八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十三話 髑髏検校その一
第百四十三話 髑髏検校
僕はもう少し書斎で本を読んでから寝ようと思っていた、けれどそう思って本を探そうとした時にだ。
書斎に畑中さんが入ってきて僕にこんなことを聞いてきた。
「横溝正史の本はありますか」
「横溝正史ですか」
「少し久し振りに読みたいと思った本がありまして」
「金田一耕助ですか?」
横溝正史と聞いてだ、僕はこのシリーズを思い出した。何度ドラマで観たのかわからないシリーズだ。
「それですか?」
「いえ、髑髏検校です」
「髑髏、ですか」
「はい、吸血鬼の物語でして」
「検校っていいますと」
時代劇の知識からだ、僕は畑中さんに尋ね返した。
「目の見えない人ですよね」
「そうした人達の江戸時代の階級というかそうしたものですね」
「そうですよね」
「そうです、この言葉からおわかりだと思いますが」
「舞台は日本ですか」
「ドラキュラ伯爵の舞台を日本にした作品です」
そうした作品だというのだ。
「棺桶も木製のものです」
「舞台は日本で」
「言うならば検校、不知火検校はドラキュラ伯爵です」
「何か面白そうですね」
「何十年か前に読んだのですが」
「もう一度ですか」
「読みたいと思いまして」
そうしてというのだ。
「それで、です」
「こちらにいらしたんですか」
「そうでした」
「はい、横溝正史でしたら」
僕はちらりと見たことのある書斎の一部の方に顔を向けてそちらを手で指し示して畑中さんにお話した。
「あちらにあります」
「あちらですか」
「はい」
そうだとだ、僕は答えた。
「あちらにあります」
「では探させて頂きます」
「僕も手伝います」
タイトルは聞いた、それならすぐにだった。
二人で横溝正史の本があるところで探した、探してみると金田一耕助のシリーズの単行本にだ。
その髑髏検校もあった、畑中さんはその本を見付けて笑顔で言った。
「これです」
「じゃあ今から」
「読ませて頂きます」
こう僕に言って僕が手に取って差し出したその本を受け取った。
「これから」
「何か横溝さんの本らしいタイトルですね」
僕はあらためてこう思った。
「髑髏とか不知火とか」
「そうですね」
「変におどろおどろしいといいますか」
金田一耕助のシリーズでもある通りにだ。
「独特の雰囲気ですね」
「その通りですね」
「はい、それで吸血鬼がですか」
「夜な夜な血を求めてです」
まさにそうしてというのだ。
「町を彷徨うのです」
「そうなんですね」
「ドラキュラ伯爵もです」
「日本になればですか」
「はい、独特のものになります」
オリジナルとは違ったそれにというのだ。
「そしてそれがまた面白く」
「それで、ですか」
「何十年か前に読んだ時は心から楽しめました」
「そうなんですね」
「ではこれより」
「はい、それじゃあ」
こう畑中さんに言った。
「どうぞです」
「そうさせて頂きます」
是非にという言葉だった。
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