儚き想い、されど永遠の想い
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37部分:第四話 はじまりその一
第四話 はじまりその一
第四話 はじまり
真理はだ。義正に対してだ。
恐る様な声でだ。こう言ったのだった。
「貴方は」
「はい、前にも御会いしましたね」
「そうでしたね」
まずはだ。こうしたやり取りからはじめたのだった。
「あの時に」
「覚えています」
真理はだ。ここで立ち上がった。そのうえで彼と正対してからだ。あらためて話したのだった。
「よく」
「そうですか。よくですか」
「中々。忘れられません」
こう義正に話した。
「あの時のことは」
「私はです」
そしてだ。義正もここで言うのであった。
「実はです」
「実は?」
「電車に乗った時のことですが」
彼が話すのはだ。その時のことだった。
その時と今のことを頭の中で重ね合わせながらだった。彼は真理に対してだ。静かだが確かな言葉で話していくのだった。
「貴女を見ました」
「私もです」
ここで真理は正直に言った。
「あの時貴方を見てしまいました」
「そうだったのですか。貴方も」
「はい、私もです」
こうだ。御互いに話すのだった。
「見て。そして」
「そのうえで、ですね」
「忘れられませんでした。今も」
「同じなのですね」
義正はだ。真理もだ。そうだとはっきりと認識した。
そしてそのうえでだ。また彼女に言った。
「何故かというと」
「それはおわかりなのですか?」
「いえ、わかりません」
顔は背けなかった。しかし言葉がだった。
逸らさせていた。どうしてもだった。
「ですが。心に残ってしまいました」
「そうだったのですか」
「貴女もなのですね」
「はい、どうしてかわかりませんが」
彼女もだ。どうだというのだった。
「心に残って。そして」
「忘れられないのですね」
「あの時から今もです」
また言う真理だった。
「忘れられないでいます」
「私もです」
義正はだ。ここでもそうだというのだった。
そのうえでだ。真理を見ていた。その黒く澄んだ目をだ。
星が瞬いているかの如きその目を見てだ。また言う彼であった。
「不思議ですね。私達は」
「はい。白杜家と八条家です」
「御互いに。嫌い合っているというのに」
「心に残るなんて」
「嫌い合っているからでしょうか」
義正はこうも考えた。
「そのせいでしょうか」
「だからこそ意識すると」
「はい、そうなのでしょうか」
こう真理に話すのだった。
「両家は。そうした関係なのですから」
「ですが。それでは」
「こうはならない」
「私は。憎しみを感じていません」
それはないとだ。義正に対して言った。
「嫌悪も。感じてはいません」
「左様ですか」
「貴方はどうでしょうか」
己のことを話してからだった。そのうえで義正に尋ねた。
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