| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

天国と地獄<中世ヨーロッパパロディー>

作者:Gabriella
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

5 CantoⅠー 109

 ベルが鳴った。担当のヘンドリッチ教授が現れた。


_「では、皆さん宿題をお出しください。」


 ソウデス。今回の宿題は、オウィディウスの『恋の歌』第一巻第13節の「暁の女神」だ。
_ quo properas, ingrata viris, ingrata puellis ?

これを訳してきなさい、という話だったが、何しろ本を探すことからしなければならなかったから、とても大変だった。
 答え合わせは授業中にする、と聞いたのでノートにメモっていた。

_「暁の女神よ、どこへ急ぐのですか。男らに嫌われ、乙女たちにも嫌われながら。」



 先生がロマンチストなのは構わないが、なぜこの宿題を出したのか、
 いまいち理解できない。

 確かにその授業で習った「どこ」と、「嫌う」という単語さえ分かればなんとかなる文章だが。




_「はい、では分かる人。」

 はい、とスリザリンの先輩が声をあげる。
 そう、彼女は高杉の追っかけをやっている、1個上の先輩だ。

_「どこに行くのに急いでいるのですか?男らにも、乙女らにも嫌われながら。
  です。」

 と、私をスゴい目で見ながら発表する。
 そこ、なぜ私?



_「よくできました。
  では、次のところに移ります。」







_「スゴいナ、零杏は。ほぼ完ぺきアル。
  私なんて全然できなかったヨ。」

 と、神楽ちゃんはホメてくれたが。

_「運だよ、運。今回はツイてたんだわ、きっと。」



 そして、体格の練習、と言うことでダンテの『神曲』の一部を訳すことになった。
 一部を授業で訳し、残りは宿題になった。





_ Questi la caccerà per ogne villa, こ(の猟犬)は遍く町を巡りて彼女を()い払い、

fin che l’avrà rimessa ne lo’nferno, 初めに妬みによりて地獄から引き離されし彼女を、

là onde’nvidia prima dipartilla 再び其処(じごく)に戻してしまうならむ。








 それについてばかり考えていた、長かった一日も終わり、残りの魔法史も終わったところで、
 今から寮に戻って支度をし、今日の練習試合に参加する予定だ。






 ***

一方、妹の麗奈は、母親とその一族の屋敷に住んでいた。

_「お母様、零杏お姉様は今、どこにいるの?」

_「零杏は、ホグワーツにいますよ。」


そう、まだ零杏本人は気づいていないが、零杏の母親は、純血の悪魔族である。


_「私、零杏お姉様とも一緒に住みたいわ。呼び戻してもよろしいかしら?」

_「でも、お父様がお許しにならないわ。」

_「お父様が?」

_「ええ。お父様は零杏をお屋敷へあげたくないのよ。」

_「なぜ?」

_「お父様は、零杏が悪魔族側に片寄ることを恐れてるのよ。すでに麗奈が悪魔族に引き取られているでしょう?」

_「つまり、お父様は、零杏お姉様は天使族であって欲しい、ということ?」

_「ええ。そういうことになるわね。」

_「でも、お姉様も一緒なら悪魔族(こちら)側にとっても一石二鳥なんじゃなくて?」

_「もし、そうなれば戦争が悪化するわ。せめて母親として零杏(かのじょ)を守りたいの。だから、お父様の言うことを守ろうとしたのよ。」

私は、高杉がお姉様を好きでいることを知っている。


_「もし、悪魔族の誰かがお姉様を嫁にもらいたい、と言ったら?
  どうなさるの?」

_「お父様のお許しを頂かなくてはなりませんわね。」


お父様は、神様だ。
そして、その王座を零杏お姉様に譲るつもりだ。

決してそうさせるものか。
王座につくのは、私だ。



まずは、お姉様を誘拐することから、かしらね。



私は、神威に連絡を取った。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧