儚き想い、されど永遠の想い
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346部分:第二十六話 育っていくものその十二
第二十六話 育っていくものその十二
「その中でも最も楽しむことですね」
「そうです。主人もそのことがわかっているから」
「言われたのですね」
「そう思います」
婆やもだ。義正の言葉にだ。
頷きだ。そうして言うのだった。
「そして女にとってはです」
「女にとっては」
「どうなのでしょうか。出産とは」
義正だけでなくだ。佐藤もそのことを問うた。
「一体それは」
「幸せなのはわかりますが」
「とても辛いです」
まずはこう答える婆やだった。
「ですがそれでもです」
「喜びですか」
「それでもあるのですね」
「そうです。このうえない喜びです」
これが婆やの言葉だった。
「そうなのです」
「そうですか。喜びなのですか」
「辛くあっても」
「愛する人との宝を生むのです」
婆やも自然にだ。優しい微笑みになっていた。
「そして愛しい相手を」
「子供は自然に愛しくなる」
「だからですね」
「この上ない幸せを感じるものです」
それがだ。女にとっての出産だというのだ。
「ですから産めるのです」
「真理さんは今その中にいる」
義正はその考えに至った。話を聞いて。
「そうなのですね」
「そしてその幸せはです」
「私もまた共にいるのですね」
「二人の愛の結晶が生まれるのですから」
「では」
婆やの言葉に頷き。そのうえで。
義正はだ。今度はこんなことを言った。
「このことを考えたいです」
「このこととは」
「生まれてくる子供はどちらなのか」
今度は微笑みだ。佐藤に応えたのである。
「このことを考えたい」
「やはりそのことは考えてしまいますね」
「私は個人的には」
「どちらならいいでしょうか」
「やはり。男か」
そちらだというのだ。
「男の子ならいいと思う」
「では旦那様の跡継ぎをですか」
「その子が欲しい」
「そうですか。旦那様はそう思われていますか」
「男なら誰でもそう思う様だな」
男の子を望む。そうだというのだ。
「話に聞くと」
「主人もでした」
ここでまた婆やが話す。
「主人もまたです」
「男の子を望まれたのですね」
「はい、そうでした」
婆やはここでも微笑み話す。
「まずは男の子が欲しいと」
「そう思ってですね」
「そして生まれたのは」
「男の子だったのですか?」
「はい、男の子でした」
そうだったというのだ。婆やの最初の子は。
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