだ。
「もっと変わっていると思います」
「人としてですか」
「そう思います、まあ親父みたいにはならなくても」
今は遊び人ということは置いて考えた、人生について知っている親そして年長者として考えていた。
「達観して成熟したといいますか」
「そうした方になられていたと」
「思います」
実際にこう考えた。
「ですからまだまだです」
「そうですか、ですがご自身でそう言われることこそが」
「わかっているということですか」
「こうしたことは完全にはわからないものでしょう」
今の言い切らない、仮定の言葉が心に残った。
「ですからわかったと言えるのは」
「わかっていないから言うことですか」
「そうだと思います」
「そうですか、わかりました」
そのわかっていないことがだ。
「僕も」
「左様ですか、では」
畑中さんは話が一旦終わってから時計で時間をチェックしてだった。僕にあらためて言ってきた。
「もう夜も遅いですので」
「今日はですね」
「はい、これで」
「また明日ですね」
「おやすみなさい」
二人でこう話してだった、畑中さんは髑髏検校を持って僕に一礼してくれてからお部屋を出た。そして僕もだった。
自分の部屋に入って寝た、そして朝になってだった。
食堂に向かう時にモンセラさんとニキータさんに会った、僕は朝の挨拶から二人に尋ねた。
「昨日の本は」
「ちょっと読んだわ」
「私もね」
こう僕に話してくれた。
「少し読んで」
「それで寝たわ」
「そうなんだ、面白い作品だから」
内容も昨夜話した通り充実していてだ。
「読んでね」
「うん、これからね」
「読んでいくわね」
「そうしてね、さてもうね」
ここでだ、僕は今日の日付を見て言った。
「夏休みもそろそろだね」
「あとちょっとで終わりね」
「日本の夏休みも」
「八月三十一日でね」
学生にとっては一番嫌な日だろうか。
「終わりだよ」
「随分長かったけれど」
「それも終わりね」
「あと少しでね、じゃあ御飯食べに行こう」
こう話してだった、僕達は朝御飯を食べに行った。この日の朝御飯もとても美味しかった。
第百四十三話 完
2017・6・8
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