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儚き想い、されど永遠の想い

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370部分:第二十九話 限られた時その一


第二十九話 限られた時その一

                 第二十九話  限られた時
 真理はだ。姉達に話していた。あのことを。
 そのことを聞いてだ。二人はだ。
 まずは強く目を閉じてだ。それから言うのだった。
「一年ですか」
「あと一年ですか」
「はい」
 沈痛な顔で頷いてだ。真理は姉達に答えた。
「もうお兄様も御存知です」
「それでお兄様は何と言われてました?」
「一体何と」
「その一年を。春まで」
 こう言ったとだ。真理は真美と真子に話していく。
「頑張って生きろと」
「そう仰ったのですね」
「お兄様は」
「はい。ですから私は」
 沈痛な顔のままでだ。真理は答えていく。
「生きようと思います」
「そうですね。人は必ず死にますし」
「それからは逃れられません」
 死についてはだ。二人もわかっていた。
 そしてそのうえでだ。真理の言葉に頷いてだ。
 そうしてだった。お互いに話すのだった。まずは真理が言った。
「では。主人とも話しましたが」
「次の次の桜の時まで」
「生きてそうしてですね」
「二人で桜を見ます」
 そのだ。満開の桜をだというのだ。
「見て旅立っていきます」
「では私達は見させてもらいます」
「真理さんと義正さんを」
「有り難うございます」
 姉達の決意した顔と言葉を受けてだ。真理もだ。
 ほっとした顔になりだ。そうして頷いたのだ。その真理にだ。
 今度は姉達がだ。微笑んで話した。
「私達もそれぞれです」
「幸せになりますし」
「そうでしたね」
 つまりだ。二人も結婚が決まったのである。真理に続いて。
「では。お姉様達もお幸せに」
「相手と結ばれてそうしてですね」
「そこからはじまるのですね」
「そうです」
 その通りだとだ。真理は姉達に話した。
「幸せは結ばれて二人になってからです」
「それからですか」
「本当の幸せがはじまりますか」
「はい」
 その通りだというのだ。
「ですからどうかここから」
「幸せにですね」
「なるのですね」
「頑張って下さい」
 ひいてはだった。こうも言う真理だった。
 今は冬の中にある。それでもだった。
 その冬の中でだ。彼女は春を見ようとしていた。
 そして姉達に話した後で自身の両親にだ。こんなことを言われたのだった。
「話は聞いた」
「貴女のことを」
 こうだ。二人はその真理に言うのだった。
「あと少ししかないか」
「貴女の時間は」
「はい」
 その通りだとだ。真理もだ。
 両親にこくりと頷いて。そうして言ったのである。
「ですがそれでも」
「そのことも聞いた」
「頑張るのですね」
「桜を観るまで」
 まさにそうするとだ。彼女は両親にも話した。
 そうしてだった。あらためてこうも言うのだった。
「生きてみせます」
「生きると思うことだ」
 父はだ。娘に告げた。
 
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